なぜエンジニアではない職種のメンバーも、データ分析のスキルが求められているのか?
たとえばNewsPicksでは、どんなユーザーがどの記事を読んだか、どんな操作をしたかなど、さまざまな行動データが記録されています。そのデータはデータベースに格納されていて、ビジネスの改善点を探ったり、新たなサービスを生み出したりするための情報源となります。
そんなデータをデータベースから抽出するために使われる言語がSQLです。一般的には分析方法を考える担当者(エンジニアではない職種のメンバー)は、SQLを使えるエンジニアにデータの抽出を依頼し、さらにエンジニアがデータベース管理者に依頼して、データを抽出することになります。
もし担当者がSQLを扱うことができて、データベースから抽出できる権限もあれば、気になるデータを瞬時に抽出できます。また、SQLやデータベースに関する知識があるだけでもエンジニアとのコミュニケーションを円滑にすることができます。生産性が向上できるというわけです。
ユーザベースが取り組む、「Play Engineering」プロジェクトとは?
ユーザベースでは、2008年の創業当時から、人とテクノロジーの力を掛け合わせ、経済情報インフラを創造してきました。
ユーザベースが策定する7つのマテリアリティ(重要課題)のひとつに、「テクノロジードリブンな新しい企業モデルをつくる」を掲げています。テクノロジーカンパニーとして、ビジネスパーソンを労働集約的な作業から解放し、創造性が高い働き方に変えていくことは、私たち自身が体現し続けたいことのひとつです。
そのような想いから、ユーザベースは「誰もがエンジニアリングを楽しめる世界」を目指す「Play Engineering」プロジェクトを2022年4月に開始しました。
エンジニアはもちろん、エンジニアではない多様な職種のメンバーたちが、これまで以上にエンジニアリング力を活用し、それぞれが挑戦したいことに楽しく取り組める環境をつくることを目指しています。
なぜならエンジニアリングには、みんなが「やりたいことへ挑戦できる」余白を生み出す力があるからです。
つまりエンジニアリングをさらに活かせば、働くことがもっと楽しくなるはず。「Play Engineering」はそのための支援制度・仕組みづくりを行おうというものです。
練習問題は社内のデータを活用。実務にすぐ応用可能なSQL講座
Play Engineeringプロジェクトの一環として、2022年7月から9月にかけてSQL講座が開催されました。
SQL講座では、必須の構文である「SELECT A FROM B」構文から、レコードをグループ化する「group by」、四則演算をさせる演算子、文字列検索を可能にする「where like」や「where in」、条件分岐させる「case when」など、リアルな現場では必ずと言っていいほど使用される「with句」など、実務にすぐに生かせる関数を学習します。
講座はオンラインのハンズオン形式。参加者は講座の時間で練習問題にチャレンジ。NewsPicksが持つ実際のデータを利用した、すぐにでも業務で応用できそうな問題ばかりが用意されました。
参加者が練習問題に取り組む中で、エラーが発生するなど疑問点や質問があるときはすぐに講師に尋ねることができます。質問者の画面を共有しながらエラーを解消、解説することで、他の受講者も理解を深めることができました。
講義資料の一部抜粋
講義資料の一部抜粋
講師は新卒1年目。SQLを学ぶことを通じ、エンジニアメンバーとのコミュニケーション促進へ。
講師を務めたのは平野佑樹。2021年3月に大学3年次にインターン入社し、2022年4月にNewsPicksに新卒入社したばかりです。
現在はNewsPicksの学生向けプロジェクトでマーケティングを担当しています。つまり平野は文系でビジネスサイドのメンバーとして入社。SQLの学習はインターンとして入社するタイミングで、独学で始めたといいます。
平野がSQL講座を開催するのは、実は3度目。最初は同じチームの2名のために開催しました。きっかけは、SQLに苦心しているメンバーに「教えましょうか?」と声をかけたことでした。「渦中の友を助ける」というユーザベースが掲げるThe 7 Valuesのひとつを実行したわけです。
その後、対象をNewsPicks全体に広げて2回目を開催。平野が社内のSlack上で、SQLに関連するコメントが多いことに気づいたためでした。SQLを知りたい・学びたいと考えている人がユーザベース内に多かったのです。
平野がSQL講座を開催したのは、他にも理由があったといいます。
NewsPicksメンバー向けの2回目の講座が開催されることになった頃、役員を交えた懇親会が行われ、平野も出席。その会にはCo-CEO/CTOの稲垣裕介も参加し、何気ない会話から平野がNewsPicks内でSQL講座を開催することが稲垣の耳に入りました。
稲垣はその場で「全社向けにも開催してほしい」と平野にリクエスト。「Play Engineering」プロジェクトが発表される以前のことでした。
そして全社向けに3回目のSQL講座を開催することになりました。過去2回の講座からさらにブラッシュアップ。特に改善を図ったのは、講座をインタラクティブな内容に進化させることでした。
講義の参加者からは、開催中も終了後もSlack上で平野宛にコメントや質問・相談が届いているそうです。
一方で、全7回に渡る講座では脱落する人も発生。
と平野は次回以降の開催にも意欲的です。
7回の講義からしばらくして、すでに実務でSQLを活用している参加者が、講座内容をどのように活用しているかを発表するアウトプット共有会が開かれました。また受講した成果として、「データベースの構造が理解できて、エンジニアとのコミュニケーションがより円滑になった」「調査したいデータがある時に、誰かに依頼する必要なく見られる」など、すでに業務改善につながっていると感じた参加者もいたようです。
SQL講座を受講して、どのようなスキルが身についた?
今回のSQL講座を受講し、実際の業務においてもSQLを活用するようになったMIMIRの芦田萌に話を聞きました。
受講前にはそういった悩みもあった芦田ですが、講座を経てストレスフリーかつ迅速に気になったデータに触れられるようになったそうです。また、データベースを理解しておくことによって、エンジニアメンバーとのコミュニケーションの質も向上したと実感したとのこと。
このように、受講者にとってエンジニアリングスキルを身につけることにより、エンジニアとのコミュニケーション促進だけでなく、自分自身の業務範囲の幅を広げることにもつながっているようです。
SQLを実務で活用する中での課題は?
芦田によると、今回の講座受講によって基本的なデータ抽出はすぐにできるようになったものの、実際のデータを元に理想のアウトプットイメージに辿り着くには、より高いSQLスキルが必要だと感じているそうです。彼女自身、より高度なスキルを身につけるための努力も怠りません。
実際に担当しているサービスにおいて、経験を積むのが一番の近道だと芦田は語ります。
今後のPlay Engineering プロジェクト
SQLスキルだけにとどまらず、Play Engineering プロジェクトでは、エンジニアリングを学習していくメンバーの挑戦をサポートしていくために、DMM WEBCAMP(株式会社インフラトップ)とパートナー提携を結ぶことを決定しました。
本カリキュラムを通じて、ユーザベースのエンジニアを含めたメンバー同士のコミュニティを形成し、ユーザベースのエンジニアも学習サポート要員として加わります。今後もユーザベースでは、全社におけるエンジニアリング力のさらなる底上げを目指します。