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「究極のカスタマーサクセス」を実現したい──MIMIR Professional Customer Division

「究極のカスタマーサクセス」を実現したい──MIMIR Professional Customer Division

今回から、ユーザベースグループのさまざまなチームを紹介する新シリーズをスタートします。

初回は2020年4月にユーザベースグループ入りしたミーミルのProfessional Customer Division(略して「PCD」)です。「え? チーム紹介なのにDivision???」と思うかもしれませんが、インタビュー中に説明しますね。

インタビューに答えてくれたのは、Divisionリーダーの山中祐輝(さんちゅ)です。2014年7月にユーザベースに入社した山中は、2021年1月MIMIRに異動。なぜMIMIRに異動したのかも含め、PCDがどんな仕事をしているのか、どんな難しさ・やりがいがあるのかなど、たっぷり語ってもらいました。

目次

MIMIRざっくり年表

2017.01 ミーミル創業(MISSION経験知の価値付けと流通)
2017.04 ユーザベースを引受先とした第三者割当増資(シナジー追求のためUBグループ会社に)
2017.10 EXPERT RESEARCHサービスリリース(プロフェッショナルファーム向けに提供開始)
2019.11 EXPERT OPINIONサービスリリース(エキスパートの知見コンテンツ制作開始)
2020.04 ユーザベース完全子会社化・経営統合(SPEEDA・NewsPicksとのシナジー追求加速)
2020.09 サービスブランドリニューアル
・法人向けサービス「SPEEDA EXPERT RESEARCH
・エキスパート向けサービス「NewsPicks Expert
2020.09 FLASH Opinionサービスリリース(24hで専門家コメント収集・SPEEDA共同サービス)

チームメンバー紹介

山中 祐輝(リーダー):三菱商事 → ユーザベース SPEEDA(2014年~)→ MIMIR(2021年~)
土谷 友子:ソニー系スタートアップ → MIMIR(2019年〜)
中田 裕介:IMJ → フリーランス → PwC → ユーザベース SPEEDA(2019年〜)→ MIMIR(2021年~)
山崎 仁保美:進研アド → MIMIR(2021年~)

PCDってどんな仕事?

まず、なんでチームではなくDivisionなのか教えてください。

MIMIRはまだ小規模な組織ですが、この1年で新しいチャレンジをたくさんしているため、立ち上げ間もないチームがたくさんあります。そういった各機能別組織が機動的に動けるためにも川口さん(川口 荘史/MIMIR代表)直下に紐づいています。まだ小規模なので実質的にはチームと変わりませんが、今後組織規模が大きくなっていくことも見据えて、Divisionとして運営しています。

組織構成についても教えてもらえますか?
MIMIR組織図

ビジネスフローでいうと、まずBPとCSが事業会社向けのDivisonです。

BPの中にマーケティング、インサイドセールス、Business Producerチームがあります。Business Producerは、いわゆるフィールドセールスの役割も担っていますが、契約の受注で終わらず、大手の注力先についてはその後のサービスデリバリーまで伴走型の支援やクライアントとの共同ソリューション開発まで行っています。なので、フィールドセールスでなく伴走者としてのBusiness Producerという名称で日々活動しています。

CS Divisionは、BPから引き継いだ多くの事業会社クライアントに対して、購入いただいたチケットを活用して価値を届けるまでを担当するカスタマーサクセスのDivisionです。昨今、価値の届け方としてオーダーメイド型でレポートを納品してほしいというニーズがすごく増えているので、CS Divisionの中にレポート作成を担うチームもあります(EXPERT Report)。

ここまでが事業会社向けのカスタマーサイドで、そのプロフェッショナルファーム向け機能を担うのがPCDです。アカウント深耕がメインなので、インサイドセールスやマーケティングの機能はほぼありません。BP、CS、PCDという3つが、カスタマー側に向いているDivisionです。

一方で、実際のサービスを提供しているのがResearch DivisionとOpinion Divisionです。Researchが最もコアなサービスであるエキスパートインタビューのアレンジをしています。ユーザーからの「こういう人にインタビューしたい」というリクエストを受け、推薦リストを提出します。

