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多様であることは変化に強い──INITIAL事業CEO 千葉信明

2021/09/29

多様であることは変化に強い──INITIAL事業CEO 千葉信明

ユーザベースはDiversity & Inclusion(以下、D&I)の推進を加速するためのコミットメントを発表しました。それに共感したメンバー発で生まれたのが、「Diversity Empowerment Community」。女性管理職比率が27%と、全従業員における女性比率43%にまだまだ乖離があるユーザベースには、Gender問わず「本当はリーダーになりたい、でも一歩踏み出せない」というメンバーが少なからずいることがわかってきました。 

そこで、ユーザベースの多様なリーダーに光を当てる新企画、「Diversity Empowermentシリーズ」をスタート。社内外で迷っている人を「このスタイルならできるかも!」とそっとエンパワーします。10+αの質問から、新たなリーダー像を探っていきます!

第5弾はINITIAL事業CEO、千葉信明に話を聞きます。直近2人目の子どもが生まれた千葉は、もともと「スイッチが入ると延々と働き続ける」タイプ。そんな千葉が子どもが生まれてどう変わったのか、メンバーとして入社してから事業CEOになるまで、どんな変化があったのか、たっぷり語ってもらいました。

千葉 信明

千葉 信明NOBUAKI CHIBAINITIAL事業 執行役員 CEO

慶應義塾大学経済学部卒。三井住友海上火災保険株式会社で代理店営業を経験後、株式会社CyberZにて新規事業立ち上げに参...

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目次

1. リーダーを打診されたとき、どう思ったか?

初めてリーダーになったのは前職です。約3年半の在籍期間の中で、リーダーをやっていたのは2年くらい。メンバーの人数もバラバラで、3〜4人チームもあれば、15〜16人くらいのチームを見ていた時期もある感じです。セールスだけでなく、番組ディレクターチームのリーダーも兼務していましたね。

打診されたというか、サイバーエージェントグループはある程度結果を出すとリーダーになるのが通常だったんです。ユーザベースでタイトルを上げるのに近いイメージかな。なので「来月からリーダーで」って言われて、「あ、良かった」みたいな感じでした。

2. 実際にやってみてどうだった?

最初にリーダーになったチームは5〜6人メンバーがいたかな。新卒がいたり、僕より15歳くらい年上の人がいたり。すごく悩むようなことはなかったけど、リーダー経験のある周りの人たちと比べてしまうこともありました。劣等感というか、自分の中で感覚として持っていることを上手く伝えられないと感じることもあって。

良いリーダーって、相談したら前向きになれる人だと思うんですね。でも特に新卒メンバーから相談を受けたとき、アドバイスがあまり響いていないなって感じることもありました。相談をしてくれたメンバーが前向きな感じになるのは、半分くらいしかなかったんじゃないかな。

職種が異なるチームを見ていたときに意識していたのは、相手に合わせてコミュニケーションを変えること。セールスであればとにかく成果へのコミットを求めるけど、セールスメンバーの中には自己アピールが苦手な人もいますよね。それはユーザベースでもあまり変わらないかな。

ユーザベースで明確にメンバーを持ったのはいつなんだろう……結構ふわっとしているんですよね。だって僕がユーザベースで最初にやった仕事、面接なんですよ? 入社初日に佐久間さん(佐久間 衡/ユーザベースCo-CEO)から「ちょっと面接やってよ」って言われて(笑)。

徐々にINITIALに人が増えていって、入社後の1on1やフィードバックは僕がやっていたので、そのタイミングでリーダーなのかな。新卒やインターンもいれば、昔からいるメンバーもいるようなチームだったので、前職とあまり景色は変わらなかったですね。

ユーザベースってコンピテンシークライテリア(評価基準)やタイトルも分かりやすいじゃないですか。でもタイトルが上がること=良いこととは限らない

前職はみんなリーダーになりたい、事業責任者になりたい、みたいな文化だったけど、ユーザベースにはそれがない。もっと仕事とプライベートのバランスを取って働きたい、別の職種にチャレンジしたいっていう人もいます。ユーザベースで50%、他で50%みたいな仕事の仕方もOKな中で、いろいろなキャリアの築き方が許容されていますよね。キャリアステップも本当に人それぞれ。

チーム合宿の様子

チーム合宿の様子

明確に「チームリーダーに」と言われたのは、2020年にSaaS事業が統合され、そのカスタマーサクセスチームができたタイミングです。このときは正直つらかったですね……何これって思ったし(笑)。統合するということの背景がわからなかった。

SPEEDAとINITIALのカスタマーサクセスチームのリーダーをやってほしいと言われたけど、「やるイメージが沸かないです」って2回断ったんですよ。どういう体制になるかもよく分からなかった。「頑張ってくれ」って言われても「いや、それじゃ頑張れない」って。

