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本音でぶつかり合えるチームで、クリエイティブな映像コンテンツをさらなる高みへ──NewsPicks Stage. Film Teamリーダー 狩野比呂

本音でぶつかり合えるチームで、クリエイティブな映像コンテンツをさらなる高みへ──NewsPicks Stage. Film Teamリーダー 狩野比呂

映画・広告業界から、40代でユーザベースに飛び込んだNewsPicks Stage. Film Teamリーダーの狩野比呂。映像制作のスペシャリストとしてチームを引っ張るだけでなく、レベニュー(収入)を考えながらB2B企業の経営層に刺さるコンテンツの企画にも取り組んでいます。どんなときも現状に甘んじない狩野が、NewsPicks Stage.での映像制作を通して実現したい景色とは。これまでの経験で得られた映像制作時のこだわりやチームメンバーとの関わり方、リーダーとしての想いを聞きました。

狩野 比呂

狩野 比呂HIRO KANONewsPicks Stage. Film Teamリーダー

1980年生まれ。2004 年よりロンドンに渡り、映像制作活動を開始。帰国後、さまざまな広告・映画・ドラマ・MVに、演...

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目次

動画配信プラットフォームづくりに内側から携わりたい

キャリアの変遷図:狩野 比呂
はじめに、これまでのキャリアを教えてください。

映像制作の活動をスタートさせたのは、25歳のときです。

大学時代はクラブDJを中心とした音楽活動をしていて、主催した音楽イベントで記録用の映像を撮影することがあって。卒業後は当時のマネージャーに勧められ、ロンドンでDJとして勝負することになったんですが、日本人のかける曲では誰も踊ってくれない日々を過ごし、音楽では大きな挫折を経験しました。今でもあまり思い出したくないですね……。

ちょうどその頃に出会った映像学校出身の友人たちに、日本でカメラを回していたことを話したら、「一緒に撮ろう」と誘われ、映画制作にスタッフとして携わるようになりました。

26歳で帰国したあとは友人の紹介で映画業界に入り、演出部の助手としていろいろな経験を積みました。同時に、クオリティの高い映像作品が多い広告業界で学ぶために、CM制作会社に入社したんです。そして、プロダクションマネージャーやプロデューサー、ディレクター、CMプランナーの経験を積みました。

入社から約1年半後、監督や助監督、プロデューサーとしてオファーを受けるようになり、フリーランスとして独立することに。その直後、石井克人さん(CM・映画監督)が手掛ける作品の助監督をしたことがきっかけで声をかけてもらうようになり、石井さんが主催する株式会社ナイスレインボーに入社しました。そして37歳のとき、長編映画『その消失、』で映画監督としてデビューしています。

その後、なぜユーザベースに入社しようと思ったんですか?

ユーザベースなら僕のパーパスを実現でき、さらなる成長を期待できると感じたからです。

商品・サービスを知ってもらう広告手法として、以前はテレビCMが主流でした。でも、2007年頃からYouTubeが普及し始めたことでwebCMへの移行が始まり、そこからさらに「今後は動画配信プラットフォームが主流になり、そのなかで映像クリエイターたちが表現する時代がやってくる」と感じたんです。

そこで約10年前、有志で集まったクリエイティブ力の高い人たちと「新しい動画配信プラットフォームをつくろう」という話になって。でも、そのためには膨大な資金が必要で、レベニューを拡大できるモデルがないと難しい現実を知りました。

また、コンテンツ制作に携わった後、アウトプットした先でインタラクティブな関わり方ができないことにも、ずっとモヤモヤしていたんですよ。インタラクティブなオンラインコミュニティ形成の場となる動画配信プラットフォームづくりに、内側から携わりたかったんです。

そんな頃にユーザベースと出会い、「経済情報の力で、誰もがビジネスを楽しめる世界をつくる」というパーパスに興味を持ちました。当時、金融や経済をテーマとした映画に触れるうちに、経済情報に面白さを感じるようになり、「ワクワクする経済関連のコンテンツをつくれたら面白いんじゃないかな」と感じていて。

