人と組織に関する課題解決を支援する
加藤 俊輔(以下「加藤」):
CX事業部は「人」「組織」というふたつのセグメントに対して、「How」にとらわれず多彩なソリューションを提供する部門として立ち上がりました。
たとえば「人」に対しては、変化の激しい時代に必要なスキルを提供する研修プログラムを策定したり、NewsPicksをはじめとするメディアのアセットを活用したSaaS事業を展開したりしています。また、「組織」に対してはメディアが持つインナーコミュニケーションのアセットを活用して、組織活性化を促すソリューションを提供しています。
最近だと「パーパス・ミッション・ビジョン・バリュー」の策定や浸透を支援するサービスや、組織エンゲージメントを向上させる支援にも携わっていますね。
プロダクトとしてはNewsPicks EntrepriseやNewsPicks Learnig、今後はさらに新たなプロダクトも開発中です。これらのプロダクトとコンサルティングを組み合わせて提供することで、お客様の課題解決を支援します。
人を育てることで、サステナブルに事業が生まれる組織をつくる
高柳 貴衣(以下「高柳」):
M&Aやオープンイノベーションといった新規事業をつくるHowは世の中にたくさんありますが、それだけだと本当に一握りの優秀な人が組織にいるという「運」でしか事業が生まれなくなってしまいます。
そうではなく、毎年サステナブルに事業を生み出していくためには、事業開発や責任者を担えるような人材を継続的につくり出す必要がある。加えて、アイデアのタネも生んでいくことが重要です。AlphaDriveでは事業づくりは人づくりであり、文化づくりであると考えていて、CX事業部を立ち上げた経緯があります。
事業開発のプロセスから副次的に人材が育つというだけでなく、NewsPicksのエッジの効いたコンテンツを活用したり、NewsPicksの持つ編集力やコンテンツを生み出す力や、アルファドライブの有するクリエイティブアセットを生かしたりして、インターナルブランディングの支援を通して、変化に強い組織を生み出す。これは、AlphaDriveとNewsPicksが協働するからこその効果だと思っています。
高柳:
全部で30名くらいのメンバーがいて、セールス&デリバリー、事業開発を担う専従のメンバーが15名程度、あとはエディトリアルやクリエイティブのメンバーが兼務で参画してくれています。
本部のメンバーの出身業界は大きく3つですね。ひとつは広告系。広告領域で培ったブランディング支援の経験を活かし、クライアント企業により深く伴走し、成果創出までコミットしたいという思いを持った人たちです。もうひとつは、人材系の出身。何かしら人に思いがある人たちが多いですね。最後のひとつは、加藤さんのようなコンサル出身ですね。
加藤:
特にドメインは決めていなくて、本当に多種多様です。人や組織にかかわる課題は、あまり業種や業態の影響を受けることがないので、幅広いんです。
高柳:
その中でも大手企業のお客様が多いですね。人・組織にかける予算をこれから確保しようという企業の場合は、社内稟議用の資料をつくるところからお手伝いすることもあります。お客様から「こんなことができたらいいな」というフワッとした状態でご相談いただくことも多いので、しっかりと与件を整理するところから伴走するんです。
加藤:
営業の段階から、すでにコンサルティングが始まっているようなイメージですよね。育成パッケージや組織変革プロジェクトを実行するためには、現在の組織状態を把握する必要がありますよね、というところから始まって、案件にもよりますが約2ヶ月間は与件整理や組織状態を把握するためのヒアリングをさせてもらう。その部分だけ切り出してコンサルフィーをいただくケースもあります。
高柳:
ちょっと手前味噌かもしれませんが(笑)、AlphaDriveとなら組織に風穴を開けられるんじゃないか、という期待感を持っていただいていると感じますね。
加藤:
そうですね。人と組織にかかわる部分って、内製しようと思えばできないわけではありません。そういう意味で、我々の一番の競合は内製化なんですね。
