組織変革ストラテジスト・鳥海裕乃の1日
答えはクライアント企業の中にあると信じる
私は、組織変革ストラテジストの仕事は「お客様の中に眠っている答えを発掘し、可視化すること」だと考えています。お客様から私たちにいただくご相談は、
- 既存事業に埋没せず、新たな価値やイノベーションをどのように生み出していくか
- 保守的な組織文化や縦割りの慣習から脱却したい
- 受け身型な従業員のマインドを自律型に変えたい
といったものが多いんですが、こうした課題に対して、私たちが考える処方箋を一方的に与えるだけでは本質的な解決にはなり得ません。
組織文化や人のマインド、行動を変えるためには、当事者である従業員にとって心から腹落ちでき、共感できる解決策であることが何よりも重要です。そのために私たちはお客様との対話を通して、組織として本来的に持っているポテンシャルを引き出すことから始めます。お客様の持つアセットを多面的に理解することがその第一歩です。
その企業の創業の理念や沿革に始まり、コアコンピタンスやコアバリューといった提供価値を生み出す源泉となるもの、あるいはカルチャーや行動規範、さらにそこで働く1人ひとりの内なる想いに至るまで、その会社の内部資産を深く読み解き、ストーリーテリングとして磨いていくことで、その組織だからこそできる解決の方向性が見えてきます。
私たちが解決するのではなく、お客様自身が想いを持って「あるべき姿」に力強く向かっていける道をともに見つけていくことを目指しています。
こうした支援をするためには、まず私たちがお客様の組織、またそこで働く1人ひとりが持つ「変革を成し遂げるポテンシャル」を信じることが重要です。私たちのお客様はおしなべて大企業で、どのお客様も素晴らしいアセットをお持ちなのですが、意外と自分たちのことは自分が一番よくわからないもので、そこに確信や自信を持てていないケースも多くあります。
私たちが介在することで、「自分たちの会社にはこんな強み、こんな未来への可能性がある」ということを再発掘し、出会い直していただく。それはとてもクリエイティブでオリジナリティのある仕事だと思っています。
人と組織がともに成長する関係をデザイン「インターナルブランディング」
私がAlphaDriveにジョインしたのは2020年6月。以前の職場で一緒に働いていた友人からの紹介がきっかけでした。組織の変革をよりイノベーティブに、より未来志向的なベクトルに向けて支援するというミッションに共感を持ちました。
もともとは大学を卒業してからずっと広告畑におり、代理店や制作会社などでプランナーやクリエイティブディレクターとして、お客様の課題分析、解決策としてのコミュニケーション戦略の提案、クリエイティブ制作に至るまで幅広く携わっていました。
前職からインターナルブランディングという領域に大きく携わるようになりました。企業の存在意義や提供価値を言語化し、従業員に浸透させるコミュニケーションのことで、具体的にはクライアント企業のミッション・ビジョン・バリュー策定やその浸透のためのコミュニケーション設計、クリエイティブ支援などを手がけていました。
一般的に「ブランディング」というと主に投資家や取引先、カスタマーといった社外のステークホルダーがメインターゲットになりますが、インターナルという文脈においては、社内で働く1人ひとりが自社のビジョンや存在価値をどのように理解し、どのようなエンゲージメントやモチベーションを築き得るのかをデザインすることが求められます。
カリスマ創業者がいる一部の例などを除けば、従来的に日本企業は、経営理念はあっても形骸化して浸透していないケース、未来に向けたビジョンやエンゲージメントを生み出すパーパスとして明文化できていないケースが多くありました。
不確実性の時代を迎え、自分たちの会社がどこから来てどこに向かうのかが見えにくくなっています。ゆえにイノベーションが起こりづらい内部環境となっていることが、課題として大きく持ち上がるようになったのが近年のことです。
