1. はじめてリーダーを打診されたとき、どう思った?
リーダーになったのはユーザベースが初めてです。2017年2月に入社した当初は、SPEEDAのコンサルティングサービスチームの1メンバーでした。当時のリーダーが退職することになったタイミングで、リーダーを打診されたんです。入社9ヶ月後くらいだったかな。
リーダーになることについて、いずれはやりたいと思っていたし、特に抵抗はなかったですね。
2. ユーザベースで実際にリーダーをやってみてどう?
リーダーをやること自体が初めてだったこともあり、めちゃくちゃ大変でした……。前職は完全に年功序列だったので、どんなに優秀な人でも30代でマネジメントをやる例は見たことがなかったですね。あと「上がやると言ったらやる」みたいな上意下達のマネジメントしか見たことがなかった。なので、「あるべきリーダー像」みたいなものが前職に縛られてしまっていて。
でもユーザベースのカルチャーは前職とは全然違います。たとえばインターンからユーザベースに入った松井くん(松井 亮介/SPEEDAカスタマーサクセス)は、社会人1年目当時でも「この方向性は納得できない」「それは違うと思います」ってハッキリ言うんですよ。それがまず衝撃でした。前職ではあり得ないことでしたから(笑)。そういうメンバーたちのマネジメントをどうやっていけばいいのか、最初はすごく葛藤がありましたね。
私は強いビジョンを掲げてメンバーを引っ張り、みんなが付いてくる、みたいなパワフルなリーダー像に憧れていたんですよ。「自分はこういうリーダーでありたい」って呪縛はありましたね。
でも全然できなくて、いろいろ失敗もしました。私はどちらかというと引っ張っていくより、頼らせてもらうことが多いタイプ。なので全員が120%以上の力を発揮し、結果的に大きなことができるようにしようと、マネジメントスタイルを完全にシフトしました。そこから上手く回るようになるまで半年くらいかかったかな。
変えようと思ったキッカケは、自分が圧倒的にキャパオーバーになってしまったことでした。コンサルティングサービスチームでサポートデスクの仕事をしつつ、事業として課題になりつつあった継続率への対応として、既存のお客様に能動的な対応をするカスタマーサクセスも立ち上げることにしたんですよ。チーム人数は変わらないまま、やることが倍になった感じで。それでみんなに頼って、一緒に頑張るようなスタイルに変えたんです。
それまでは何かイシューがあったら、自分で分解して方針をつくり「これでやっていこう」ってメンバーに伝えていました。スタイルを変えてからは、イシューが発生したタイミングで、そのままメンバーに伝えて、ぐちゃぐちゃの課題段階から一緒に考えるようにしました。自分がやりたいのは、そういうリーダー像なんだなって思えたのは、変えて半年後くらいです。
とはいえ、自分より圧倒的にエッジのある人をマネジメントするとか、ユーザベースのリーダーならではの難しさはありますね。失敗している人もいっぱいいるけど、その経験を元に再度チャレンジできる。リーダーとしての失敗経験を持つ人がメンバーにいるのって、すごく心強いんですよ。
3. 何を大事にしているの? 仕事だけでなく、人生でも。
「誠実さ」と「純度」を大事にしたいですね。新しく何かをつくる・やるときって、誰かとぶつかることもあるじゃないですか。でも、それを避けないことを大事にしています。
ぶつかるとき、相手に強めに言わなきゃいけないこともありますよね。そのコミュニケーションを取る前に、「自分をよく見せる」とか「足元でいい結果を出したい」とかではなく矢印がユーザーに向いているかどうか、ちゃんと考えるようにしています。
「とりあえずこのQuater(四半期)稼げればいい」とかだと歪んじゃうんですよ。誠実じゃないと中長期的に絶対に大きくならないと思っていて。SPEEDAを見ると本当にそう思うんですよね。ユーザベースのプロダクトの中で歴史は一番長いけど、ずっと伸び続けてこれたのは誠実だったから。その歴史の重さを感じますね。
リーダーとしての話だと、私、こう見えてすごく傷つきやすいんですよ。メンバーに「こういうことを期待しているよ」って言ったけど、全然ズレていることもあるじゃないですか。
あるメンバーに「リーダーに向いているね」と言ったら、「そうですか?」みたいに言われたことがあったんだけど、後で聞いてみたら「自分はProfessional職寄りだけど、宇佐美さんが勧めるから言えなかった」って言われたことがあって……あれはちょっとショックでした(苦笑)。
チームが大きくなればなるほど、傷つく機会は増えると思うんですよ。それを避けようと思えば避けられるんだけど、逃げない。リーダーは傷つくもの。避けるっていうのは、相手に期待していないってことなので、相手にちゃんと期待して、ちゃんと傷つく。それでちゃんと落ち込む。
傷つくことが大事だと思っていて。チームに大きなインパクトのある事象があったとき、「とはいえ頑張ろう」って言っても「いや、正直頑張れないと思います」というコメントもらったりするじゃないですか。そういうのもドーンって落ち込むし、泣くこともあります。あまりに落ち込んだときは、1時間寝ることで復活します。寝るとだいたい大丈夫です(笑)。
4. ワークライフバランスについて、どう考え、実践している?
