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最後まで船を降りない仲間でありたい。僕らがUB Venturesをはじめた理由

最後まで船を降りない仲間でありたい。僕らがUB Venturesをはじめた理由

ユーザベースから新たに誕生したVC事業「UB Ventures」。

立ち上げの背景と作りたい世界観について代表の岩澤脩が語った前編の記事に引き続き、後編では、UB Venturesテクノロジー・パートナーの竹内秀行と、ベンチャー・パートナーの麻生要一を交えて、それぞれどのような起業家に投資したいのか、どのようなVCを作りたいかについて語り合ってもらいました。

岩澤 脩

岩澤 脩OSAMU IWASAWAUB Ventures 代表取締役社長 マネージングパートナー

慶應義塾大学理工学研究科修了。リーマン・ブラザーズ証券、バークレイズ・キャピタル証券株式調査部にて企業・産業調査業務に...

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竹内 秀行

竹内 秀行HIDEYUKI TAKEUCHIUB Ventures テクノロジー・パートナー

東京工業大学理学部情報科学科卒業。東京工業大学大学院情報理工学研究科中途退学。在学中はソフトウェア工学周りを研究。大学在学中から個人事業主として活動を始め、大学院在籍中に2社...

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麻生 要一

麻生 要一YOICHI ASOUB Ventures ベンチャー・パートナー

東京大学経済学部卒業。リクルート(現リクルートホールディングス)に入社後、ファウンダー兼社長としてIT事業子会社(株式会社ニジボックス)を立ち上げる。その後、ヘッドクオーター...

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目次

お金だけじゃない支援ができるVCを目指して

岩澤:前回の記事で、僕は「ユーザベースだからできる新しいVCを作る」という話をしました。竹内さんと麻生さんは、この新規事業のどんなところに魅力を感じていますか?実は2人は今日初めて会うと思うので(笑)、ジョインを決めたきっかけも教えてもらえればと。

竹内:僕はエンジニアとして、ユーザベースの2008年の創業初期からSPEEDAやNewsPicks、FORCASといろんなプロダクトを作り、組織や事業の成長をリアルに見てきました。だから、エンジニアの視点から起業家やそこに集うエンジニアに対して、いろいろお話できることがあるのではないかと思ったんですね。

実は岩澤とは、「ユーザベースがVCをやったらおもしろいよね」と昨年ぐらいから話していたんです。もともと僕がユーザベースに関わり始めたのは投資的な意味合いもありましたし、個人的にもエンジェルとしてスタートアップ投資をしていたので、UB Venturesに参画したのは自然な流れだったと思います。

梅田:「この会社の命運を彼に託して、本当に大丈夫なのか…?」と不安になりました。でも、彼が言った一言で、腹をくくりました。「面白そうなサービスなので、あなた方を助けてあげます。今はオカネはいらないので、もしこの事業がうまくいったらそのときにください」。 学生に「助けてあげる」と言われたことには若干引っかかりましたが(笑)、お金は後でいいと言うし、他に選択肢はない。お願いします!と頭を下げました。
【20代の不格好経験】起業後にサービス開発担当者が「自分には作れない」と白旗。売り上げゼロの状態で一から技術者探しに奔走~ユーザベース代表 梅田優祐さん【20代の不格好経験】起業後にサービス開発担当者が「自分には作れない」と白旗。売り上げゼロの状態で一から技術者探しに奔走~ユーザベース代表 梅田優祐さん
竹内 秀行

麻生:僕は2017年まで、リクルートホールディングスで新規事業開発の責任者をしていました。2018年に退職し、起業家として2社(株式会社アルファドライブ、株式会社株式会社ゲノムクリニック)を創業したのですが、数ヶ月前に岩澤さんから「VCをつくるから一緒にやらないか」と声をかけられたのがきっかけです。

話を聞いて、SPEEDAやNewsPicksなどを持つユーザベースが、その知見をフル活用してスタートアップを支援するのは、純粋におもしろそうだと思いましたね。お金だけじゃない支援ができそうだなと。スタートアップにとってもメリットしかないので、他とは少し違うポジションのVCになれそうだと思いました。

UB Venturesの投資先として、たとえば、ユーザベースグループのビジネスをディスラプトしそうな若者を発掘するのもおもしろそうだなと思っています。NewsPicksは、30代40代のビジネス界で影響力を持つ人たちを中心としたコミュニティです。でもコミュニティは世代ごとに形成されるから、下の世代でも同じようなコミュニティは生まれます。それは、NewsPicksで生まれるかもしれないし、別の何かから生まれるかもしれない。

だから、NewsPicksを駆逐して若手コミュニティを作ろうとしているような起業家に投資できたらおもしろいですよね。

竹内:麻生さんは自分の会社を経営しながら、UB Venturesにも参画されるんですね。

麻生:そうですね。2社を経営する起業家である僕が、ベンチャーキャピタリストとしてスタートアップに投資するわけなので、僕にしかできないことがあるんじゃないかと。いわゆる「ファンド」ではなく、経営者同士、一緒に事業をやっていくような生々しいお付き合いをしていきたいです。

麻生要一

CEOはどれだけエンジニアを理解すべき?

岩澤:麻生さんはこれまでの経験を踏まえて、どのような価値を起業家に提供するベンチャーキャピタリストになりたいですか?

