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ユーザベース再上場に向けて期待を背負うエキスパートリサーチ事業の取り組みに迫る

ユーザベース再上場に向けて期待を背負うエキスパートリサーチ事業の取り組みに迫る

再上場を目指し事業改革を推進するユーザベース。この再上場に向けた成長戦略のひとつが「エキスパートリサーチ事業」です。「エキスパートリサーチ市場は過渡期にある。海外含めプレイヤーが少ない今、マーケットチェンジを起こせる可能性が高い」と話すのは、スピーダ事業で経営企画・金融機関・コンサルティングファームの顧客支援を担う組織、CFCD(Corporate Strategy, Financial Institutions and Consulting Firms Domain)でプロフェッショナルファーム向けにエキスパートリサーチ事業を展開する藤田尚之と山﨑仁保美。再上場に向けて成長が期待されるエキスパートリサーチ事業に携わるやりがいについて、2人にじっくり聞きました。

藤田 尚之

藤田 尚之HISAYUKI FUJITAスピーダ事業 経営企画・金融機関・コンサルティングファーム支援 Professional Firm Division Expert Research Proチーム リーダー

東京大学経済学部を卒業後、新卒で伊藤忠商事株式会社に入社。エネルギー領域においてトレーディングや新規事業の立ち上げなどを経て、ユーザベースグループの株式会社ミーミルに入社。現...

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山﨑 仁保美

山﨑 仁保美NIHOMI YAMAZAKIスピーダ事業 経営企画・金融機関・コンサルティングファーム支援 Professional Firm Division Expert Research Proチーム Core Account Unit リーダー

大学卒業後、新卒で株式会社進研アド(ベネッセグループ)に入社。大学・大学院など高等教育機関の課題解決業務に従事したのち、株式会社ミーミルに入社。その後ユーザベースに転籍。ミー...

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目次

プロフェッショナル領域の顧客群に特化しエキスパートリサーチ事業を伸ばす

はじめに、組織の概要や立ち上がった経緯について教えてください。

藤田 尚之(以下「藤田」):
プロフェッショナルファームの支援に特化したProfessional Firm Divisionには、Expert Research Pro Team(以下「ER Pro」)とSpeeda Pro Team、2つのチームがあります。そのうち僕たちが所属するのはER Proです。

ER Proはもともとミーミル(※)にあったチームですが、営業戦略やプロダクト開発に関する意思決定のスピードをより上げていこうと、プロフェッショナル領域の顧客群に特化した組織としてスピーダProとともに立ち上がりました。

エキスパートリサーチ事業は、もともと株式会社ミーミル(MIMIR)の事業。2020年4月にユーザベースの完全子会社化し、その後エキスパートリサーチ事業をスピーダに統合。

ER Proはエキスパートリサーチ事業を伸ばすこと、一方スピーダProはスピーダのMRRを伸ばすことをミッションに掲げています。両者の違いは、それぞれ向いているサービスが異なるのはもちろん、顧客の性質にもあります。

ER Proは大手コンサルティングファームや、PEファンドなどの金融機関を対象としています。この領域お客様の多くはすでにスピーダを活用していて、ここからさらにエキスパートリサーチの領域を伸ばしていこうしています。

一方、スピーダProが対象とするのは、ER Proが扱う領域以外のコンサルティングファームや地方銀行など、まだまだスピーダ自体の導入の余地が大きな領域です。

山﨑 仁保美(以下「山崎」):
コンサルティングファームや金融機関は事業会社とはサービスのユースケースが異なるので、私たちER Proチームが集中的にサポートしています。

また、私たちのお客様はすでにスピーダを契約してくださっている方ばかりなので、インサイドセールス(IS)をつけて新規の契約数を追うというよりは、すでに契約があるお客様に対して、いかにエキスパートリサーチをはじめとしたユーザベースのサービスを活用していただくかに注力しています。

日頃から情報収集や分析業務をしているお客様は、エキスパートリサーチも順調に使ってもらえそうなイメージがあるんですが、そういうわけでもないんですか?