そのとき初めて佐久間さんと私個人のことで1時間半くらいじっくり話しました。それまでは仕事上でも絡むことはあるけど、私個人の話をする機会は振り返るとほぼなかった。いい意味で入社当初からシンクロさせてくれていたから、あえて個人の話をすることはなかったんですね。

そのときに「千葉っちはそもそも何がしたいんだっけ?」って話になったんですね。当時は地元である宮城県を意識していて、東京と離れたところでも同じように挑戦できる環境、企業をつくりたいと答えました。
そうしたら佐久間さんから「飲食店をやりたいわけじゃないよね。プロダクトカンパニーでしょ? だったらカスタマーサクセスという職種は経験しておいたほうがいい」って言われて。

前職でマーケティングを経験し、INITIALでフィールドセールスもインサイドセールスもやりましたが、カスタマーサクセスだけやったことがなかったんです。「確かにやってみないと分からないな」と思って、イメージがつきました。

統合チームになって最初の2ヶ月は、誰が何をしているか分からない状態だったので、それを整理することに時間を使っていて。チームミーティングや1on1など、コミュニケーションが活発なのはいいんだけど、アイデアのブレストをしているのか、プロジェクトを成功させるために集まっているのか、ゴールを明確にすることを意識していました。

各メンバーのやりたいことが分散している感覚があったので、チームとして同じ方向を向いて、そこにコミットするようにしたいと考えたんです。今カスタマーサクセスチームとして進化しなければいけないことを決めて、そこに効くアクションが取れるよう、徐々にみんなの意識を揃えていきました。「やってみる」じゃなくて結果を求めるというか、中途半端にならないよう気をつけていましたね。

3. 何を大事にしているか?(仕事だけでなく、人生の価値観)

何だろうな……まず相手はどんなことを考えているのかなど、メンバーのコンディションはすごく気にしています。仕事に限ることではないですが、自分が関わる人は幸せであってほしいと思っています。

事業CEOになってから、ユーザベースグループ全体を主語に考えることが自然に増えてきている気がします。INITIALだけでなく、SPEEDAやNewsPicksの課題にも目が向くようになったし、ユーザベースグループをどう大きくしていくか考えられるようになったのは、自分の中での嬉しい変化ですね。

地元宮城にユーザベースのような文化をもった企業をつくりたいって想いが、今はユーザベースを拡大していけば、やりたいと考えていたことをより大きなスケールで実現できると思うようになりました。

4. ワークライフバランスについて、どう考え、実践しているか?

家庭と仕事のバランスは、2人目の娘が生まれてからずっと悩んでいますね。2歳と0歳の娘がいて、上の子が16:30くらいに帰ってくるので、以前のようにぶっ続けで働けなくなりました。なかなか集中できなくなったというか、もっと仕事したいなと思うことも正直あります。

僕はやりたいと思ったことはどこまでも続けちゃうタイプ。本や漫画も読み始めたら、一気読みしちゃう。仕事でも「ここぞ!」という踏ん張り時には、明け方まで働いてしまうこともあります。あまり大きな声では言えないですけど(笑)。

もちろん他の人にマネしてほしいわけではないけど、スイッチが入るとずっとやり続けちゃうんですね。家族環境でそれが分断されるというか、不完全燃焼な感覚を最近は持つことが多いです。

子どもがもっと大きくなったら……と考えることもあるけど、今のやり方で大きな問題が起きているわけじゃない。だからいいのかなって。悩んでいるけども割り切れてもいる。子どもはめちゃくちゃかわいいですし。

本当にヤバくなったらスイッチを入れるというか、ちょっと睡眠時間を削る選択肢もあるわけで。ユーザベースは自由な働き方が選べるからこそ、スイッチはいつでも入れられるというある種の安心感はありますね。

5. うまくいかなかったとき、どうしたか?

自分でコントロールできるところだけを考える! 自分で解決できること、できないことをわかりやすく整理する。自分で解決できることには「仲間に頼る」という選択肢もあります。仲間に頼ることも自分ができること。

6. メンバーと話すときに意識していること

状況に応じてではあるけど、本人がどうしたいかに合わせます。「成長したい」であれば頑張れってサポートするし、「家庭の事情でしんどい」なら「一旦休もう」って。本人の「こうありたい」をプッシュするようなイメージです。

ご家庭の都合があるなら全力で帰ってほしい。仕事は世の中にたくさんあるけど、家族は唯一のものなので、家族最優先でと思っているし、メンバーにも伝えています。

7. 普段どんな風に1on1をやっている?

