NewsPicksの再成長を占う一大事業となったNewsPicks Premium 法人
小西 悠介(以下「小西」):
プレ法は2021年4月、もともとNewsPicksを個人で利用している方からの「会社で使いたい」というニーズを受けて本格的にスタートしました。「3名以上の法人単位で入会できる」「請求書払いができる」「会社で購読者の管理ができる」というプランです。
文字 拓郎(以下「文字」):
NewsPicksとしてプレ法に注力しようと意思決定したのが2022年の年末です。
中期経営計画をつくるなかで、NewsPicksの課金事業をどう伸ばしていくか議論になったんですが、個人の領域を伸ばしていくのは簡単じゃないなと。これから1〜2年の短期で大きく伸ばせるとしたら、やっぱり法人ではないかという結論に至ったんです。
そこで、当時AlphaDriveの管轄だったプレ法を成長させていこうと決めたのが昨年ですね。
吉永 庄吾(以下「吉永」):
NewsPicksの法人利用という文脈だと、プレ法とは別に、ドコモビジネスメンバーズの利用者特典としてNewsPicksが読める「NewsPicks+d」というメディアサービスを、2021年7月からNTTドコモと共同で提供開始しました。
ただ、NewsPicks+dはアライアンス事業という特性もあり、ドコモの営業の方が販売するため、自分自身が最前線で事業開発を推進していけない。そこに少しもどかしさがあって。小西くんと意見交換していたら、「吉永さんもプレ法に入ったほうがいいんじゃない?」と言われたんです。
自分としても、NewsPicks+dで得た知見をプレ法に活かせば、法人提供の可能性をより加速させられるんじゃないかと考えて、プレ法チームへの参画を決めました。
小西:
吉永さんがNewsPicks+dをセールスするのを見ていて、「プレ法だったらもっと暴れられるんじゃない?」という話をしましたよね。 2023年に入ってからはより攻めに転じようということでメンバー集めを加速して、上期と下期でそれぞれ3人ずつ増えています。
文字:
プレ法事業はNewsPicksの再成長を占うだけでなく、ユーザベースにとっても重要な事業になっていますね。
ユーザベースのプロダクトにはいま、人事領域を対象としたものが2023年11月に本格提供を開始した「スタートアップ人事制度診断 by INITIAL」しかありません。一方、プレ法事業では今、人事領域に関して明確に強いトラクション(牽引力)がある。NewsPicksを契約してくれているお客様に対して、SPEEDAやFORCASなどのSaaSプロダクトを提案したり、逆にSaaSプロダクトをご利用いただいているお客様にNewsPicksを提案するなどして、ユーザベースの経済圏をより広げていく、そんな戦略的なプロダクトのひとつに位置づけています。
「ブロック」を取り除き、WhoとWhatを明確にしたことで組織も数字も徐々に上向く
文字:
僕は担当役員という形でジョインしたんですが、下期の半年ほどで取り組んだのは、ブロッカーを取り除くことです。
チームに入って最初に驚いたのが、メンバーが若いことでした。30歳が一番上。会社の期待を背負った新規事業を、こんな若いチームが担当しているんだとビックリしました。
僕の経験上、リーダー陣が一枚岩だとその組織はうまくいきます。だから僕はマネジメントスタイルとして、まずリーダーシップチームを形成するところからスタートするんですね。プレ法チームでもリーダーを決めて、それぞれに課題やその解決策を聞いていったんですが、メンバーとの対話を通して「遠慮」を感じました。
立ち上げ期のフェーズにあって、突っ走るパワーのある人たちはそろっている。だったら遠慮せずに暴れてもらおうと思って。メンバーが全力疾走するために、その阻害要因になりうるブロッカーを取り除こうと考えました。
文字:
ひとつはオーナーシップが不明瞭だったこと。それぞれがどこにコミットしているか明確ではなかったので、オーナーシップを明確にし、コミュニケーション量を増やしてスピード感のある組織をつくるよう意識しました。
もうひとつは組織の壁です。プレ法はもともとAlphaDriveの事業だったこともあり、「NewsPicksのプロダクトチームと連携したい」「編集部と連携したい」といったときに壁を感じることが少なからずあったんです。
小西:
