「ユーザベースには愛せるプロダクトがあり、カルチャーがある」
新卒でヒューレット・パッカードに入社し、2012年にセールスフォースに転職しました。営業職で入社して、2016年から1st lineマネージャー、いわゆる現場チームのマネージャーに昇格。2020年には2nd lineマネージャー(営業本部長)になりました。
メンバー時代は大手企業、マネージャー時代は中小・中堅のお客様を担当していました。マネージャー時代は営業本部長でもあったので、営業戦略やピープルマネジメント施策を考えたりもしていました。
セールスフォースでやってきたことを、すでにある程度の成長ステージにあって、そこからさらに一段、二段成長していこうとしている企業で、もう一度試してみたいと思ったんです。
もうひとつは、外資系あるあるだと思うんですが、外資系の日本法人はどこまでいっても営業組織なんですよね。待遇はいいし、特にセールスフォースは営業を科学していて、最先端の企業でした。でも、あくまで営業組織という位置づけなので、自分でPLを考えたり、事業やプロダクトを新しくつくったりといった経験をしたことがなくて。事業サイドの経験を積みたいという気持ちもあったんです。
ユーザベースは僕の入社当時1,000人ほどの規模で、そこから再成長しようとしていたんですよね。しかも、外資系のカーライルによるTOBで一度上場廃止をし、再上場を目指そうとしている。こんなレアなキャリアを積める環境はそうそうないし、このヒリヒリ感が楽しそうだなと思ったんです。
もうひとつ、僕の価値観として、営業をするうえで、自分が自信を持って勧められるプロダクトかどうかは大事だと思っていて。そういう意味では前職でユーザベースのサービスを利用していてすごくいいサービスだと思っていたし、「愛せる」と思ったことも大きかったですね。
セールスフォースでユーザベースを担当していて、日本でも誇れるカルチャーを持った企業のひとつだと思っていたんですよ。メンバー全員が自分の仕事にコミットするし、みんな家族のようにお互いを思いやっている。これまで培ってきたカルチャーがオープンに伝わってきたことも決め手のひとつでした。
Big Dealへのシフトに伴う「ワクワク」と「ヒリヒリ」
佐久間さんがこの話をしたとき、「Big Think」「Big Deal」「Big Client」の3つを挙げていましたが、僕もその通りだと思います。
その中でも僕は「Big Deal」に大きな意味があると思っています。なぜなら、ユーザベースは今こそゲームチェンジのためのチャレンジをすべきだからです。
今までのユーザベースは、企業の課題がある程度顕在化したところに営業をかけて、そこでMRR(Monthly Recurring Revenue/月間経常収益)が生まれ、結果的にBig Clientになる流れがありました。つまり、既にBig Clientはうまれているんです。でもこれだとある程度浸透してしまったらどこかで頭打ちがきます。
この状況を変えていくには、「どの部署の誰と話す」ではなく、事業本部や、場合によっては役員層に対してユーザベースがもたらす価値を訴求する必要があります。かつ、そのプロジェクトの中に自ら入り込んで、結果的にスピーダ 経済情報リサーチもスピーダ 営業リサーチも、スピーダ エキスパートリサーチも……という形で単体のプロダクトではなく、お客様に必要なサービスを総合的に提案をして、お客様のプロジェクトの下支えをしていく。
こういうチャレンジが今まで提案できていなかった領域を切り拓くことになりますし、お客様と真のパートナーになれると考えています。まさしくBig ThinkからBig Dealがうまれ、よりBig Clientに育っていくという理想を実現できると。
Big Dealとは大きく提案することですので、部署から本部、本部から事業部といった形で提案対象を広げるようなケースと、複数のプロダクトやサービスを複合的に提案していくケースがあります。
つまり、スピーダ事業として提供しているスピーダ 経済情報リサーチやスピーダ 営業リサーチに加え、NewsPicksの法人プランを提案したり、そもそもお客様のインナーブランディングを高めるためのグランドデザインを提案したり、コンサル提案をして「ワン・ユーザベース」の便益を大きな範囲でお客様に提供することにつながると思っています。
そこに僕らの勝ち筋があると思っていて。単なるツール提供ベンダーではなくて、マーケティング戦略やブランド戦略ができて、かつスピーダ 戦略コンサルティングのように運用やノウハウまで一緒に提供していく。こんな大きい提案ができる会社は他にない、ユーザベースにしかできない提供価値だと思うんです。
Big Dealは博打要素もあるんですよ。たとえば、お客様の目の前の課題に対して普通に提案したらすんなり決まるものに対し、Big Dealを狙いにいくと複雑性が増す。
金額が大きくなると、その分お客様の意思決定プロセスも複雑になりますよね。お客様社内での予算取りが必要だし、ステークホルダーは増えるし、採用やマーケティング費用といった“別の競合”が出てくる。そうなると、夢はあるけれど、時間をかけたわりには結局契約につながらないリスクもある。ハイリスク・ハイリターンなんですよね。
そもそも僕ら自身の実力もわかりきっていないので、どこまでBig Dealに賭けていいかの加減がわからない。ただ、それも含めて乗り越えていかなければいけない壁だと思っています。
そうなんです。もうひとつ気をつけなければいけないのが、いわゆる「山っけ」ですね。メンバーとしても、Big Dealを取れたほうが当然楽しいんですよ。リスクもあるけど金額が大きくなるので。
だからといってみんながBig Dealだけを狙いにいくと、今度はものすごくリスクの高い集団になってしまう。そうならないように、「Big Dealは全体の何%」などリーダーやドメイン長がコントロールしていく必要があるんです。
ベースのビジネスがあってはじめて企業は成長するので、そこをおろそかにしてはいけない。このバランスがヒリヒリするポイントでもありますね。