仕事・プライベート問わず、そのとき最も悩んでいることを聞くことが多いかな。コンフォートゾーンにいるなと思ったら刺激するし、悩んでいたら聞く。何にマインドシェアが取られているのかを聞くイメージですね。

相手が求めていれば仕事の話もするけど、業務に必要なミーティングであれば別で設定すればいいので、1on1はなるべく仕事から離れた話をするようにしています。

田口さん(田口 槙吾/FORCAS事業CEO)がどこかで言っていて、良いなと思ったことがあるんですけど、メンバーが悩んでいる、かつ自分が動かなきゃいけないときは、最優先で動いて、「動いたよ」って伝えることが大事だなと思っています。悩みを話してもらったら、「そっか、それじゃあまた来週」ではなく、すぐに動いたほうがいい。

次のステップが明確であれば、宿題を出すこともあります。たとえば新しくリーダーになったメンバーには、「どんなリーダーになりたいのか、どんなチームをつくってみたいのか、来週の1on1で聞かせてほしい」って伝えていますね。

少し話が逸れますが、リーダーは他のチームのリーダーともっと話したほうがいいと思っています。リーダー同士ならではの質問をお互いにしてほしい。「**さんのチームの現在の課題はシンプルに何ですか?」って聞かれると、相手はギクッとすることもあるし、逆にあなたのチームの課題はシンプルになんですか? って聞かれるから、自分も考えるはず。

そうすることで自分の思考がクリアになっていくと思うんですよ。あえて同じポジションの人同士で悩みを共有する、ぶつけ合うことで、自分に跳ね返ってくるんです。僕自身、いろいろなリーダーと話してきて、たくさん考える機会をもらってきましたから。

8. メンバーと意見が対立したとき、どうしている?

もう「話す」に尽きます。腹を割って話すことですね。

メンバーと言い合いみたいになったこともあります。相手が強い話し方でコミュニケーションを取ってきて、僕も強く返してしまったんですよ。「このミーティング、やる意味ないじゃん」とか「そもそもこの目標設定が無理」みたいなことを言われて、ちょっとカチンときちゃって……。でも話し続けた結果、そのメンバーの発言の背景が理解できました。

そして、そのコミュニケーションを取ったことで心から信頼できたんですよ。感情がぶつかったら、話し切ることが大事だと感じました。時間を無視してでも、本当に解決し切るまで話し切る。ちゃんと腹を割って話せば、分かり合えると思っています。

9. ユーザベースのD&Iについてどう思う?

難しいですよね。逆にD&Iの達成って何なんですか? って聞きたい。でもユーザベースでできないなら、他の組織もできないだろうなって思うんですよ。「渦中の友を助ける」とか「異能は才能」ってバリューがある。だからこそD&Iの最先端にいないと、とは思います。

社員の男女比を整えることだけがD&Iなのかっていうと、それだけじゃない気がするんですよね。女性だからといって「女性枠の幹部だよね」っていうのは絶対に違う。そう口にしたら終わりな気がして。男性 or 女性ではなく、男性 and 女性──ORじゃなくてAND思考でいたいんです。家族 or 仕事ではなく、家族 and 仕事でありたい。

国籍についても難しいですね……。でも、できる/できないじゃなくて、まずは考えることが大事なんだろうなと思っています。

10. D&Iを実践するメリットは?

採用にもつながるし、メリットはいろいろありますよね。でも一番は「変化に強くなる」ことだと思います。多様な人の能力を集められるのは、長期的に強い。だって僕みたいな性格の人が100人集まって「営業会社でやっていくぞ!」って言っても、営業DXみたいなのが入ってきて仕事がなくなってしまうリスクがあるじゃないですか。そういう意味で、多様性はものすごく大事だなと。

INITIALのメンバーは、スタートアップを取り巻く環境に興味があって集まっているので、職種や性格、働き方は違うけど興味の対象は同じなんですよ。共通の話題や共通言語が多く、違う角度から同じものを見ているというチームだから、D&Iを実践しやすい環境だと思っています。

<私にとってのD&I>

家族と過ごす時間かなぁ。16:30に長女が保育園から帰ってくるので、16:30以降は会社のカレンダーに「子どもがいるので、ミーティングは事前にお声がけください」とブロックをしています。

特にミーティングや緊急対応がなければ、18:00にはPCから離れて、晩ごはんを一緒に食べる。お風呂上がって落ち着く21:00くらいまでは、家族との時間と割り切ってます。

その時間は子どもと遊ぶことが多いですね。長女はアイスが大好きで、知人からいただいた木製のアイスのおもちゃは毎日引っ張り出しています。おもちゃのアイスをつくってくれるんだけど、最近はメニューを持って、「何が良いですか?」と聞いてくれるようになりました。なぜか私にはいちご味の選択肢しか提示してくれないのですが(笑)。

おもちゃのアイス
インタビュー:小田切 香澄 / 執筆・編集:筒井 智子
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