ユーザーから「中の人」になった理由
宇佐美 信乃(以下「宇佐美」):
そうですね、私は5年前ぐらいにSPEEDAを使っているユーザーでした。そのときは銀行にいて、主に大手企業のお客様に対して財務戦略を提案する仕事をしていました。具体的には、事業戦略を描いてそのためにはどういう投資が必要で、どういう資金調達の手段があるのかといったことを提案していました。その現場でSPEEDAを使っていたんです。
そこではお客様の事業を成長させることが目標だったのですが、実際、ほとんどの時間は情報収集やデータの手入力に取られることが多かったんです。一方でそうしてデータを苦労して集めても、データとは関係ない「鶴の一声」で意思決定されてしまうこともありました。それが非常にもったいないと思っていましたし、もっとデータドリブンで意思決定できるようになると、たくさんの人が創造性を発揮できるようになるんじゃないかと思っていたタイミングでSPEEDAの求人に出会い、まさにやりたいことが実現できる環境だと思ってユーザベースへの転職を決めました。
ユーザーとしてSPEEDAを使っていたときは、すごくいろいろな気付きがあったんですね。すごく作り込まれていて、これは「実務がわかっている人」が作ってるんだろうなと。この体験をもっとたくさんの人に広めたいと思って、SPEEDAの中でもいちばんユーザーに近い立場で、日々の問い合わせに回答するコンサルティングサービスチーム(当時)に所属しました。
SPEEDAのカスタマーサクセスが目指しているもの
宇佐美:
いちばん驚いたのは、SPEEDAのユーザー層が思った以上に広いことと、その距離感がすごく近いことでした。
私が以前いた金融機関も事業会社の経営企画部の方々がお客様でしたが、距離を縮めるのってなかなか難しかったように思います。お客様のタイプによっては距離感を詰めづらいこともありますし、事業の何が課題かという本質的な話題に踏み込みづらいこともありました。
ところがSPEEDAのお客様は何かしらの課題感があって導入を決めてくださっているので、お客様側から積極的に言ってきてくださるんですね。SPEEDAがこれまでお客様と真摯に向き合ってきたことから信頼を得ていて、事業の課題感がたくさん集まってきている。ここに率直に驚きました。
一方で課題だと感じたのが、ユーザー層が広がってきていることから、「すべてのお客様に役立っている」と言い切れない状態になっていることでした。前述のコンサルティングサービスは、お問い合わせいただいたご質問に全力でお答えするものなので、それより前のお客様の課題にはタッチできていなかったんです。ここを変えていかないといけないと思い、チーム名も「カスタマーサクセスチーム」に変更しました。
宇佐美:
まず、これまでは「お問い合わせしてきてくださるお客様」という一面で見ていたのを、お客様の利用状況別にセグメントしてフェーズで切り分けました。「使い始めのお客様」「活用頻度が高くないお客様」「活用頻度は高いが、十分に使いこなせていないお客様」などですね。お客様のフェーズに合わせてアプローチを変えた、というのがひとつです。
特にこれから力を入れていきたいのが、使い始めのお客様を対象としたオンボーディングです。まずお客様がどういう目的で導入されたのかをヒアリングして、どう使われていきたいのか目標を一緒に設定した上で、使い方を研修したりユースケースをご紹介したりしながら、目標への推移を定点観測する取り組みを始めています。
SPEEDAは現在1,100社・2,300を超えるお客様にご利用いただいていて、すべてのお客様に同じようにアプローチすることが難しくなっています。データをもとにセグメントを分けて、ターゲティングしていくことが重要です。実際に今も利用状況をもとにヘルススコアを出せるようにしたり、社内のデータサイエンティストと連携して解約予測モデルを作ったりと、さまざまな施策を打ち始めているところです。
これから実現していきたい世界
宇佐美:
はい。SPEEDAのカスタマーサクセスの本丸は、ユーザーへの価値に真に向き合うことでその理想を描き、プロダクトを進化させていくという点にあると思います。
SPEEDAは、お客様と接している私たちと、プロダクト開発チームとの距離がとても近いんです。外部の方とお話することがありますが、この距離感は「正直うらやましい」と言われるぐらい。ユーザーの理想に向き合いながら、エンジニアやデザイナーと同じ目線で議論できるのはすごく楽しいですね。
宇佐美:
ユーザーの声を起点にした、愚直な改善サイクルを回していきたいですね。これは(SPEEDA CEOの)稲垣さんが言っていたんですが、創業期はとにかくプロダクトを作ってリリースして毎週何かが変わっているから、ユーザーはそれを楽しみにログインするというサイクルが回っていたそうです。そして指摘された改善ポイントをさらに反映していく流れが生まれていた。これを当たり前のようにできる、もう一歩上の体制を目指していきたいですね。
こういった想いのもと、稲垣さんや(SPEEDA CTOの)林さんと相談し、プロダクトチームと協働で改善を行う取組も最近強化できました。これはとても嬉しかったですね。
宇佐美:
ユーザベースに入って驚いたのは、ユーザーからのフィードバックが、日々送られてきていることです。不十分な対応に対しては、「SPEEDAはその程度のものだったのか?」とご指摘をいただくこともあります。これは非常にありがたいです。お客様の声に真摯に向き合い、プロダクトの改善と進化を担っていきたいです。
また、お客様の新たなニーズや課題を解決するためにentrepedia(運営するジャパン・ベンチャー・リサーチ社をM&A)やFORCASという新規事業が生まれたような非連続な進化ももたらしたいですね。
宇佐美:
SPEEDAのユーザーは経営戦略や事業展開を前線で担う方々なので、カスタマーサクセスに関わる私たちには、最先端のビジネスへの好奇心と、事業のハブになれるようなフットワークの軽さが求められます。そしてその醍醐味は、ユーザー起点で事業を創り、それを通じて企業の進化にも貢献できることです。
解決したい課題はとても大きいですが、大変な分だけおもしろい。自分の意思で事業の未来を切り開いていきたい人と、ぜひ一緒に働きたいですね。