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目標設定が難しいコーポレート部門にこそOKRを導入すべきという話

目標設定が難しいコーポレート部門にこそOKRを導入すべきという話

しわっす! ユーザベース コミュニケーションチームの山田です。

12月ということで、人事評価のシーズンにあたる会社も多いのではないでしょうか。

私が所属するコミュニケーションチーム(広報・IR)は組織図的にはコーポレート部門に属しているのですが、コーポレート部門は一般的に日々のルーチン業務が多く、「抜け漏れ落ち」がないことが求められるインフラ部門のため、目標(KPI)設定が難しいと言われています。

そこで今年、ユーザベースのコーポレート部門ではOKRを本格導入してみました。結果として手応えを感じられてきているので、今日の記事では「目標設定が難しいコーポレート部門こそOKRを導入すべき」ということをお伝えしたいと思います。

目次

OKRとは

OKRとは、「Objectives & Key Results」の略です。Googleなどでも採用されている目標管理のフレームワークで、主にプロダクト開発の現場で導入されることが多く、コーポレート部門で積極運用されている事例はあまり聞かないように思います。ユーザベースでもBtoBプロダクトの「SPEEDA」でまず導入され、その後、コーポレート部門でも導入しました。

OKRのポイントはなんといっても「O」(Objective、定性的な目標)を決めることです。チームで納得感のあるOをつくり、現場でコントロールできる「KR」(Key Results、Oを実現するための測定可能な指標)をつくることで現場でどんどんPDCAを回していくというスタイルが、「自分たちで決める」という自由を重視する私たちにはとても合っていました。

OKRについての解説本や記事はたくさんありますが、NewsPicksでの葉村 真樹さん(LINE執行役員)のコメントがとてもわかりやすかったので、ご本人の許可を得て転載します。

私の古巣GoogleのOKR=Objective & Key Result は、シンプルだが、分かりやすく成果を出しやすい目標管理システムで、同じく古巣のTwitter社でも導入されていた。 さて、OKRについて説明すると、O(Objective)は文字通り企業や組織そして個人の目的である。Googleという企業であれば「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにする」である。そしてその目的のために実現すべき結果がKR(Key Result)である。例えば、1日当たりの検索数だったり、アンドロイド端末の普及数などのObjectiveを可能せしめる各事業の定量的目標である。要はOはKGI、KRはKPIというと分かりやすいだろうか?このOKRのさらに面白いところは、企業→組織→個人とレイヤーが下がるに従い重層構造で構成されることだ。 例えば、企業レベルのKRとして「プロダクト開発投資費xx億ドルを確保する」とあれば、そのKRを達成するために複数の組織が動く必要がある。そうした組織の一つに営業組織があると、これのObjectiveは「売上xxx億ドルを達成する」となる。 これを達成するために営業組織は複数のKRを設定するが、その一つに「自動車業界からの売上xx億ドル」というものが設定されるとしよう。そうなるとこれが自動車業界担当営業部のObjective となる。そしてObjectiveを達成するためのKRがトヨタからx億ドル、ホンダからy億ドルなどと設定されたら、それぞれの担当営業社員にとってはそれがObjectiveとなる。 そしてトヨタ担当営業社員はトヨタからの売上x億ドルを達成すべくどのようなKRを達成すべきかを量的に測定可能な項目で複数設定する。例えば何回提案を実行して、プロダクト別にいくら売り上げを積むか、などだ。そして、これら全てのOKRは社内の個人wikiなどで完全開示される。こうすることでの効果は、企業全体の目標に個々の組織、従業員の取り組みがどのようにつながるかが明確化されるとともに、個々人がコミットメントをもって仕事に取り組むようになることだ。
「KPIはもう古い! Googleも採用する『OKR』が目標達成に効く理由。」へのコメント「KPIはもう古い! Googleも採用する『OKR』が目標達成に効く理由。」へのコメント

コーポレート部門にこそOKRを導入すべき

上述のとおりコーポレート部門(総務、労務、法務、広報など)は、「やってあたりまえ」だけど「落としたら致命的」な業務が多い部門です。実際にユーザベースのコーポレート部門も、日々の業務や社員からの問い合わせ対応が多く、「会社は順調に成長できているが、自分たちは貢献できているのだろうか?」という状態だったと感じています。

そこでSPEEDAで導入して良い結果が出始めていたOKRを、コーポレート部門でもテスト導入することにしました。導入にあたっては社内のほか、先行して全社導入しているGoogleやメルカリの知り合いにも話を聞きに行きました。

具体的には以下の手順でコーポレート部門のOKRを設定しました。もともと「経済情報で、世界を変える」というミッションがあるので全社のOを決める必要はなく、ミッションからドリルダウンしていきました。

マネージャークラスを中心に議論して、コーポレート部門のOを決める 

各チームごとにセッションを設け、チームOを設定する 
(OKR自体の理解や納得度を促進するためにファシリテータも入れました)

各チームごとに立てたOをもとに、各メンバーでKRを立てる

OKRの運用のコツは、「立てっぱなし」にしないこと。私たちのチームでも毎週進捗状況をチェックし、必要に応じてOKRの見直しなども行っています。また先行しているSPEEDAチームでは振り返りを促進するための自主的なファシリテータ集団ができてきており、各チームのPDCAを高速回転させています。

OKRを導入した結果

実際にOKRを導入した結果ですが、以下に一例をBefore/Afterで紹介したいと思います。

総務チーム

(Before)日常業務に忙殺……電話対応もあるのでなかなか休みがとれない……オフィスが汚いのもなんとかしたい……

(O)「ウユニ湖みたいなきれいなオフィスにする」「メンバーが(地球の裏の)カリブにいけるぐらい強いチーム体制をつくる」

(After)IP電話を導入することで各チームに電話対応を移管。電話がかかってくる量を減らすとともに、ネットがつながっていればどこでも電話対応できるように。クリーンデーをつくって社員にも協力してもらいつつオフィス美化!

労務チーム

(Before)毎日新しい社員が入ってくるけどなかなかケアしてあげられていない……労務からの情報発信もしたい!

(O)「強くてやさしい労務チームになる」

(After)ウェルカムランチをスタート!新メンバーの自己紹介スライドをSlackで共有したり、これまで劣後して公開できてなかった組織図なども公開して情報発信!

広報チーム

(Before)日々の取材依頼や問い合わせ対応で忙殺……積極的に情報発信できてないし、価値を発揮できていないのでは……

(O)「強いユーザベースブランドをつくる。正しい姿を社内外に伝える」

(After)インナーコミュニケーションも業務対象として、チーム名も「広報」から「コミュニケーションチーム」に変更。社内バーなどのイベントを開催したり、外部向けには取材誘致やブログ発信なども強化中。


副次的な効果として、OKRを極力シンプルにし社内に公開することで、「あのチーム(人)が何をやっているのかわからない」といったことも(感覚ですが)減ってきたように思います。もちろん「挑戦的なOを立てすぎた」「Oを優先しすぎて通常業務が押してしまった」「そもそも人手が足りてなくてOを立てるフェーズじゃない」など現場レベルでは細かい課題もあります。

大事なのは、ワクワクするOを自分たちで決めて、自分たちで決めた指標を追いかけるというスタイルをつくりあげることです。働き方も生き方も、なんでも自分で決められる会社でありたいなと思います。

ユーザベースでは、ワクワクするObjectiveを自分で決めて、事業視点でものごとを推進できる方の応募をお待ちしています!

執筆:山田 聖裕
Uzabase Connect