スタートしたばかりのNewsPicks Stage.というプラットフォームなら、立ち上げ段階から携わることもできる。ここで創作者としての表現力を高めていきたいと考え、2022年6月に入社しました。

NewsPicks Stage. 狩野比呂

創作とレベニュー、双方を満たすコンテンツづくりの難しさ

現在の仕事内容を教えてください。

NewsPicks Stage. FilmTeamで、新しいプラットフォームの基盤づくりや映像制作チームの組織体制・制作フォーマットの構築、映像コンテンツの演出・企画を担当しています。

僕が入社したとき、立ち上がったばかりのNewsPicks Stage.はまだまだ手探り状態でした。映像制作の流れが簡素化されているだけでなく、事業モデルも完全には確立していない状態で、「このままでは視聴者を魅了する質の高いコンテンツをつくれないし、作り手たちもプライドを持てない。将来的にも組織として拡張していけない」と感じました。まず、今後の制作組織の体制を見直す必要があったんです。

そこで、このプラットフォームが成立している前提をキャッチアップして、現状の制作体制で見直すべき課題を洗い出し、1つずつ改善していきました。いまは創作とレベニューの両視点から、再現性があって独自性も実現できる制作フォーマットを構築している段階ですね。それで制作体制が安定してきたら、今後は制作本数やコンテンツのバリエーションを増やしていく予定です。

また最近、複数のセッションで構成される「オンラインカンファレンス」も新しく導入し、それぞれのセッションで共創してくださるパートナー企業の方々を募集しています。

狩野比呂
長年クリエイティブ領域で活躍してきて、これまであまり馴染みのなかった売上を上げる施策を考えることには、すんなりと馴染むことができたんですか?

いえ、それは今でも大変ですね。現在のNewsPicks Stage.には、前職まで頼ることができたアカウントプランナーがいません。なので今は、その役割をJJさん(酒居 潤平/執行役員 SaaS事業CMO 兼 NewsPicks Stage.事業責任者)や他チームのメンバーが担ってくれています。

JJさんとは、創作とレベニューのバランスの取り方で何度もぶつかりました。そのなかで、僕は過去のアカウントプランナーとのやり取りを思い出しながら、クリエイティブを保ちつつ売上を上げるためのアイデアを必死に出しています。今後は、新たに入社するアカウントエグゼクティブと共に話し合いながら進めていくことになると思います。

また、主なターゲットであるB2B企業の経営層に刺さるような企画や演出プランを出すのも大変ですね。これまではマス向けの広告企画を考えてきたので、B2Bに特化して、かつ経済情報のなかでも特に専門性の高い分野の企画演出をするには、たくさん勉強しなければいけません。専門書を読み込んだり、知見のあるJJさんや他のメンバーに相談したりしながら進めています。JJさんが出したアイデアに対して、アウトプットが面白くなりそうな企画や演出プランを提案することが多いですね。

ただ、今後はその状態を変えていかなきゃいけなくて。本来、取材して企画を出すのはディレクターが担う部分です。チーム内のディレクターが経験を積めるように、勉強できる環境を用意する必要があります。

チーム体制を構築する上で、前職の経験がプラスになっていることを教えてください。

専門性の高い技術者が集まる映画やCMの制作現場を数多く経験してきたので、クオリティが最も高い映像制作の方法を知っていることです。

大人数が関わる映画制作やCM制作などとは違い、NewsPicks Stage.ではメンバーの数も制作条件も限られている。まず理想の映像アウトプットのアイデアを考えた後に、今の体制や条件で現実的にできることを考える必要があるんです。とはいえ、チームとしてはより高みを目指したいわけで、メンバーと共に試行錯誤しながら「よりクオリティを上げるためにはどうすればいいのか」をプランニングしている段階ですね。

前職の経験は、メンバーの育成にも役立つと思っています。僕がディレクターとしてクオリティの高い映像コンテンツを継続的につくっていけば、それを他のメンバーが見て吸収することで、チームはどんどん大きくなっていけるはずです。