それに対して「このエキスパートに話を聞きたい」というリクエストがあれば、今度はエキスパート側に「こういう案件があるので、お時間いただけますか?」「こういうことに答えられそうですか?」とアレンジしていきます。

Opinion DivisionのFLASH Opinionチームは、SPEEDA上で投稿されるユーザーからの質問に対して、24時間以内にエキスパートからの回答を回収し、ユーザーに届けるのが主な仕事です。オンデマンド型でエキスパートオピニオンを集めることに特化したチームですね。

一方、SPEEDA上で公開されているエキスパート見解コメントなど、エキスパートの知見をコンテンツ化してさまざまな形で公開発信しているのが、Expert Opinionチーム。この2チームがOpinion Divisionです。

そして、エキスパートと日々向き合っているのがExpert Marketing Division。Expert Recruitingチームは個別のプロジェクト案件で必要とされるエキスパートを探してくるヘッドハンティング部隊です。LinkedInなどを駆使して、日々「今必要とされているエキスパート」を探しています。Expert MarketingチームはNewsPicksや外部提携などさまざまなアプローチからNewsPicks Expertを増やしていく活動をしています。

PCDはどんな役割を担っているんですか?

簡単にいうと「プロフェッショナルファーム」と呼ばれるコンサルティングファームやプライベート・エクイティ・ファンド(以下「PEファンド」)のお客様に対して、徹底的な深耕カスタマーサクセスをしています。

MIMIRは2017年1月に創業しましたが、2020年4月にUBグループの100%子会社になったのがこのDivision発足のきっかけになりました。創業当初からユーザベースグループの一員でしたが、100%子会社化したことで、SPEEDAやNewsPicksとの事業連携が深くなってきたんです。

2020年7月からSPEEDA上で展開する共同サービスの開発がスタートし、同9月に「FLASH Opinion」としてリリースされました。その新サービスをグロースさせていくには、SPEEDAとMIMIRの共同チームをつくったほうがいいよね、という話になったんですね。FLASH Opinionを含むエキスパートリサーチサービスを最も使ってもらえるプロフェッショナルファームに対して、徹底的に向き合うために生まれた共同チームが、僕たちのPCDです。

チームではどんなコミュニケーションを取っていますか? 他のチームとの連携についても教えてください。

チーム内では週次の定例ミーティングに加え、毎日「Daily Chat」というノーアジェンダの時間を設けてオンラインで会話しています。あとは各メンバー同士の1on1かな。

他のチームとの連携でいうと、ResearchチームやFLASH Opinionチーム、Expert Recruitingチームなどは密に接するので、週1で定例ミーティングをやっています。先ほどのDaily Chatには、一部Researchチームメンバーも入っていますね。

FLASH Opinionをはじめとするエキスパート関連機能の開発をしているUBのプロダクト/デザインチームとも、毎週2回の定例でコミュニケーションしているし、マーケティング系の施策もやっているのでExpert MarketingチームやBPのMarketingチームとも毎週の定例があります。もちろんコーポレート部門には法務・会計・総務など、さまざまな観点で日々助けてもらっています。

あとは同じクライアントに対峙しているので、当然ながらSPEEDAのカスタマーサクセスチームとも定期的にコミュニケーションを取っています。MIMIRはUBグループのさまざまな事業と連携しているので、事業を超えたコミュニケーションが必要とされる場面はすごく多いですね。

難しさとやりがい

新サービス、かつプロフェッショナルファーム向けって難易度が高そうです。

そうですね。そもそもエキスパートサービスはSaaSではありません。SPEEDAはSaaSだけど、その上にFLASH Opinionやインタビューなどエキスパートサービスが乗っかっていく形なので、B2Bのマーケットプレイスモデルなんですね。

で、B2Bのマーケットプレイス型のセールスやカスタマーサクセスは、SaaSと違って確立されたセールスモデルがないんですよ。とにかく毎日試行錯誤の連続です。アカウント毎に深耕するといっても、SaaSプロダクトであるSPEEDAであれば、窓口として対面する契約担当者がユーザーであることも多く、契約担当者に利用促進していけば、ちゃんと継続してもらえる。