ただ、僕らが共有したナレッジを持ち帰って自社でやってみようとする企業様は多いんですが、結局うまくいかなくて、再びAlphaDriveに相談しに来られるケースが多々あります。自分たちで理論通りに試してみたけどうまくいかない。でもAlphaDriveと組めば何かしらムーブメントが起きるんじゃないか。そんな期待感を持っていただいるお客様が多いのではと感じますね。
もうひとつは、現場に深く入り込んでいくスタンスを持っていることが僕らの強みだと思っています。あるべきやロジックだけを振りかざして、こんなスキルをつけたらいいですよ、こんなアプローチが最適です、といった提案だけで終わらず、実際に従業員の行動が変わるところまで、泥臭くお客様に伴走します。
僕たちの強みとしているソリューションのひとつに、社内コミュニティの形成から活性化までを一貫して支援するサービスがあります。担当者がコミュニティの内部にまで深く入り込んで、新しい学びや人と人とのつながりを構築していきます。こういった現場への入り込みが他社との明確な差別化になっていると思いますね。
一般的に人事コンサルは組織のハード面から入るので、人をどう配置するか? といった組織デザインの切り口からスタートします。一方で、僕らは人材のマインドから変えていくソフト面を重視しているんですね。そうした切り口でコンサルをしているプレイヤーは少数かもしれません。
MustからWillへ。顧客のマインドの変化を目の当たりにできる
高柳:
私が伴走支援をしたときに感じたのが、NewsPicks Learningを見てくれているユーザーさんはもちろんそうなんですが、それ以上に人事部の事務局の方がものすごく成長されるんですよ。
社内のコミュニケーションツールに「NewsPicks Learningの動画を見てこう思った」という感想を流すようなコミュニティをつくってくれたり、ワークショップの中でアウトプットの質まで考えて1つひとつの問いをつくってくれたり。
「この動画をこの順番で見てください」とこちらから言わなくても、事務局の方が自ら「今月はこういうテーマでやりましょう」と段取りができるようになる。上から目線に聴こえたら申し訳ないですが、事務局が育っていると感じることが多いです。
ワークショップやグループディスカッションでも、初回はみなさん、お見合いみたいにぎこちないんですよ(笑)。でも12ヶ月間、毎月グループディスカッションをするうちに「なぜ僕がこの会社に入ったか」「自分たちのプロダクトはもっと世の中から評価されてもいいのではないか」といったことをアツく語り始めたりして、エモいですね。
加藤:
NewsPicks Learningもそうですけど、NewsPicks Enterpriseもコミュニティ活動をやっていく必要があるので、同じように事務局が覚醒していくことがあるんですよね。「自分が変えないとこの会社は変わらない」くらいにマインドが変化する人も出てくる。周りの人を巻き込む経験を通じて、「人」がどんどん主体的になっていくんです。
大企業の方ってどうしても「今与えられたミッション(Must)」を重視する傾向があるんですが、行動がだんだんと「Will」ベースに変わり始めるんですね。自分がアプローチすれば周りの人も変わるかもしれない! と覚醒して、エバンジェリスト化していく。
会社をボトムアップで変えていこうという人たちが日夜集まって、自発的に議論するようになる。我々が介在した結果、社内のイノベーター同士がつながって越境し合う。そんな環境をつくることができます。
そんなふうにマインドが変わった人たちが既存事業を変えたり、組織変革を実現する推進力になることもあるし、そこから新規事業のタネとなるようなアイディアが生まれた場合、イノベーション事業部と連携して支援を拡大する──AlphaDriveとしてトータルで支援できるのも僕らの強みですね。
「How」にとらわれず、顧客に価値を提案できる組織に
加藤:
一番は、人が足りていないことですね。1社1社かなり密に伴走するので、事業としてスケールしづらいという問題があります。現在は、アソシエイトとして入社していただいて、1社の主担当を務められるようになるまで、半年から1年ほどかかることがわかってきています。それを前提に採用を強化していきたいですね。