本音を隠さず、感情のままに伝え合う

これまでの仕事で忘れられないエピソードを聞かせてください。

JJさんと本音で向き合ってきたことですね。僕とJJさんとで約束していることがあります。それは本音を隠さず、感情のままに伝え合うこと。僕らはNewsPicks Stage.という新しいプラットフォームを「0→1」でつくっていくパートナーで、深い信頼関係を築くためには嘘をつかないことが必要なので。

その約束は入社直後に決まりました。僕はJJさんの「映画のように視聴者を感動させるような視聴体験を、1つひとつ丁寧につくっていきたい」という言葉に感銘を受けて、ユーザベースへの入社を決めました。「それを実現できないのであれば、僕は制作しない」とも話していて。

でも、入社して約1か月後に「聞いていた話と違うな」と感じることがあり、「この制作方法だったら面白いと思えるようなプラットフォームにはならないし、僕がいる意味はないからつくりたくない」と自分の気持ちを正直に伝えたんです。それからは、JJさんと「何か思うことがあれば、感情のままに伝えて、受け止め合おう」となりましたね。

狩野比呂
JJさんに対して「この人ならぶつかっても、ちゃんと受け止めてくれる」と思えるようになったのは、いつ頃ですか?

2〜3回、本音でぶつかったあとですね。入社時から、JJさんには「思ったことは伝えてください」と言われていました。とはいえ、本音を言って相手がどんな反応をするかわかりませんよね。

それでも本音でぶつかってみたら、JJさんがきちんと受け止めてくれて。JJさんが僕の意見を理解して、尊重してくれていることがわかった。だからこそ、「こんなふうに理解を示してくれるのであれば、僕もJJさんの意見を理解することに努めよう」という気持ちになったんです。お互いにリスペクトして信頼し合っているからこそ、本音で言い合える関係性が成り立っているのだと思います。

自分の意見をぶらさないことは、前職までのチームづくりでも大事にしてきたことなんですか?

そうですね。大人数が関わる制作現場では、全体を引っ張る僕の意見がぶれると、全体がぶれてしまうので。映画制作などの現場に比べて、NewsPicks Stage.ではひとつのコンテンツに携わる人数は多くありません。でも、少人数ですら意思が伝わっていなければ、良いコンテンツをつくり出せるわけがないじゃないですか。僕は全体を引っ張らなければいけない立場なので、自分の意見は基本的にぶらさず、JJさんの意見も受け止めるようにしながら進めています。

また、JJさんにしているように、制作メンバーに対しても、「こんな風に進めていきたいんだ」と自分の意思を感情と共に伝えるようにしてきました。ときには、感情的に伝えることもあります。ぶつかり合うこともありますが、相手に自分の考えがストレートに伝わりやすく、理解し合うことにつながるからです。

明確な差別化のためには、非効率でリスクのある創造性が必要

The 7 Valuesで一番好きなバリューは何ですか?

「創造性がなければ意味がない」ですね。

入社当初は「異能は才能」というバリューについてよく話していました。そのバリューを今のNewsPicks Stage.の環境で掲げようとすれば、僕が先頭に立って「創造性がなければ意味がない」と強く伝えていく必要があります。今、僕らがしようとしているのは、他企業との明確な差別化なので。

売上を上げようとすると、再現性があって、効率化できて、コストがかからずリスクの少ないプラットフォームやコンテンツの構築をする、という方法論に落ち着きがち。でも、それでは優位性を保てません。他社と差別化するには、非効率でリスクのあるような創造性が必要なんです。だからこそ「創造性がなければ意味がない」というバリューを訴えていかなければいけないと思っています。

もちろん売上を上げるためには効率化も必要で、創造性とうまくバランスを取る必要があります。それがめちゃくちゃ難しくて、高いレベルでバランスを取れるようにJJさんと試行錯誤していますね。でも、それは同時に面白くもあって。僕は当然、高いレベルを求めるわけで、「いや、待ってくださいよ!」って言うJJさんとぶつかり合うのがめちゃくちゃ楽しいんですよね。

また、「創造性がなければ意味がない」というバリューを心に持っていれば、ほかのバリューを実現する大きな助けになるはずです。たとえば、「迷ったら挑戦する道を選ぶ」というバリューができていない人は少なくありません。ダウンサイドリスクを考慮しすぎて、押し引きのラインが低いことが多いからです。そういう人は「創造性がなければ意味がない」を思い出すことで、挑戦する道を選びやすくなると思うんです。

