強みが異なるメンバーが集結
宇尾野 彰大(NewsPicks Culture & Talent Div./以下「宇尾野」) :
起案者は僕と西野さん(西野 雄介/元ユーザベース Head of Culture & Talent)。think beyondが始まるお知らせを見て、すぐ「出るよね」「ミーティングしましょう」って話になって。最初はお互いに言っていることが全然違ったんだけど、3回くらいミーティングして、TUNINGの原型ができました。
2人でやるのもアリだけど、せっかくだから仲間を入れたほうが面白くなるなと思って、平野さんに声をかけました。断られるかなと思ってドキドキしたけど、平野さんも「デザイナーが最初から新規事業に入って、価値を発揮すること」に思いを持って入ってくれました。
最終審査のプレゼン後、チーム全員が壇上へ! 写真は平野が質問に答えている場面
平野 友規(CDO Holdings Design Div./以下「平野」):
1次審査終わったタイミングでしたよね。実は当時、めっちゃ渦中にいたんですよ。ユーザベースを辞めるつもりはなかったけど、「何でユーザベースに来たんだっけ……?」って悩んでいる時期──マネジメント上のトラブルが起きていたので、人事課題に対する共感しかなかったんです。
そんなタイミングだったので、事業の立ち上げからデザインの力を発揮できるチャンスをもらった形ですね。目の前の仕事はやっていたけど、迷子みたいな状態だったので、もっと自分の力を証明するようなことがしたいと思って、2つ返事で参加を決めました。
原田 佳明(Holdings Product Div./以下「原田」):
僕はもともと別のアイデア──エンジニアのQAサービスでthink beyondに応募していました。1次審査を突破した後で西野さんから「一緒にやりませんか」と声をかけてもらったんだけど、1人でやりますって言っていて。でも2次審査が終わった直後に「まずは人事領域でやろうと思っているけど、ゆくゆくは他領域にも展開していく」と再度声をかけてもらい、せっかくなのでやってみようとチームに加わりました。
浅野 春美(Holdings Design Div./以下「浅野」):
私は今年3月に突然「think beyond相談」みたいなカレンダーが飛んできたんですよ(笑)。平野さんから「助けてほしい」って言われて。
SPEEDAではずっとトレンドの図解をやってきましたが、トレンドでは基本的に「編集されたもの」を図解する形なんですね。でもTUNINGでは編集から入れる。私が成長できる場所を提供してもらえた! と感じて、すぐに参加を決めました。
原田:
僕はエンジニア目線で「こうやったら今やっている検証が回せる」って具体を提案しましたが、宇尾野さんの人事への想い、事業を考える力、みんなを引っ張っていく力は本当にすごいなと思ったし、西野さんのロジカルさ、グローバルな視点もすごい。平野さんの、圧倒的整理力、デザイン力、新規事業に対する知識はさすがだなと思ったし、浅野さんのコミット力と行動力、人の思いを図解にする力も圧巻でした。それぞれ強みが異なるメンバーが集まったのが良かったなと思います。
審査員からの質問に答える原田
浅野:
私は平野さんに相談された翌日にチームの定例ミーティングがあったので、最初はキャッチアップが大変でした。でもどっぷり浸かったおかげで理解が深まったし、後から参加したからといって温度差もなく、みんな巻き込んでくれたので動きやすかったですね。
平野:
宇尾野さんは情熱と事業視点、西野さんは客観性と最後まで顧客目線なところ、はるみん(浅野さん)は図解化とコミット力、原田さんは技術とサポート力がすごくて。原田さんがTUNINGのチームSlackに投稿してくれた振り返り、めちゃくちゃエモかったですよね。
2021年7月1日に開催された最終審査のスライド
事業モデルとしての「Wow!」をつくりきれなかった
宇尾野:
しんどいポイントは人それぞれだと思うけど、やっぱり最後の1ヵ月はキツかったですね。今回僕らが落ちた理由でもあると思うんだけど、振り返ってみると最初のn=1──「こういう人っているよね」は具体で思い浮かぶんですよ。でもお金を払ってまでやるか? っていう……。
160名に対する利用者アンケートでも「お金を払っても使いたいですか?」って聞いたけど、基本的に知り合いに声をかけて使ってもらっていたので、そう聞かれたら「使う」って言ってくれるんですよね。事業モデルとしての「Wow!」をつくりきれなかった。