藤田:
もちろん情報収集や分析に関してリテラシーが高い方は多いんですが、コロナ禍を経てコンサルティング業界にも大きな変革が起こっていて、事情が変わりつつあるんです。コロナ後のコンサル業界は業績がどんどん拡大し採用人数も増えています。

それに伴いコンサルタント未経験者の採用も増えていて、どうリサーチ業務を進めていくかこれからキャッチアップする必要のある方も一定いらっしゃいます。初めてコンサルタントとしてリサーチ業務をするときに、どうエキスパートを活用していくか伴走するイメージです。その辺りも含めてまだまだ伸びしろがあると考えていますね。

ER Pro 藤田尚之
山崎さんが所属するCore Accountユニットの業務内容についても聞かせてください。

山崎:
特定の個社に対して、リサーチチームと共同で顧客支援をするのが主な役割です。

ふだん業務で接するお客様側の担当者は大きく2種類あり、ひとつはコンサルタントをまとめている、いわゆる窓口担当の方。もうひとつは実際にサービスを利用するコンサルタントやマネージャー、パートナーなどプロジェクトを動かしている方々ですね。

クライアントから「こんな案件があって、こういうリサーチをしたい」という相談がきたら、リサーチチームと一緒にどういう調査設計のご提案をすればいいかなどを考えていきます。

まだリサーチ業務のご経験が少ないフェーズの方であれば、どんなサービスを活用するのがいいかこちらからご提案したり、大きめのプロジェクトをCS起点で捉えてユーザベースに発注してもらえるよう、営業のような動きもしています。

顧客の業務について解像度を高く持つことで競合に差をつける

競合他社とバッティングした場合、エキスパートリサーチを使ってもらうために何をどのように訴求するんですか?

藤田:
ユーザーから「こんな企業のこんな部分について調べたいです」と依頼があった場合に、なぜその企業をピックアップしているのかについて、解像度があるかどうかでスムーズに提案できるかが変わってくるんです。

ちゃんとコミュニケーションを取ってお互いに要件整理をして、調査の優先度を把握しつつ、ニーズに合致したエキスパートを紹介することを徹底していますね。

幅広いプロジェクトを持つコンサルティングファームに対してスムーズな提案をするためには、勘所を掴んでおく必要があると思っています。そのために、日々どんなインプットをしているんでしょうか。

藤田:
まずは依頼内容からどんなプロジェクトを推進されているかの想像と、その業界がどんなプレイヤーで構成されているか、どんなサプライチェーンになっているか、そこは事前にインプットしますね。

山崎:
私もほぼ同じですね。スピーダを使って、たとえば「A」というサービスの導入判断のための調査をしたいという依頼があれば、まずはサービス提供側、ユーザー側両者のプレイヤーを洗い出します。候補で出てきた企業をもとに要件を広げていき、私たちのおすすめのエキスパートをご紹介していく流れです。

一方で、案件の内容についてものすごく高い解像度を持つというよりは、お客様の業務に対する解像度を高めておくことが重要と感じています。

どういうアウトプットを出したいか、それまでに何を誰と会話して進めていくか、エキスパートネットワークを発注するタイミングはいつか、その中で困っていることは何か。お客様特有のルールの有無を把握したうえで提案することも同時にしていきます。

対談風景

藤田:
いざエキスパートを紹介するときに、該当するエキスパートがいないことも当然あるので、そういうときは、外部や社内リソースなどから、お客様のニーズに合致したエキスパートをリクルーティングしてくれるカスタムリクルーティングチームと連携して、プロジェクトに合ったエキスパートを探してもらっています。

2人はMIMIR時代から一貫して、スピーダProチームは別にあるとはいえ、スピーダと連携する場面は多々あると思います。スピーダそのものが奥深く、キャッチアップが大変だったのではないかと思うんですが、どうでしょう。

藤田:
そうですね、当初は僕もまったくスピーダのことはわかりませんでした。でも、歴史が長いプロダクトな分、ユースケースやナレッジがそれなりに溜まっていますし、コンサルティングファームでどう活用すればいいか、社内のほかのメンバーに相談できる環境があります。

コンサルティングファームではスピード感を大事にしていますし、クライアントとどう調査の期待値を握るかも重要なので、エキスパートリサーチにとどまらずスピーダで何ができるかを考えて提案するケースもあって。

そのとき、スピーダで何が調べられるか想像が及ばない部分については、コンテンツチームに検索の仕方や機能の使い方を相談しながら顧客サポートをしていますね。

Core Account Unitは、長く取引のあるコアなお客様が対象とのことですが、NewJoiner(中途入社メンバー)の育成はどうしているんですか?