そうした組織課題に対し、その会社が大事にしてきたカルチャーや価値観、コアコンピタンスやコアバリューなど、形として見えづらいものに光を当て、「変えていくべきもの、変えてはいけないもの」を明確にする。そうすることで、組織とそこで働く人々が同じ方向を向いてともに成長しあえる関係を築くこと、それがインターナルブランディングです。
組織と個の関係、あるいは組織の中の個と個の関係のあり方を考え、そのつながりをデザインしていくというスタンスは、今の仕事にも共通しています。
前職の仕事も大きくやりがいがあったんですが、人と組織があるべき未来に向かい、新たな価値を創造するための支援をブランディング領域に留まらず手がけたいと考えるようになりました。
その中で、AlphaDrive/NewsPicksが「ビジネスパーソンと企業に、きっかけと創造力を」をミッションとし、企業変革のソリューションを多面的に提供するコンサルティング・カンパニーであると知り、私自身の目指したい方向性と一致すると感じて入社を決めました。ユーザベースグループの「The 7 Values」に非常に共感できたことも、入社を決めた理由の1つです。
SaaSプロダクトを通じて「組織開発」と「人材開発」を手がける
これまで携わってきた広告やインターナルブランディングでは、ほぼコンサルティングに近い業務を行っていました。お客様の課題をヒアリングし、経営層から現場まであらゆるレイヤーの関係者にデプスインタビューやアンケートを行って、複雑な与件を整理し、分析結果に基づき解決策とコミュニケーション戦略をゼロベースからデザインする。
それに対して現職では、課題設定までの考え方は同じですが、解決策の1つとして「NewsPicks Enterprise」や「法人向けMOOC」といったSaaSプロダクトを生かし、人と組織に学びと対話のプラットフォームを構築する。こういった新たなアプローチを用いることで、自身の視野も広がりました。
また「NewsPicks Enterprise」や「法人向けMOOC」は事業としてもプロダクトとしても成長過程であり、そのスケーラビリティに当事者意識を持って関われることに大きなやりがいを感じています。お客様の「As-Is(今の姿)」「To-Be(あるべき姿)」を分析しながら、理想的なソリューションを他のメンバーとともに議論しブラッシュアップしている最中です。
現在は、「組織開発」と「人材開発」の2つの軸を並び立たせたソリューションを考えています。お客様が持つ組織課題に向き合うためには、視点が「組織側」に寄りすぎても、「人側」に傾きすぎても筋の良い解決策にはなり得ません。
トップダウンとボトムアップの両者を行き来しながら、お客様の持つアセットや組織文化に応じた解決ストーリーをデザインし、人と組織がともに未来志向で創造的にポテンシャルを発揮できる道を描けるような支援を目指しています。
お客様にNewsPicks EnterpriseやMOOCを導入いただく際、私はよく「これらは単なるインプットのツールではなく、学びと対話の場、例えるなら『乗り物』のようなものです」とお伝えしています。私たちのプロダクトは、導入さえすれば自動的に解決に向かうものではなく、そこで働く人たちがオープンに対話し、みんなで解決策を自分ごと化していくための器でしかありません。
その「乗り物」がどんな空間となり、どんな目的地に向かっていくのか、それによって何を生み出すのか、その場を使う人たちとともに考えながら、彼ら自身でその答えを言語化していただくプロセスが重要です。
そのため、お客様によってこのプロダクトの生かし方は全く異なります。どんな課題を解決するか、どんなあるべき姿に導くか、どんな学びのテーマをもたらすか、どんな対話を生み出すか、どんなコンテンツを投げかけるか、どんな人たちが集まるかによって、同じプロダクトでも、そこから立ち上るナラティヴは明確な個別性を持っています。
そこに各企業の「らしさ」が宿っていて、私たちのプロダクトやソリューションはそれをよりビビットに可視化させ、あるべき未来に向けてドライブさせるためにある。これが私たちのミッションだと考えています。
組織変革の土壌となる「共通言語」「つながり」を生み出す