最後の1ヶ月くらいで事業規模の計算をしたときに「あ、詰んだな」って思いました。人事が持つ予算だけで考えると市場が小さい。目を背けていたというか、考えるのが遅かった。普通のアプローチであれば、市場規模と、普段どこにお金を使っているのかを並行して見るけど、僕らは敢えてそれをやらなかったんですよ。それはそれで良かった部分もあるんだけど。
平野:
僕はPoC(Proof of Concept/概念実証)の期間がしんどかったですね。イベントを開催したり、ユーザーと対話したり、他のメンバーはPoCで大活躍するんですよ。でも僕は現業とのバランスもそうだけど、もともとコミュニティとか苦手な方だったこともあって、あまり役に立てなかった。みんな頑張っているのに、自分は頑張れていない感じがして、しんどかったですね……。
自分に必死に言い聞かせていたのは、はるみんがPoCで大活躍するので、彼女を連れてきたのが大きな仕事だったってこと。
宇尾野:
それ20回くらい聞いた(笑)。
浅野:
何か新しい機能や施策をリリースしたとき、最初の反応は良かったのにだんだん反応が薄くなってくる、みたいなときはしんどかったですね。みんなで毎週ミーティングして、ユーザーのために何ができるか必死に頑張っているのに……って。
原田:
学びとセットの話になりますが、ユーザーが「ほしい」と言ってつくった機能でも、それが使われるとは限らないっていうのはしんどかったです。アンケートで「実際にあったら使う」って回答が多くても、実際に機能を作ったのに全然使われなかったんですよ……。
QAでの浅野
約160人を巻き込み、「共創」の入り口に立てた
原田:
このサービスを使ったユーザーが「めっちゃいい!」って言ってくれたこと。それが純粋に嬉しかったですね。「このサービスのおかげで助かった」「この1時間が2年分くらいの学びになった」という反応を見て、運営して良かったと思いました。
平野:
僕は最終審査で佐久間さん(佐久間 衡/ユーザベース代表取締役Co-CEO)が「これ、めっちゃいいじゃん」って言ってくれたことで、全部報われました(笑)。think beyondに通らなくてもいいやって思えるくらい、あの瞬間に「やって良かった!」って思えたんですよ。
あと稲垣さん(稲垣 裕介/ユーザベース代表取締役Co-CEO)から「平野さんがスライドをデザインすると、全部よく見える」って言ってもらえたのもすごく嬉しかったですね。最初からデザイナーが入ることのメリットを口にしてくれたので、2期以降のthink beyondでも初期からデザイナーを巻き込んでもらえればと思いました。
浅野:
私は自分が図解して届けたコンテンツの反応がすごく良かったときですね。私がつくったものをそのまま社内資料で使ってもらえた話を聞いて、デザインで役に立てた、デザインの力を自分自身で感じられる機会になりました。
浅野が制作した図解例
宇尾野:
基本的に嬉しいことだらけだったんですが、大きくはふたつあります。ひとつは関わってくれたメンバーが、今みたいに嬉しかったことを話してくれたこと。仮にこのプロジェクトを続けて人が増えたとしても、同じようにいいチームをつくれる手応えを感じました。
もうひとつはユーザーのみなさんが僕らの想いに共感して行動してくれたこと。もちろん温度差はあるけれど、160人くらいを巻き込んだんですよ。「共創」までは行けなかったけど、その入口に立てた感覚はあって。嬉しかったというか、今後の期待も含めて、いい動きがつくれたかなって。僕らは顧客課題はきちんと捉えきれていて、一方で誰もきちんと向き合えていない、ココには絶対チャンスがある! と確信が持てたのが大きかったですね。
平野:
やっぱりグランプリ・準グランプリの2チームはすごかったですね。PoCで役に立てなかったので、ちょっと遠慮してしまった部分はありました。「もっと機能をギュッと絞って、尖らせなければいけない」と主張できなかったなと。プロダクトとして尖れなかった後悔というか、プロダクトの価値をひと言で表現できない弱さがありましたね。
原田:
さっき宇尾野さんも言っていたけど、収益性についてはチーム内で計算したとき「ちっちゃ!」ってなっていたんですよ。人事領域だけでは難しいだろうなって。それをどう乗り越えるのかは、いまだに見つけられていません。もう少し何かなかったかなって思います。