自分が機嫌よく、健康に働けているかを大事にしています。新野さん(新野 良介/ユーザベース共同創業者)が以前、毎日自分の状態を○×△でチェックしている、おかしい日が続いたら、食べるものを変えるとか、何か1つ変えるって言っていて、なるほどと思ったんですよ。ちょっとした「何かおかしい」を大事にしたいなって。
数ヶ月前に引っ越しをしたんですが、究極そうやって環境を変えるのって大事だなと思っています。ワークライフバランスって長い目で見て実現することだと思うので、「今はめっちゃ仕事する」とか「今はプライベートとのバランスを取りたい」とか、それを自分で自由に選びたい、そういう力を付けたいと考えているんです。自分に実力があることで、自由に選べることにつながると思うので。
WFH(Work from Home)が始まって半年くらいは「最高じゃん!」って思っていたんですよ。モニターや椅子など仕事環境も整っていたし、こんなに効率よく働けることないよねって。でもだんだん外に出る機会が少なくなってしまい、バランスがよくないなと思うようになりました。
高層階に住んでいたので、外に出るのも面倒で、Uber Eatsに月8万円みたいになっちゃって(笑)。家の中も会社みたいな感じ。家の環境ととWFHの相性が良すぎたんですよね。今は海の近くに住んでいて、朝と夕方に浜辺へ犬の散歩に行くようになって、だいぶバランスが取れるようになってきた感覚があります。
5. うまくいかなかったとき、どうした?
さっき話した通りですね。ちゃんとぶつかる、寝る!
6. メンバーと話すときに意識していること
私、人間観察が好きなんですよ。最近、「ナチュラルに『人』に関心がある人」というフィードバックをもらいました。
その人がOKRに置いていない、現業じゃないのにやっているようなこと、止められてもやっちゃうようなことが何なのか、それを知りたいんですよ。普段は穏やかな人が、このときだけ強く発言する、みたいなことってあるじゃないですか。そういうのを探すのが好きなんです。
それを見つけたらメモしておきます。本人のやりたいことと事業でやろうとしていることがつながっていたら、最高だと思うんですよね。
コミュニケーションにおいては、背景も含めてちゃんと対話することを意識しています。だからすごく時間をかけます。リーダーが決めたほうが早いって思う人もいるかもしれないけど、会話にちゃんと時間を取りたくて。あと反対意見に対しても、単に言いたいだけなのか、何か他にやりたいことがあるのかで全然違うので、そこを確認するようにしています。
7. 1on1のときに気をつけていることは?
人によるかな。相手に「今日こういうことを話したい」を持ってきてもらうようにしています。そうしないとタスク確認になっちゃうから。困っていることを相談してもらえるように、あまりカッチリしすぎず、ゆるい話をしてもOKな雰囲気を意識しているかな。なかなか難しいですけど。
リーダーとは週1回必ず30分以上の1on1をやっていますが、私の担当するDivisionは50人規模なので、メンバー全員との定期での1on1は止めました。New Joiner(中途入社者)とは入社1ヶ月後と3ヶ月後に時間を取っていますが、それ以外のメンバーとはカレンダーに1on1の枠を設定しておいて、話したい人がその枠に入ってもらうようにしました。
本当は全員とやりたいんですけどね……葛藤はあるし、このやり方に変えるとき、佐久間さん(佐久間 衡/ユーザベースCo-CEO)にも相談しました。
8. メンバーと意見が対立したとき、どうしているか?