麻生:リクルート時代、オープンイノベーションスペース「TECH LAB PAAK」の所長も務めていたのですが、そこで輩出したのは、スタートアップ300社と起業家1100人。加えて、リクルートの社内でもAIから地方創生まで、年間700件くらいの新規事業立ち上げを支援してきました。

リクルートが運営するオープンイノベーションスペース「TECH LAB PAAK」

リクルートが運営するオープンイノベーションスペース「TECH LAB PAAK」

麻生:
これだけ大量のスタートアップを見ていたら、大量のヒヨコの雄と雌を瞬時に仕分ける人のように、いろんなことが直感でわかるようになったんです(笑)。

たとえば、「このチームがこれをやるなら、この方向に進んだ方がいい」とか、「このままいくとこの壁に当たるから、この辺りで迂回したほうがいい」など。事業を成功に導くための嗅覚は鋭いので、創業から最初のグロースに乗せるところまでのアーリーステージで、最適なアドバイスができると思います。

竹内:僕は経営者とエンジニアの相互理解を促し、より正しくビジネスが伸びるようにバックアップしたいと思っています。たとえば、創業期に必要なエンジニアと、事業を伸ばしていくときに必要になるエンジニアは、スキルもタイプも本当は異なります。それがあまり知見として共有されていないから、お互いに理解し合えず、自分自身のこともよくわからないまま仲違いしているケースは結構あると思うんですね。

僕自身、ユーザベースの創業期から、エンジニアとして今までをずっと見てきました。それ以前は自分で会社を経営していたので、エンジニアと経営者両方の立場に立って会社を見ることができます。その経験を生かし、経営者とエンジニアそれぞれの気持ちを代弁することで、コミュニケーションの円滑化もしていきたいですね。

麻生:竹内さんに聞きたいんですが、CEOはテクノロジーをどの程度分かっておくべきだと考えますか?

竹内:テクノロジーは分からなくても、エンジニアの考え方は知った方がいいですね。逆にエンジニア自身も、価値を出すためにビジネスを理解すべきなので、僕が中に入って一緒に考えていけたらいいなと思っています。

もちろん技術的な面で「この機能の作り方さえわかれば……」といった課題があれば、今までの知識を総動員して一緒に考えることもできますし、僕がプロトタイプの実装をすることもできます。

また少し話は変わりますが、僕は以前から、エンジニアは複数の会社に関わってゼロイチのフェーズをたくさん経験するべきだと思っているんですね。その方が絶対能力が伸びる。だから「ちょっとこの会社に行ってみない?」と、ユーザベースグループのエンジニアに投資先のスタートアップを紹介するような話もしようと思っています。とはいえ起業家からすると実験場にされるのは困ると思うので、僕が責任を持ってサポートに入る前提です。

竹内秀行

出資だけじゃない関係に

岩澤:僕たちは3人とも得意分野もバックグラウンドも違うのが強みだと思っています。そこでお2人に聞きたいんですが、支援したい起業家の基準って考えていますか?

僕が支援したいのは、自らの原体験と解決したい価値が、強烈に結びついている起業家です。着想が優れていてチームも良かったとしても、うまく行くとは限らない。

生き残る勝因は何かというと、起業家に強烈な原体験があって、その課題を本当に解決したいと「情熱」を持ってやり切っていることだと思うんです。だから、仕組み先行ではなく、その人が本当に解決したいと信じる事業に投資したいですね。

竹内:僕自身はエンジニアですが、「このテクノロジーがすごいから未来がある!」という考え方で投資することはほとんどありません。支援したいのは、「このサービスがあったら未来が楽しくなりそうだ」と思える事業で、かつビジネスとしてちゃんとお金がまわるイメージを持てること。

会社として生き続けて、かつ社会も影響を与え続けるためには、お金という指標は絶対に必要。技術先行ではなく課題先行で、しっかりお金になる事業に投資したいです。 

麻生:僕の基準は2つあって、一つ目が、「この人がこんなことをやるなんて素敵」という直感。言語化できないのですが、僕が直感的に応援したいと思える起業家です。二つ目は、「そのビジネス、僕もやりたい」と思えること。僕はベンチャーキャピタリストである前に、起業家です。だから、起業家目線で「そのビジネスは目の付け所がいい!」と思ったら、出資をした上で泥臭く一緒にやりたいと思っています。

対談風景

最後まで船を降りない仲間でありたい

岩澤:UB Venturesのサイトにもメッセージを載せたのですが、僕たちは起業家に寄り添う存在でいたいと思っています。なので過剰なレポーティングは求めたくないし、過度なお節介にはならないよう、気をつけていきたい。本当に困ったときに、そっと寄り添える存在でありたいと思います。

たとえば、プロダクトをローンチしたけどうまくグロースできず、外部からのアドバイスや、ユーザーインタビューで迷いが出て、立ち止まってしまっている経営者も多いと思います。そういう人はすぐに相談に来てほしい。

本来は自分の原体験を信じて事業を進めればいいのですが、周りからの意見が増えると、どうしても惑わされてしまう。これは僕も何度も経験してきたので、良い形で伴走できると思います。

UB Venturesのサイトに載せたメッセージ

UB Venturesのサイトに載せたメッセージ

竹内:それで言うと、「エンジニアとどう接するべきか悩んでいる」「意思疎通がうまくいっていない」と悩む経営者も多いと思います。センシティブな話になると思うので、僕に相談に来ていただけたら、クローズドな場で真摯に向き合います。

その上で、一緒に事業を推進しているエンジニアとも話をしたい。双方にとって最終的にハッピーになるような話をきっとできると思います。

麻生:繰り返しになりますが、僕はキャピタリストではなく起業家です。だから起業家がされて嫌なことは絶対にしません。「数字を出せ」「説明資料を作れ」「わかるように説明しろ」などと言わない(笑)。こんな僕たちと一緒に事業をやりたい、事業パートナーになってほしいと思う起業家には、ぜひいつでも相談に来てほしいですね。

集合写真

本記事にはすでに退職したメンバーも含まれております(組織名・役職は当時)

執筆:田村 朋美 / 編集:山田 聖裕
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