浅野:
素直な気持ちとしては残念。すごく頑張ってきたし、心のどこかで事業化するんじゃないかって希望はありつつ、市場規模や収益性の話になるとモヤモヤしていて……それが最終審査のときにも反映されちゃったというか、審査員のみなさんに届いちゃったのかなと思います。
宇尾野:
正直、受賞したチームと僕らの決定的な違いは市場とかじゃなくて、「突き抜けていたかどうか」。そこに尽きるなと勝手に思っていて。僕らは最後の最後でちょっと迷っちゃったんですよ。よく言えば拡張性の話を、悪く言えば審査をハックしにいったんですね。「海外ではどうだ」とか「他の領域に染み出す」とか。
今思えば、あれはいらなかった。そこに頭を使うくらいだったら、もっとピュアに真っ直ぐ人事領域で突き抜けたほうが良かったんじゃないかなと。その迷いを最終審査の質疑応答でも坂本さん(坂本 大典・ニューズピックス事業CEO/think beyond審査員)にも突かれて、さすがだなって思いました。坂本さんは今までの経緯をほぼ知らずにプレゼンを聞いたはずなのに、ものすごく的確にツッコんできてすごいなと。
審査員からの鋭い質問に答える宇尾野
「教科書の外」に出られた感じがした
平野:
僕は明確に3つあって、1つは事業計画書づくり。自分が経営しているデザイン会社で新規事業支援をやってきてはいたんだけど、そこが足りなかったのでめちゃくちゃ学びになりました。
もう1つは、麻生さん(麻生 要一/AlphaDrive CEO)から「顧客のインサイトを突いているのはわかった」と言われたこと。自分はインサイトを突けているのか、ここ数年悩んでいた部分があって。麻生さんにそう言われたことで、「このやり方で間違っていなかったんだ」と思えました。
think beyondの制度設計や各チームへのメンタリングを担ってくれたAlphaDriveの顧客課題・提供価値・解決策のフレームワークは目からウロコの連続でした。僕にとって最高のフレームワークになったし、メンタリングでの大さん(白杉 大・AlphaDrive所属/think beyond事務局)からのフィードバックもすごかった。ビジネスパーソンとして、デザイナーとして、レベルが明確に上がった感覚があります。
3つ目は純粋に事業解像度が上がったこと。IR資料などを積極的に見るようになりました。僕たちのチームは数字の部分で最後ダメだったので、数字に対する感度は上がった。リーダーが集まるミーティングに出ても、数字のことをなるべく質問しようと思うようになったし、視座が上がった感覚があります。
原田:
さっき話したとおり「つくったけど使われない」こともあると知ったことですね。あとは尖らせること。複数機能をもったサービスにおいて、どれを尖らせるのか判断が難しくて。どれが1番ユーザーに刺さるのかの見極めって、ものすごく難しいなと感じました。
現業ではSPEEDAのユーザーに関する知識が少ないので、ビジネスサイドのメンバーの意見に「なるほど」って言ってつくっていたけど、think beyondを経て「本当にそう?」って立ち止まって考えられるようになりました。
ディスカッションを重ねたホワイトボード
浅野:
ひと言で言うと、とにかくやってみることの大事さを学びました。think beyondに参加するかどうかも若干迷ったんですよ。現業をやりながら新規事業をやるのは大変だと思ったし、コンテンツの編集から入って図解化するのも今までにない挑戦になるなって。
PoCでもとにかくいろいろなことをやってみて、改めて「やってみる」って大事だなと思いました。まさに「迷ったら挑戦する道を選ぶ」だなって。
宇尾野:
熱狂するユーザーの見つけ方と、そんな彼らとの寄り添い方について学びが多かったですね。ある機能について「ほしい」と言いつつ1回しか使わない人もいて、本音を聞いたら「宇尾野さんがやってほしいって言うから」って……初期のペルソナからそういう感じで、ユーザーの本音をつかむ難しさを体感しました。
一方でどんどん勝手に使ってくれるユーザーもいて、理由を聞くと「コレがあったから自分の成功につながっている」みたいに言ってくれるんですよ。それを聞いたときには、チームみんなで喜びを味わっていました。
ユーザーが勝手にイベントを企画したりもしてくれて、そういった「本当の情熱」を持って関わってくれる人が増えて、こういう人たちが増えることがサービスの成長につながるんだなって感覚があって。それを垣間見ることができたのは、「教科書の外」に出られた感じがしました。