さっきの話にも通じるけど、背景の確認をします。単に気に入らないだけなのか、過去の失敗経験があって言っているのか、いろいろな背景があると思うので、そこをしっかり聞く。
単に反対しているだけでなく、その意見の裏に本人の思いや考えがあれば、一度やってみたらいいと思うんです。一度そのやり方でやってみて、ちゃんと振り返りをする。対立して「いやいや、絶対ダメだからこっちで」ってなることは少ないですね。「過去こうだったからこうしろ」って言われるの、誰だって嫌じゃないですか。
9. ユーザベースのD&Iについてどう思う?
いろいろ思うところがあって……多様性のある組織の方が強いって感覚があるんですよ。たとえばINITIALの小玉さん(小玉 祐輝/ユーザベースFellow)はたしか同い年なんだけど、とある合宿で人生の年表みたいなものを共有する機会があって、小学生くらいの頃から全然違うんですよ。
そんな全然違う人生を歩んできた人と縁あって同じ会社で働いて、ひとつのことを議論しているのがすごく面白いなって思って。持っている経験の全然違う人たちと一緒に事業をやっていくことが、強さになっていく感覚があるんです。多様な人が集まらないと良いものができないっていう原体験になっていますね。
あと性別で考えるのが本当に嫌いです。性別は数ある「違い」の中の単なる1つでしかないと思っています。「女性だから後押しする」とか誰も望んでいないと思いますね。変に後押しする感じに一番違和感を感じます。たとえば属性で評価されてそのひと個人を見ていないことがあった場合、それを1mmでも感じた瞬間、当事者は幻滅すると思うんですよ。少なくとも自分だったらガッカリします。
前職では、めっちゃ属性でお互いを見ていました。「性別・出身大学・×年入社」みたいな。属性の裏にある個性は全くといっていいほど見ない、気にしない。それがすごくイヤでした。
でもユーザベースではその人の好きなことや個性に注目して、興味を持って会話する。機会も評価もフェアだなって思います。その前提があったら、あとはシンプルにリーダーの仕事を「面白くて成長できる、やりたい仕事」にしていくことができれば、どんどんいろいろなリーダーが生まれてくると思う。
ユーザベースは国籍に関するD&Iはまだ途上ではあるけど、阻害するものはないと思います。ミーティングにも同時通訳が入るし、特に大規模な場では資料は日英併記が基本。それを特別なこととしてではなく、必要だと思って自然にやっている感じです。
チームを運営していて多様性の観点で気になるのは、リーダーが社歴の長い人で構成されがちな点です。メンバーとして結果を出してからリーダーになるケースが多いんですよ。そうすると必然的に、ある程度の社歴がある人になっちゃう。
社歴が長いと「コレってこうだよね」って阿吽の呼吸で意思決定ができる。本当は違うかもしれないけど、スピード重視だとそれで決めてしまうことが多いんです。でも、そうやってパッと決まってしまうときは、「ちょっと待てよ」と考えるよう意識しています。
とはいえ、入社してすぐリーダーをやるのも別の難しさがあるんですけどね。でも、いろいろなタイプのリーダーが生まれる組織にしたいと思っています。
10. D&Iを実践することのメリットは?
真逆の概念として、年功序列型の企業は分かりやすいと思います。「2013年入社の鈴木さん」は「2014年入社の鈴木さん」より絶対に偉い、みたいな。社内に「自分の数年後」みたいな人がいっぱいいる。でも結束はすごく強いし、みんな同じ辛さを握り合っているというか……家を購入した途端、地方に転勤させられるとか(笑)。でも、こういう組織は変化にはものすごく弱いと思う。
多様性のある組織はその逆なので、変化が多い環境では絶対に強いと思います。あと自分と全然違う人生を歩んできた人と話すのって、単純に楽しいですよね。「違う」ってことも「何が違うか」を知っておくことが大事です。
<私にとってのD&I>
メルカリのアンコンシャス・バイアスの資料はハッとさせられました。あとはみんなと喋りながら考えることが一番かな。