メンバーにエンジニアリングに興味を持ってもらうために始めた「家族で参加できるプログラミング教室」
西和田 亜由美(以下「西和田」):
ユーザベースでは、ESGの観点から自社が取り組むべき7つのマテリアリティ(重要課題)を策定しており、その中で「テクノロジードリブンな新しい企業モデルをつくる」ということを掲げています。
エンジニアリングを起点にするテクノロジーカンパニーであり続けるためには、まず、ビジネスとエンジニアリングの境界線をなくす必要があります。エンジニアに限らず多様な職種のメンバーたちがエンジニアリングを楽しめるようにしたい、そんな想いから始まったのがPlay Engineeringプロジェクトです。
プロジェクトは、2022年の4月にスタートし、さまざまな取り組みを段階的に行っています。第1弾は、保有するエンジニアリングスキルのレベルによって、給与にプラスして手当が支給される「プラスエンジニアリング手当制度」の開始です。こちらは、エンジニアだけでなく全メンバーが対象になります。また、プラスエンジニアリング手当の対象となるメンバーを増やすため、メンバーが楽しみながらエンジニアリングを学べる研修プログラムを企画・実施しており、今回の「家族で参加できるプログラミング教室」もその一環です。
第2弾は、「あらゆるデータを“活きた経済情報”として利用可能にする」ことをミッションとした、技術研究所「UB Reseach」の設立です。こちらは7月に設立を発表したばかりなので、これから研究を本格的にスタートしていくフェーズになります。プロジェクトとしては、この後も第3弾、第4弾、と継続していく予定です。
西和田:
エンジニアリングに対する壁をなくすことが、一番の狙いです。プロジェクトでは、エンジニアではないメンバーがSQLやアプリケーション開発を学べる研修なども準備しているんですが、そのもっと前のフェーズとして、まずはエンジニアリングに「興味」を持ってもらいたいと考えました。子どもを連れてオフィスに来れるようなイベントであれば、これまでエンジニアリングにあまり興味のなかったメンバーも参加しやすいということから企画しました。
西和田:
1回目の開催で、参加したメンバーから「楽しかった」「子どもが家でもプログラミングをするようになった」といったコメントがあり、手応えを感じることができました。子どもだけでなく、親子で参加してもらうことで、親子のコミュニケーションが生まれ、親と子両方の好奇心を高めることができたんじゃないかなと思います。
2回目である今回は、さらにアップデートして開催したいと考え、コンセプトをより明確にしました。
まず、プロダクト開発をしているエンジニアのメンバーが直接教えること。前回は現場にいるエンジニアは講師のみでしたが、今回は講師以外にも子どもたちをサポートするエンジニアが数人参加しています。また、プログラミングだけでなく、今、世の中で起きていることを知るビジネスニュースにも触れるコンテンツを入れることで、よりユーザベースらしい教室を目指しました。
西和田:
ちょうど8月に、子ども向けのタブロイド新聞「NewsPicks for Kids」がスタートしたところだったので、その中からの出題と、プログラミングに関するクイズも追加しました。興味を持ってもらえるか心配でしたが、子どもたちが積極的に参加してくれましたし、ITとビジネスの両方の観点から子どもの好奇心を育む場にするということには、今後もチャレンジしていきたいです。
また、イベントの様子をTwitterで呟いたところ、社外の方からも参加してみたいというお声をいただいたので、今後は社外の方もご参加頂けるようにこの教室を開催できたらなと考えています。
プログラミングの基本をしっかり伝えることを意識
小副川 健(以下「小副川」):
もともと社外活動として子ども向けのプログラミング講師を何度かやったことがあり、社会的にも有意義だと感じていたので、そういったことで協力できるタイミングがあればしていこうという気持ちがありました。それに加えて、今回の親子プログラミング教室には、親側であるメンバーにもプログラミングに親しんでもらいたいという狙いがあり、いいシナリオだと思いました。
北内 啓(以下「北内」):
子どもが通っていた小学校のPTA活動で、30人ほどの子どもたちにプログラミングを教えていた時期が5〜6年あるんですが、そうすると10人に1人、積極的に自分でプログラムを書くような子が出てくるんですね。そのときに、子どもが早くから自分の興味に気づけるのはいいことだなと感じたので、今回こういう企画があると聞いてぜひ協力したいと手を上げました。
僕自身も小学生の時にプログラミングを始めていて、そのきっかけとなったのは、友だちのお父さんがプログラムを見せてくれたことでした。家にパソコンがあることも少なかった時代でしたが、ある日友だちの家に遊びに行ったら、お父さんがパソコンでプログラムをつくってくれたんです。「キャラクターがピカピカ光る」というような簡単なプログラムでしたが、それを見たときにすごくワクワクして、そこからひとりでプログラミングを勉強するようになりました。
その経験ができたことは、自分にとってすごくラッキーなことだったと思います。だから、そういう機会を人に与えることには協力したいんです。
小副川:
楽しかったという感想が多くてほっとしました。1回目の後、「子どもが『家でもプログラミングをしたいからパソコンを買って!』と言うようになった」と教えてくれたメンバーもいて、それが嬉しかったです。やっぱり次もやりたいと思ってもらえることに、一番やりがいを感じますね。
北内:
今までやっていた教室に比べて、理解度が早い子が多かったように感じました。やはり、親も一緒に参加しているというのは大きいんじゃないかと思います。
面白いのは、子どもによって、プログラムをどうカスタマイズするかの方向性が違うことです。そういった自分の興味や個性をどんどん深掘りしていってほしいし、そのきっかけになれたら嬉しいなと思います。
小副川:
子どもも参加するからといって”子供だまし”にせず、本物を提供することは意識しています。プログラミングの基本の3つ (順次、反復、分岐) を、まず体験してもらって、最後に「まとめ」として必ず伝えることを心がけています。その基本を、親子で楽しみながら体験できる最小の手順に落とし込んで、それを練習してもらうようにしています。
プログラミングの基本の3つは、普遍的なものなので、これをきっかけに親であるメンバーにも覚えてほしいと思っています。
小副川 :
やはり、繰り返しやる作業を自動化して一瞬で終わらせることができるというのが、インパクトが大きいのではないでしょうか。もちろん手作業でやることにも意味がありますが、何度もやっていてほとんど例外のない作業であれば、それを自動化して空いた時間を他のことに使うこともできますから。
また、プログラミングの発想を持つことで、自動化しやすい作業手順を考えられるようにもなると思っていて、そういう作業は、引き継ぎしやすかったりミスをしにくかったり複数人で対応しやすかったりと、自動化しないまでもメリットを生みやすいと思います。
北内:
今の時代は、前提としてITを使うことが増えてきていますよね。そうするとITを使いこなすのが大事になってきます。プログラミングによって楽になる作業も多いですし、実はプログラミング自体の手段も増えてきています。例えば、GoogleのApps Scriptを使えば、スプレッドシートの繰り返しの作業を自動化するとか、そういうことは簡単にできます。
せっかくハードルが下がってきているので、プログラミングをうまく活用して、自分の仕事を楽にするということを体験して欲しいです。
短いスパンでクリアすることができる内容で、親子共に達成感
当日参加したSaaS事業マーケティング担当の永野にも話を聞いてみました。
永野友美(以下「永野」):
もともと子どもが会社に行ってみたいと言っていたのと、イベントのシーズンになってきたので子どもと一緒に参加できるイベントを探していたところ、たまたま社内の告知で見つけたからです。娘も今日を楽しみにしてくれていたみたいです。
娘は小学1年生なんですが、プログラミング教室に通っている友だちがいたり、近所にもスクールがあったりするので、プログラミングは身近になってきていると感じます。娘も、以前に別の講座を受けたこともあります。
永野:
以前受けたものは、数ある学習授業の一環だったので、机に座ってみっちりやるというスタイルのものでした。今日は親と一緒だったり、雰囲気も自由な感じだったので、もっと楽しそうでしたね。いつもお仕事でプログラミングをしているお兄さんが横で教えてくれたりするのも、本格的でよかったみたいです。
教材も、短いスパンでクリアすることができる内容で、ゲーム感覚で進められるのもよかったと思います。問題をひとつクリアするごとに「今、〇〇行のコードを書きました」と表示されるんですが、親としても達成感があって楽しかったですね。
初めてプログラミングに興味が湧いてきたみたいで、「帰ってからもまたやりたい」と言ってくれました。
「自分の業務に活かしてもらう」がPlay Engineering プロジェクトの次のチャレンジ
西和田:
「エンジニアリングに興味を持ってもらう」の次の段階である「SQL等を使って、自分の業務に活かしてもらう」や「アプリケーション開発について学ぶ」がこれからのチャレンジになるかなと思います。そのために今後検討しているプロジェクトとして、プログラミングスクールと連携し、スクールのカリキュラムをメンバーに提供するという施策も考えています。
講座のレベルとしてはプロのエンジニアを目指すカリキュラムですが、エンジニア志望でないメンバーも対象とする予定です。どのような職種であっても、そういったカリキュラムを受講することで、より深い部分でエンジニアリングを理解することができるようになると考えているからです。
最終的には、現在全社で5%いるプラスエンジニアリング手当の対象者を、10%にすることを目標にしています。そうすると、各チームにひとりはエンジニアがいる状態になる、それが理想ですね。なかなか難易度は高いですが(笑)。
西和田:
エンジニアリングに興味がある人というのは増えていると思うんですが、日々実務で忙しい中で新しいことを続けていくのは易しいことではないですよね。その為「どうしたら学びを継続できるか」をサポートする仕組みを構築するのも、プロジェクトチームの役割だと思っています。現在検討しているプログラミングスクールとの提携についても、単にプログラミングカリキュラムを提供しますよというだけではなく、参加者限定のコミュニティを開設したり、社内エンジニアも受講者の学びをサポートする体制を設けることで、孤独な学びにならないよう、仕組みづくりに取り組んでいきたいです。