宇尾野:
今回僕らは練りに練って、「知恵の循環が、世界を動かす」というビジョンで、人事のプロ・実践家が集う知恵交換プラットフォームを検討していました。200名以上の人事と関わっていく中で、顧客の課題は構造的にも確実にあると自信を持っている。
ただ、課題は明らかにあるんだけど、僕らがthink beyondをターゲットにやってしまったところがあるし、準備不足もあったので、もう一度ターゲットを決めずに模索する期間をつくろうと思っています。西野さんとも近々相談する予定です。
知恵が循環することで、不要な迷いを最小化し、人事が成果を出せる。活躍する人事が増えることで、その人事が所属する組織・企業がより良くなる。結果、人事のプレゼンスが上がり、人事になりたい人が増える。そして、より多くの知恵が循環していく──最高だなと。今回サービス化は叶いませんでしたが、近い未来、必ず形にしたいです。
坂本さんからも「一旦採算は気にせずやってみたら?」と言ってもらっているので、本当にもう1回やりたいか改めて自問自答しようと思っています。メンバーみんなにも再始動するときに声をかけるねって伝えている状況です。
TUNINGサービススライド
挑戦とは、自分の可能性を高める機会
原田:
難しいですね……「とりあえず面白そうだからやってみる」ってスタンスで、もともとそんなに「挑戦」って構えすぎないタイプなんですよ。think beyondも面白そうだからやってみるって感じでしたし。逆にそれくらい気軽に応募したらいいんじゃないかな。こういう機会は他にないと思ったら、やってみる。無理だと思っても一定期間は頑張ってみる。
浅野:
私は「成長」だと思います。今までやったことをないことをやることで、一皮むけるというかパワーアップする。今までとは違った自分になれる。think beyondで今までとは違った自分になれたと思うんです。ずっと見てきてくれている平野さんにも「成長したね」って言ってもらえたし。
現業もSPEEDAからINITIALにレンタル移籍(一定期間、別事業の業務に取り組む仕組み)になって、INITIALはラフがない状態から図解することも多いんですが、think beyondでやってみたことがINITIALで活かせている感覚はすごくあります。
平野:
補足すると、think beyondでのはるみんを見たから、INITIALにレンタル移籍しても大丈夫だろうなって思ったんですよね。think beyondでパフォーマンスを出してくれたから、INITIALのコンテンツデザインで、彼女が戦力になると確信し、アサインしました。
僕にとっての挑戦は、ベタだけど「自分の可能性を高める機会」。もっと詩的なことを言おうかと思ったけど、後で文章を見たら恥ずかしくなりそうだったのでこんな感じで(笑)。
ちなみにDesign Div.では2期のthink beyond、参加必須にしたいですね。スキルが伸びることが分かったし、絶対にやったほうがいい。少なくともタイトルの高いデザイナーは絶対参加してほしい。自分が挑戦したからこそ、確信をもって言えます。「think beyondに挑戦することで、一段レベルが上がるから」と。
宇尾野:
挑戦は楽しい。それに尽きると思います。think beyondの期間中はめちゃくちゃ不安で、きつかった。いろいろな追われる瞬間があったし、審査準備は苦しかったけど、やっている最中は楽しい気持ちが大きかったんですよ。
平野さんも話していたんだけど「楽しいからこそ、人生が拓ける」機会だと思う。人生を拓きたい人は全員挑戦しよう! みたいな感じ。そこは断言できます。ジーンクエスト代表の高橋さんが著書で語っていましたが、想定外のことが人生を豊かにするし、想定外の中で行動すると情熱が湧く。情熱の起点は、小さな一歩なんだと。
今回、あえてNewsPicksの人をチームに入れなかったんですよ。お互いのことをある程度知っていると、想定外のことが起きづらくなる。だから普段とは違うチームでやってみたんだけど、これは僕にとってすごく良かったなと思っています。
まずは行動することが何より大事。今回は僕と西野さんが最初に行動して、結果的にこの5人が集まったんだけど、情熱って連鎖するんですよ。着火し、火が伝わっていく感じ。その連鎖の起点になって人生を拓きたい人、まずはエントリーしよう!