プレ法事業は、2022年末までは順調に数値が上がってきていたんですが、当時はその後どう伸ばしていくか、具体策が描けていなかったんです。そうしたらやはり、2023年に入って成長が大きく鈍化してしまいました。
加えて、いろいろなことを僕がひとりで全部抱えてしまっていたために顧客解像度も低くなり、オーナーシップが不明瞭になってしまったり、組織の問題が噴出したり。その結果、数字も組織もガタガタ。そこに文字さんが入ってくれて、NewsPicks流の組織のつくり方を取り入れ、事業スピードの上げ方が半年で大きく変わりましたね。
あと、短期的にチームのメンバーが増えたことで、「2〜3人の新規事業組織」から「10人の新規事業組織」にアジャストできずに苦しんでいたんですが、そこも文字さんがうまく解消してくれました。
吉永:
個人でNewsPicksを利用してくださってるユーザーが、法人プランに申し込んでくれることが多く、導入自体は急速に進みました。ただ「NewsPicksを導入すると法人にとってどんなメリットがあるか」をうまく提示できずにいた。僕らの中でも提供価値が曖昧だったんですね。
NewsPicks+dではNewsPicks導入のメリットを「人材教育につながります」と伝えていたんですが、そこから3段階くらい深いところの解像度が低かった。3カ月間で中小企業、スタートアップ、大企業に対して、メンバーみんなで商談をしまくって解像度を上げました。
小西:
2〜3人のチームでプレ法を担当しているうちは解像度が低かったんですが、人数が増えて、プロダクトをどうしたらいいか、マーケティングをどうしたらいいか、この1年でぐっと解像度が高まりました。「Who」と「What」が明確になりましたね。
訴求価値をアップデートしPMFを実現。
吉永:
NewsPicks=ニュースサービス、ではなく「従業員やチームメンバーの自発的な学びを促進するツール」としてご案内してます。
NewsPicksはSPEEDAと連携し「企業・業界情報」といったデータをニュースと合わせて提供しているんですが、たとえば営業の方であれば担当クライアントに紐づくニュース、プレスリリース、財務情報、競合分析、業界トレンドといった情報を即座に入手し、提案準備にかかっていた時間を大幅に短縮することが可能です。
チームメンバーの変化を感じた管理職の方が、ニュースシェア機能を活用して「個人の気づきを組織の学びに変えていく」ということを実践されています。ニュースを起点にナレッジが生まれ、学び合う組織に転換していく、これこそがNewsPicksを法人導入する大きな価値になると思っているんです。
小西:
学びという意味では中小企業も同じですね。
中小企業の社長は、従業員のみなさんに自ら学んでほしい、経営陣とやり合えるくらいの従業員を育てていきたいと考えています。もっと外に目を向けて、いま何が起こっているか整理したうえで、事業家として成長することを望んでいらっしゃることが多いんです。
NewsPicksのコンテンツは社長もシェアしやすい。それを1on1のネタにしたり、社内で勉強会をしたりと、いろいろな使い方ができるんです。
NewsPicksを使うことは「従業員にとっての権利」であるという声も届いています。その権利をどんどん行使してもらえるように社内で仕掛けていきたいし、それが従業員の能動的な成長につながるはずだとおっしゃる社長もいらっしゃいます。
吉永:
法人プランを活用し、ご満足いただいているユーザーの方からのご紹介が増えましたね。
たとえば大企業であれば、前述した営業部門における利用トピックスに関して、コーポレート人事の方にご興味いただき「人材育成ツール」としてNewsPicksをどのように活用出来るかをご相談いただく機会が多くなっています。
小西:
当初は中小企業のターゲットが不明確だったんですが、そこから解像度が上がって、経営者の方々に明確に刺さっていると感じます。2025年やその先も見据えながら、足下の数字をしっかりつくっていきたいですね。
文字:
今後はよりしっかりとインサイトを得ていく必要があります。BtoBセールスのいいところは、営業にいけばお客様がそこにいること。お客様の話を聞いて、プロダクトに反映させていきたいです。
たとえば、実はユーザーはニュースばかりを求めてはいない。ニュースは必要だから読むんですが、それだけでは足りないんです。いまのNewsPicksはコンテンツの8割がニュースです。でも法人ユーザーの方々は、もっと直接的に仕事に役立つコンテンツを求めていたりする。