創造性がなければ意味がない

新ブランディングプラットフォームを確立し、他企業には真似できない領域へ

今後、挑戦したいことを教えてください。

B2B領域における企業や個人の新ブランディングプラットフォームとして、NewsPicks Stage.を確立させていきたいですね。

僕らが掲げているのは、僕らの想いに共感・賛同いただいている共創パートナー企業の皆様に対して、NewsPicks Stage.というプラットフォームならば、「企業や個人が提供する商品・サービス・マーケットを大々的に訴求できる」という価値を提供し、かつ「継続的にブランディングしていくことができる」ということ。そのようなプラットフォームは今の段階では存在しないし、他の類似したプラットフォームとの大きな差別化につながるはず。

今後はCM広告やドキュメンタリーフィルムもつくるかもしれません。オフラインのコミュニティを形成し、イベント化もしていきます。さらにコミュニティ内でのつながりが生まれ、「まちづくり」につながっていく。

そうやって新たな「ブランディングプラットフォーム」という打ち出し方をしていきたいんです。これが成し遂げられたら辞めてもいいんじゃないかなって思うくらい(笑)。

狩野比呂

これを実現するための具体策は、大きく3つあります。

1つ目が、クオリティの高い映像コンテンツの創作です。Stage.にはぼくを含め、CMや映画業界出身者がいます。他とは異なる高いクオリティで映像をつくれる。これは差別化ポイントになります。

たとえば、普段学校の教室で勉強している人が森の中で何かを学ぶ機会があったとしたら、めちゃくちゃ五感を刺激されるし、きっと記憶に残りますよね。でもそういった体験をオンラインの環境でつくろうとしても、視聴者がコンテンツを「見ている環境」はこちらから変えるのは難しいじゃないですか。そこで僕らが映像のクオリティや配信環境を変えることで、その視聴体験を大幅にアップデートできるかもしれない。ウェビナーで受動的に聴くだけでない、新しい学びの体験を価値として打ち出していければと考えているんです。

2つ目は、ブランディングする対象をスター化させることです。僕らが「この番組に出たのはすごい!」と言われるようなコンテンツをつくっていくことで、そのコンテンツに登場した企業や個人、サービス・商品、市場マーケットをスター化できます。

3つ目は、オンライン・オフライン両軸でのコミュニティ形成ですね。NewsPicks Stage.では、僕らがつくった映像コンテンツから派生して、その周りに「街」ができ、視聴者がリアルの場でもつながれるようなオフラインのコミュニティづくりまでサポートしようと考えています。今でもStage.のプラットフォームは、映画館から「まちづくり」を仕掛けることをイメージして「シアター」と呼んでいます。

この3つを実現していき、新ブランディングプラットフォームを確立させていきたいですね。

編集後記

先日インタビューした萬野に続いて、2人目の映画監督の登場です(笑)。NewsPicks Stage.は当初、社内の新規事業開発プログラムthink beyondの起案のひとつでした。審査段階から「もうコレはやらない理由がない」と事業化され、起案者が海外事業に集中するためSaaS事業のマーケティング部門が担当することになり……とさまざまな変化があって今に至る事業・チームです。

いつの間にかメンバーも増え、コンテンツの内容も視聴体験もどんどん進化しています。一度収録現場にお邪魔したことがあるんですが、「え、TVかな……?」と思うくらいのクオリティ&規模でした(手前味噌ですが)。それを「映画制作やCM制作などとは違い、NewsPicks Stage.ではメンバーの数も制作条件も限られている」と語る狩野。これまでどんな規模の現場を経験してきたんだろう……と驚くばかりでした。ぜひ番組も視聴登録してみてください!

本記事に登場するメンバーの中には、すでに退職・退任しているメンバーも含まれます(役職・所属組織名は当時)。

執筆:流石 香織 / 撮影:渡邊 大智 / デザイン:片山 亜弥 / 編集:筒井 智子
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