でもFLASH Opinionやエキスパートインタビューはマーケットプレイスなので、各ファーム内に所属している数百〜数千人規模のコンサルタント1人ひとりに、どんどん利用してもらわなければなりません。僕らが日々ご相談させていただく担当窓口の方々だけでなく、現場の1人ひとりのユーザーが業務の中で僕らのサービスを想起してくれて、実際に使っていただけないといけない。

なので、担当者経由でいわゆる空中線──キャンペーンやメルマガ配信、セミナー・勉強会の実施などをしながら、現場の各コンサルタントに電話・メール・Zoomなどのオンラインミーティングで泥臭くアプローチして1件1件の依頼を積み上げていく地上戦の組み合わせが求められます。

その際にどのようなKPIを置けばいいのか。成功モデルがないので、毎月のようにやり方を変えながら、セールスモデルを確立していく。それが難しさでもあり、面白さでもあります。

先日アクセンチュア様の事例紹介記事が公開されましたが、具体的にどのように提案したんですか?

ただ単に「うちのサービスを使ってください!」とアプローチするのではなく、「新しいサービスを一緒につくっていきましょう」というご提案をしました。FLASH OpinionやSPEEDA上でのインタビューができる新機能をつくって届けて、フィードバックをもらって修正し、また届ける。そのサイクルをぐるぐる回していく。それを繰り返すことが、結果としてカスタマーサクセスにつながっていく。イメージとしては事業開発に近いですね。

アクセンチュア様には共同開発パートナーになってもらっているんですよ。UBのSlackにプライベートチャンネルをつくって、アクセンチュア様のコンサルタント20〜30人くらいに入っていただいています。そこでディスカッションしたり、毎月UBのプロダクト/デザインチームも一緒に入ってフィードバック定例をやったりしているんです。

その結果スタートから半年くらい経って、アクセンチュア様は現場のコンサルタントの方々が、毎日のように僕らのサービスを使ってくださっています。一緒にサービスをつくりながら、ユーザーがほしいと思えるものをつくった結果、ものすごく使っていただける。これは本当にうれしいし、究極のカスタマーサクセスだなと思っています。

いまは他のプロフェッショナルファーム様にもご提案していますが、どこのファームでもエヴァンジェリストになってもらえる方がいないと、広まっていきません。アクセンチュア様の場合、NewsPicksの記事導入事例にも登場いただいた方々がFLASH Opinionに共感していただけたことが大きかった。だから共同開発パートナーという座組で一緒にサービスをつくることができたんです。

でもファームによっては、共同開発パートナーといった座組でご一緒するのが難しい会社もたくさんあります。その場合は、とにかく現場のコンサルタントの皆さんに愚直に価値をお伝えしていくしかありません。

成功モデルがないので、いろいろな施策を組み合わせながら、どの施策が一番ユーザーに届くのか試行錯誤している感じです。PCDのお客様はほとんどが既存ユーザーですが、取引ポテンシャルに対して、現在値はまだまだ1合目。そこをこの1〜2年で一気に登っていきたいと思っています。

KPIのモデルがないとのことですが、今はどんな数字を追っているんですか?

わかりやすいところだと、FLASH OpinionやSPEEDA上でのインタビューチケットの利用回数ですね。その最大化が一番のKGIですが、依頼数とかユニークユーザー数とか、その前の接点数とか、足元追いかけるKPIは四半期ごとにどんどん変わっています。

僕らPCDが担っているのは、徹底的な顧客深耕型×事業開発でプロダクトやサービスを「つくって届ける」という新しいカスタマーサクセス。それで売上を最大化していくことです。顧客としっかり伴走していくことにこだわりたいので、この先僕らの目標と注力したいクライアント企業が増えていくと、どんどん仲間が足りなくなります。というか、むしろ今も足りていません(笑)。

チームで挑戦しているイシュー

さんちゅはユーザベース入社以来ずっとSPEEDAを担当してきたと思いますが、なぜMIMIRに異動しようと思ったんですか?