山崎:
オンボーディングで「コンサルティングファームとは?」という基礎の部分から業界知識をインプットする機会はありますし、業務解像度を高めてもらうためにリサーチチームの研修に入って、エキスパートリサーチのコアとなるリサーチ実務も経験してもらいます。ロープレもしながら、1ヵ月くらいかけて理解を深めていくイメージです。

再上場に向けカギとなる「エキスパートリサーチ」

ユーザベースでは再上場に向けたエクイティストーリーのひとつに「エキスパート」を挙げています。会社としてそれほどエキスパートリサーチの領域を重要視しているわけですが、ER Proとしてどう事業に貢献できていると思いますか?

藤田:
2つあると思っています。ひとつは、スピーダのMRRに加えて収益を伸ばしていける要素になれている点で、ユーザベースの事業成長上重要な役割を担っていること。もうひとつは、エキスパートリサーチが伸びること自体、スピーダのプラットフォームとしての価値を上げるカギになると思っている点です。

スピーダのIR情報やアナリストレポートも大事ですが、それとエキスパートの持つリアルの知見を合わせることで、さまざまなリサーチが可能になります。

僕自身、前職で新規事業開発をしていて、頻繁にリサーチをしていました。このとき、表に出ている情報だけでは足りなくて、実際に現場がどうなっているか、抱えている課題は何かといったことも含めてリサーチが完成していくんですよね。

それをスピーダとエキスパートリサーチを合わせることで、ひとつのプラットフォームでリサーチができるのは、スピーダの非常に大きな価値だと思います。

スピーダの価値向上で言うともうひとつ、FLASH Opinionといって、スピーダ上で送られてきた質問に対して24時間以内にエキスパートが回答するサービスがあるんですが、この知見も文字情報としてスピーダに蓄積されていくんです。

過去に似たような調査をしていれば、そのときどんな回答をもらったか、スピーダをさかのぼって見ることができる。利用者数が増えれば増えるほど、ユーザー企業オリジナルの情報資産が蓄積されていくんです。その点で、エキスパートリサーチはスピーダにとっても重要な事業だと思いますね。

ER Pro 山崎

山崎:
ユーザベースの創業当初からスピーダを使ってくださっているコンサルティングファームのお客様とともに、プラットフォームの価値を向上させていくところに私たちのチームの意義がありますよね。

これまでそうしたER Proチームで扱ったコンサルティングファームのユースケースが、ほかの事業会社の顧客に展開されたことはあったんですか?

山崎:
ユースケースをそのまま展開した事例はありませんが、トップユーザーとしてエキスパートリサーチを活用してくださっているコンサルティングファームのフィードバックを、サービスのオペレーションやプロダクトに反映していくことで、最終的に事業会社のお客様にもスピーダのプラットフォームの価値を感じてもらえると思っています。

藤田:
大手の事業会社になると何万人という従業員がいますが、そのうち10人がスピーダを使ってくれているところから、それを1,000人に増やしていくフェーズが今後必ず訪れると思っています。それは、ちょうどいま僕らがコンサルティングファームで経験していることなんですよね。

今後そうした状況が事業会社で発生したとき、どういう顧客アプローチをすればいいか、社内でノウハウを共有していけると思っています。

事業を伸ばす手法の確立はこれから。自ら判断し「つくっていける」おもしろさがある

エキスパートリサーチはユーザベースの再成長には不可欠ですね。そうしたプレッシャーもあるなかで、2人がどんなやりがいを感じているか教えてください。

山崎:
一番は、お客様に価値を提供できたときですね。

エキスパートネットワーク自体、日本にはまだまだ定着していないサービスです。活用いただくお客様を増やすことで自分たちがマーケットをつくっている感覚を持てたり、お客様に貢献できているなと思えたりした瞬間にやりがいを感じます。