いま僕らはひたすらニュースコンテンツばかりつくっていますが、そういう状態から変えていかなければいけないですよね。今後はコンテンツシフトも考えなければいけないと思っています。
もうひとつ、いまは個人向けのプロダクトをそのまま法人に提供していますが、これも変えていかなければと思っています。たとえば人材育成や法人営業を担う人たちへの明確な便益をつくっていくなど、法人向けの開発をしっかりやっていく必要があります。
NewsPicksの歴史を変えるほど成長させたい
文字:
SaaSからNewsPicks、NewsPicksからSaaS、両方のルートがあると思っています。
SaaSの顧客セグメントとNewsPicksのプレ法が対象とするセグメントって、一致するんですよね。前述の通りSaaSは人事領域をカバーしきれていないし、NewsPicksは営業、法人営業、新規事業部門のお客様を開拓したい。
営業、法人営業、新規事業部門はSPEEDAとFORCASが得意とする分野なんですが、SPEEDAとFORCASは予算的に高すぎたり、ここまでの機能は求めてないんだ、というお客様もいます。そうした方々にはNewsPicksを提案できるはず。
プレ法にとってありがたいのは、ユーザベースのSaaSプロダクトが脈々と築いてきた顧客基盤があることです。これはユーザベースの最大のアセットでもある。将来的には、SaaSの営業組織がNewsPicksをセールスすることも可能になります。
文字:
2024年はまずエンタープライズ向けのセールスから始めていこうと考えていますが、逆にユーザベース全体としてSMB(Small and Medium Business/中堅・中小企業)に対しては、NewsPicksがカバーしていけるといいのではないかと思っています。
NewsPicksがカバーして、SaaSにパスする。そうした連携は実際に少しずつ始めているので、今年は本格的に進めていきます。
小西:
佐久間さん(佐久間 衡/ユーザベースCo−CEO)にもそういう目線があったから、SPEEDAやFORCAS、INITIALでNewsPicksを使えるようにID連携をしたと思うんですよね。だから絶対こういう未来がくると思って準備していました。
小西:
事業が明らかに加速し始めている実感がありますね。吉永さんだけでなく、CSメンバーもマーケのメンバーも加入して、必要なファンクションがそろってきた。あとは伸ばすだけです。かつ、伸ばしていくうえでのハードル──文字さんが話してくれたブロッカーも取り除かれてきたので、しっかりチームを機能させていきたいです。その上で、より多くの方々にNewsPicksの体験を届けていきたいと思っています。
吉永:
ワクワク1,000%ですね。自分自身は2021年にNewsPicksに入社したんですが、当時の上司である麻生さん(麻生 要一/AlphaDrive CEO)に「NewsPicks会員数のケタを変えにいきます」という話をし、「NewsPicks+d」事業を立ち上げました。 この志は1ミリもぶれていない、かつ、3年たった今、本気でパラダイムシフトを起こせるのでは?と確信している状態です。
昨対比120%成長ではなく、歴史を大きく変えるということを成し遂げないとここにいる意味がないと思っているので、ケタを変えるチャレンジをしたいですね。
文字:
僕もワクワク1,000%ですね(笑)。この新世代感のある若いチームから2〜3年後に役員が誕生してほしいと思っていますし、それくらい高い目標を達成することができたら、NewsPicksの景色は変わるでしょう。
若いチームが原動力となってNewsPicksを大きく動かす、そんな歴史をつくりたいですね。
編集後記
文字さんがプレ法の担当役員になると聞き、どういうことなんだろう? と今回のインタビューを企画しました(CPO/CTOなので、ビジネスサイドの組織を管掌するイメージがなかったので)。でもチームのつくり方の話を聞いて、今後のプレ法チームがどんな成長を見せてくれるのか、ワクワクしかない! と感じました。
インタビュー後、「営業経験等がないリーダーとして」大切にしているポイントの補足テキストが送られてきて、サラッと「僕自身は3〜300人ぐらいマネジメントした経験がありますが」と書かれていて二度見(笑)。身内を褒めすぎるのは手前味噌になってしまいますが、このリーダー論(?)はぜひどこかにまとめてほしいなと感じました。