佐久間さん(佐久間 衡/ユーザベースCo-CEO)に声をかけてもらったのがきっかけです。
SPEEDAとMIMIRでFLASH Opinionを軸に一気にエキスパートリサーチの価値をユーザーに届けていく重要なミッションがあり、そこにチャレンジしないかということで。

最終的には川口さんと話して決めました。「FLASH Opinionを新しいスタンダードにしていきたい。これまでのエキスパートネットワークにはない新しいデファクトを我々が創っていく。数年かければ新しいスタンダードを創れると思うけど、それをこの1〜2年で成し遂げたい」って言われて、すごくワクワクしたんです。

「この1〜2年で」という時間軸がすごく良いなと思いました。FLASH Opinionで潜在的なニーズを満たし、それが結果的にエキスパートインタビューにつながっていく新しい世界を最速でつくれると思ったんです。

現在あるインタビューサービスって、インタビューをアレンジすることにすごく工数がかかるんですね。「こういう知見を持っていますか?」というスクリーニング質問を事前に送って、知見を持っているエキスパートにインタビューを申し込むというプロセスがあるんですが、そこにすごく時間がかかる。

さらに実際にインタビューしてみたらニーズに合致しないケースもある……ユーザーからするとリスクが大きいし、エキスパートとしても貴重な知見と時間を有効に使えないのは心苦しい。

でもFLASH Opinionで一度テキストでの回答をもらっていれば、そのエキスパートがどういった知見をお持ちかわかるじゃないですか。「この回答をしているエキスパートにインタビューしたい」という形で進められるので、ミスマッチを限りなくゼロにできるんです。

なので、FLASH Opinionそのものにも価値がありながら、FLASH Opinionを軸にインタビューという既存のサービス体験も刷新し、新しい知見獲得の世界をつくれる。それを3〜5年で浸透させていくのではなく、1〜2年でやりたい。そんな話を川口さんから聞いて、たしかにそれはすごくチャレンジングだし、面白そうだとワクワクしました。それで最終的にリーダーを任せてもらう決断をした形です。

PCDとしてどんなことを目指しているんですか?

まずは、先ほど話した「エキスパートの知見獲得体験を変革するハブになる」ということですね。SPEEDAがプロフェッショナルファームの方々のリサーチ業務を変えたように、FLASH Opinionをはじめとする新しい知見獲得体験を民主化することで、プロフェッショナルの方々にとってなくてはならない存在になりたい。

そして、それと並行して「マーケットプレイス型B2Bサービスにおける究極のカスタマーサクセスを創造する」こともチャレンジしたいです。サービスやプロダクトをアジャイルに進化させながらユーザーに価値を届ける「究極のカスタマーサクセス」を体現したい。ゆくゆくは、そのセールス・カスタマーサクセスのやり方が業界のロールモデルになるといいなと思っています。

とはいえ、現状とのギャップはすごくあります(笑)。「挑戦の数」がまだまだ全然足りません。プロフェッショナルの皆さんに感動してもらえるのはどういうユースケースなのか、どんな機能・サービス改善が一番インパクトをもたらせるのか、どういう行動KPIを持てば依頼数が増えるのかなどの勝ちパターンがまだないんです。

ロジックで積み上げるのが難しい中、勝ち筋がどこなのか見つけるには、とにかくいろいろなことをやってみないと分かりません。とにかくいろんな試行錯誤を積み重ねています。

なので、とにかく仲間が足りないですね。2Q(4〜6月)は特定のプロフェッショナルファームに徹底的に注力する意思決定をしましたが、もっと仲間がいたら注力先をもう1〜2社増やせたかもしれません。

打ち手を増やさなければならないけど、4人だとできることが限られるのでアクションを絞り込む必要があります。ものすごくチャレンジングな環境であることは間違いないので、ぜひ一緒に考え、動いてくれる人に仲間になってほしいです!

執筆:筒井 智子
Uzabase Connect