お客様から「このプロダクトめっちゃおもしろいね」とか「仕事がものすごく楽になったよ」と言っていただけるのはとても嬉しいし、かつ、ここがエキスパートリサーチの存在意義なんだろうと思います。

藤田:
そうですね。この領域は事業を伸ばすうえでのポイントがどこにあるか、まだ確立されていないんですよ。MIMIRはユーザベースの中でも比較的若い事業で、SaaSみたいに「THE MODEL(※)」がしっかり組まれているわけでもない。

THE MODEL:SaaS企業に最適化された営業組織モデル。セールスフォース社が実践していた営業手法をもとに、福田康隆氏が体系化したもの。

どういう層にどういうメッセージを伝えていくか、CSのリソースをどこに向けるかなど、事業を伸ばすうえで何が大切かを自分で見極めて、そこにリソースを投資するかどうかの判断ができるのが一番おもしろいですね。

直近でいうと、顧客との接点を効率化するためにチーム内にIS機能をつくったんですが、そうした動きが自由にできる。失敗もありますし、常に改善も必要ですが、お客様に対して価値を届けるために組織で何に取り組むべきかを模索できるのは、今の仕事の面白い部分ですね。

藤田尚之
市場を創出している段階だからこそ、失敗も含めいろいろ試せる環境ということですね。

藤田:
そうですね。ER Proのメンバーはただ自分が担当するお客様に向き合うだけではなくて、それぞれ何かにオーナーシップを持って、チーム全体でどう成果を挙げていくかを考えています。それぞれが施策のオーナーとなり、お客様により満足いただけるようにPDCAを回している点は、リーダーとしても頼もしいです。

山崎:
それこそ2022年にはマーケ施策に力を入れてメルマガを発行していたんですけど、残念ながらあまり成果が出なかったんです。翌年には別の施策に切り替えたんですが、いまはまたメンバーが増えてやれることが広がってきたので、前回の反省を生かしたメルマガ施策に再度取り組んでみてもいいかなと。

藤田さんのPDCAを回す話と同じで、一度失敗したことをもう一度掘り起こして試せるみたいな部分もありますね。

ユースケースの発掘と機能の開発・実装で最高のプラットフォームを提供したい

ER Pro Teamが今後どういう姿を目指しているか、教えてください。

山崎:
事業会社と比較して、コンサルティングファームのお客様はサービスを導入するか否かの判断がより合理的です。必ずと言っていいほど競合他社と比較されるので、その中でどう勝っていくか、いま一番の課題だと思っています。

お客様に、どうしたら私たちのサービスを使ってもらえるか、価値を感じてもらえるかを思考して、チームで実行する。そこで得られたフィードバックをオペレーションサイドやプロダクトサイドに伝える。このサイクルをもっと早めて、マーケットで勝ちにいきたいですね。

藤田:
MIMIRがユーザベースにグループ入りした背景には、スピーダと融合してワンプラットフォームとしてのユースケースを提案したいという思いがあります。

ただ、「スピーダもエキスパートリサーチも、ワンプラットフォームで使えますよ」と言葉で伝えただけではお客様には伝わりません。お客様にとってどんなメリットがあるか、そのユースケースを見出していく必要がある。足りていない機能があれば、早く開発・実装する。

両者を組み合わせて、お客様にとって最高のプラットフォームにしていきたいですし、そのためには顧客接点を増やしてフィードバックを得ていく必要があります。そのためには一緒に働くメンバーを増やして、PDCAをどんどん回していきたいですね。

このマーケットはいま、過渡期にあります。エキスパートリサーチのように、データとエキスパートとAIを組み合わせてお客様に価値提供できるサービスは、海外も含めてプレイヤーが少なく、マーケットチェンジを起こせる可能性があります。そうした点でも、これからが楽しみですね。

山崎・藤田

編集後記

エキスパートリサーチ事業については知っていても、各チームが具体的にどんなことをやっているのか、取材前まではあまり深く把握できていませんでした。そんな私に2人とも丁寧に解説してくれて、私もエキスパートリサーチ事業の未来にワクワクしています!

執筆:宮原 智子 / 撮影・編集:筒井 智子
Uzabase Connect