また各ソリューションを型化し始めていますが、伴走やメンタリングはどうしても経験を積まなければ身につかない部分があります。アソシエイトのみなさんには、現場での経験を積んでもらうことを前提とした育成プランを組んでいます。
もうひとつの課題が、認知獲得です。AlphaDriveは人さえ増えれば100%グロースできるほど案件過多な状態です。一方、CX事業部単体だとまだそこまで安定しているとはいえません。認知が広がらないと、なかなか安定して案件を獲得するのは難しいんですよね……。
高柳:
昨年まではプロダクト・ソリューションの提供価値を磨くフェーズでしたが、今年度からCX事業部という形で組織が再編され、人材開発・組織開発の課題解決に資するものはどんなものでも提案していこう、という方針に変わったんです。
ただ、商品ラインナップを増やそうとしても、クライアントワークで伴走しながら商品開発をするのは難しい。使う脳みそが全然違うんですよね。そこも課題だと思っています。
加藤:
いま高柳さんが言ったように、AlphaDriveは「How」にとらわれません。「こんなやり方はダメだ」とは一切言わないんです。お客様にとって価値があることだと認められるなら、何をしてもいいという考えが組織の中に浸透していますね。
僕自身、すべての業務時間のうち9割をお客様のために割きたいと思うほど(笑)、クライアントワークが好きなんですよ。お客様と「共創」することにやりがいを見出しています。
人・組織の領域は簡単に正解が出せないので、お客様と一緒に葛藤しながらつくりあげていくんですが、それゆえに一蓮托生の関係になれる。「このソリューションを提供しておしまい」ではなく、本当にお客様との絆を感じます。
組織カルチャーを変革した圧倒的事例をつくりたい
高柳:
これまでは顧客課題に対してプロダクトベースの解決策がメインでしたが、今後はコンサルワークもセットで提供することが加速していくと思います。たとえば、NewsPicks Learningだけを導入しても、社員がなかなか見てくれないというケースもあります。
かつ、聞き流しても効果が得られないものなので、ちゃんと目的意識を持って、アテンションを張りながら視聴いただくためには工夫が必要なんですね。それで昨年、ワークショップのオプションを開発して提供しました。興味関心を持って見てもらうために、年間でこういう順番で見てくださいと私たちがデザインする。実際それでお客様の利用を促進できています。
今回、人材開発と組織風土開発がひとつになってCX事業部が生まれました。この1年でシナジーを生みつつ、私が担当している人材開発領域を、事業部として単体で成り立つくらいのソリューションの強さ、プロダクトの強さを育んで、事業貢献したいですね。
加藤:
僕も「AlphaDriveのCX事業部がこの企業を変えた!」という圧倒的な事例をつくりたいと思っています。
ボトムアップで従業員が変わった、組織の空気感が変わったという事例はつくれており、一定の成果が上がってきていることを実感しています。加えてパーパス経営支援、ミッションビジョンバリュー浸透支援、人材戦略策定支援など、トップダウンで組織変革をしていくなど、ソリューションの開発も行っています。今後はそうしたトップダウンとボトムアップの両輪で、組織カルチャーを変革した事例を1社でも多くつくっていきたいですね。
編集後記
どこのチームに聞いても「人が足りない!」「メンバーが増えればスケールできるのに!」と言うAlphaDrive。中でもCX事業部は、これまでも取り組んできた人・組織の変革を「事業部」として取り組む組織で、採用が難しいという話を聞いていました。今回インタビューしてみて納得です。難しい!(笑)
でも、高柳も加藤も日々クライアントワークに追われて忙しいはずなのに、ものすごく楽しそうにCX事業部の楽しさ・やりがいについてキラキラとした目で話してくれました。私もこれまで何度か「人が変わる瞬間」に立ち会ったことがありますが、それを日々の業務で目撃できることは本当に素晴らしくやりがいがあるんだろうなと、インタビューを通して改めて感じました。