組織が変革するとき、あるいは新たな事業や提供価値を生み出すとき、そこにはいつも、組織の未来を信じ、そこに貢献したいというミッションを持った「人」が存在します。ですが、たとえ経営トップであろうと、たった1人では組織を変えることはできません。
その想いに共感する仲間が出てくることでチームとしての力が生まれ、想いをもとに共通言語が育ち、対話を通して新たなつながりが創出されることで変革力の土壌が耕される。そこに到るための共通言語や関係性をどのように構築できるかが、我々のソリューションの本質だと考えています。
手段としてはNewsPicks EnterpriseやMOOCといったプロダクトに限定せず、この取り組みをプロジェクト化するためのオンボーディング支援や、プロジェクトに参画するメンバーを募るためのビジョンやコンセプトの設計、ワークショップやセミナー、コンテンツの企画制作など、さまざまな手法を駆使してその実現をサポートしています。
これには前職までのブランディングコンサルタント、クリエイティブディレクターとしての経験が大きく役立っています。
入社して先輩や同僚から「アウトプット力、言語化力がすごく高いね」と何度か言っていただいたことがあるんですが、これも広告の仕事を通して培われたものかもしれません。「伝えたいことが伝えたい人に伝わるよう、考えて工夫し続ける」というナラティヴな設計の考え方は、組織開発や人材開発においても役立つものだと感じられました。
また、これまでお客様からいただいたお言葉で特に嬉しかったのが、
といったものです。
どんな壮大なビジネスであろうと、最初は誰か1人の小さなWillから始まります。面白そう・楽しそうだからやってみたい、という衝動を持って、少しでも何か新しいこと、「両利きの経営」で言えば「知の探索」領域に興味を持ってもらえること、またそれがきっかけで、誰かと誰かの間に対話という橋が架けられること。そこに私たちの提供価値があると思っています。
不確実性の時代の中、あらゆる企業にとって変革できるかどうかが生き残りの分水嶺と言われている一方で、変化=リスクと見なされたり、人間心理としてそもそも変化は厭われるもの、といったジレンマがあります。であるからこそ、変化する道を選ぶのはダイナミックでクリエイティブな面白さがあって、どんな選択であっても正解にできる力がお客様自身の中にあるということを伝えていけたらいいなと思っています。
現状を否定するのでも完全に棄却するのでもなく、何を変えたくないか、何を変えていきたいのかの両方を考えながら、未来に向けて選びたい選択肢を選べる自由がどんな組織にも、そこで働く人たちにもあるはずです。
それは経営者でも入社1年目でも、自分たちのあるべき未来という同じ方向を向くことができてさえいれば、誰にも等しく与えられたクリエイティビティであるし、その楽しさを私たちのプロダクトやソリューションに関わってくださる全ての人に感じてもらえたらと思います。
私自身がクリエイティブの仕事を長年続けてきた上で思っているのは、クリエイティブというのはごく一部のクリエイターのみに与えられた力ではなく、あらゆる人間が本来的に創造的な力を持つ存在であるし、私たちのプロダクトはそれをどこよりも力強く実証するための空間でありたいということです。それこそがイノベーションにつながる道のりであり、私はその道を耕す存在でありたいと思っています。
変化をポジティブに楽しめる人と働きたい
クライアント企業の変革を支援する人間として、まず私たち自身が変わることを楽しんでいなければ、ソリューションに魂が宿らないと考えています。
人はともすると、過去の経験則や成功体験に引っ張られ、新たな可能性につながる変化を見落としてしまいかねない心理的罠があります。だからこそ、どんな変化もポジティブに受け止め、お客様とともに変わることにワクワクできる人と一緒に働けたら嬉しいですね。その想いさえあれば、スキルは後から自ずとついてくると思います。
私たちの仕事は決まった答えがあるわけではなく、お客様とともに答えを探していく姿勢が大切です。時にお客様の隣に寄り添い、時に半歩先に立ち、時に後方から支える形で、まだ誰も見つけていない答えを探索する旅を、一緒に楽しめたらと思います。