とはいえ、大きく仕掛けていくというこちらの思いも大事ですが、何よりも大事なのはお客様にとって必要なことは何か? という観点です。お客様が目指す未来を実現するために必要な提案であれば、積極的にしていきたいと思っています。
「枝葉」でなく「幹」を見る、エンタープライズセリングの考え方
一番のやりがいは、大きなビジネスの話ができることですね。Big Dealって、お客様の表面的な課題に容易に飛びつかないことが大事なんです。
僕はよく「木」に例えて言うんですが、木には「枝葉」と「幹」がありますよね。枝葉はどんどん生まれ変わるものですが、幹は変わらないもの。
お客様の課題は、枝葉なんです。枝葉ばかり見るのではなく、幹を捉えて提案することによって、大きなビジネスになりうる。場合によっては、お客様と一緒にビジネスをつくっていくようなダイナミックな話になっていきます。
だから、目の前にお客様の課題があってもグッと我慢して、この課題はどの幹から連なっているのか、どういう経営目標があって、お客様がどこを目指しているかを理解したうえで、枝葉を含めた大きな提案をしていく必要があるんです。
エンタープライズセールスで求められるのは、こうした幹を捉えた提案ができる人、つまりエンタープライズセリングができる人なんですよね。
よく、求人票に「エンタープライズ領域でのセールス経験が5年以上の方を求めます」と書いてあるんですが、あれは単にエンタープライズセールスをしてきた人ではなくて、「エンタープライズセリングができる人」がほしいんですよ。
幹を捉えた視座の高い提案視点を持ち、かつ、経営陣も現場も押さえて組織攻略していける人こそ、市場で評価されるんです。
僕は、エンタープライズセールスはイネーブルメント(育成)できる分野だと思っています。
エンタープライズセールスは、『THE MODEL』のようなシステマチックさだけでなく、アート的な要素を含んでいます。
チェックボックスの項目をすべてクリアすればOKという単純さがなく、場合によっては会食をしたり、足しげく客先に通ったり、お客様の株主になったりと、あの手この手でお客様のことを知っていく必要があります。
セールスフォースもこの部分をすごく重要視していて、エンタープライズセリングのスキルや、ステークホルダーコミュニケーションを身につける、イネーブルメントのステップを明確にしていました。それでメンバーが育っていたので、ユーザベースでも必ずできると思っています。
ちなみに、その内容はすでに光岡さん(光岡 亮介/スピーダ事業 執行役員)と一緒にLENDのPlayBook(戦略的なガイドライン・指針)としてまとめています。たとえばお客様の幹をつかむためのポイントや、お客様とのディスカッション、他部署への展開、チームセリングなど、エンタープライズセリングの方法を定義してステップを言語化しています。
かつ、LENDではこれまでBig Dealのトレーニングを計4回行っています。そのときテーマに置いたのが、POV(Point of View)でした。
POVは、お客様「幹」に対してユーザベースがどんな価値を提供できるかを示したものです。お客様の事業プロセスを書いて、たとえば新規事業開発の部分であれば、スピーダやエキスパートリサーチが提供できますよね。このPOVをしっかり書けるようになることでお客様とハイレベルな話ができるようになります。
ユーザベースにはこうしたトレーニング環境もあるし、プロセスも言語化もされているので、ユーザベースに入ればエンタープライズセリングが身につくと自信を持って言えますね。
ユーザベースをエンタープライズセリングの「ショーケース」に
当初期待していた「事業会社で働く」を実感できていますね。今回のこのBig Dealという会社の大きな方向性に対しても、プロダクトチーム含むすべてのチームをアラインして、プロダクト開発から携わっていけるというのは本当に嬉しいなと。
もうひとつがユーザベースのカルチャーですね。前職時代からユーザベースのカルチャーはすごくいいなと思っていたんですが、実際入社してみて思った以上に素晴らしかった。いい意味で裏切られました。
会社の規模でいえば1,000人を超えているのに、ベンチャー感を失っていないですよね。いろいろなことがスピーディーに、目まぐるしく動いていく。これがユーザベースのカルチャーをつくっているんだなと感じます。
LENDは社内で唯一、すべてのプロダクトを扱っています。そのため、メンバー1人ひとりのキャパシティに依存しがちなんです。非常に難易度の高いことを、負荷をかけてやってもらっている。ここが大きな課題なのかなと。
特にミドルマネジメント層の負荷が高くなっているので、この負荷を加味したうえで、やるべきことに集中できる組織体制や制度設計、場合によってはイネーブルメントのような横串の組織を設けてサポートしていくべきではないかと思っています。
成長痛が出る時期ですが、ここを乗り越えれば絶対に明るい未来があると信じています。
1年後は、僕らユーザベースがエンタープライズセリングの「ショールーム」になっていたいですね。
先ほど言ったPOVも、実はスピーダ 経済情報リサーチを使えばより早くつくれるようになるし、スピーダ 営業リサーチを使うことで、お客様先に行く前のたった10分で仮説が立てられるようになる。自社のプロダクトを使いこなすことで営業組織が大きく変わり、パイプラインが増え、事業成長したことを証明できれば、それが一番の売り文句になります。
LENDのメンバーが、自分たちのやっていることをそのままお客様に話すだけでビジネスになる。そんな世界がつくれたら、自分たちの取り組み自体がブランド化されて価値が出る。それはメンバー皆さんのキャリアにとっても、大きなプラスになると思います。
そして3年後には、ユーザベース、特にLENDが、日本の中でも最先端のエンタープライズセリング組織であるというブランディングができていればいいなと考えています。
編集後記
作田の話は何度か聞いたことがありますが、今回のインタビューで改めてLENDの今後にワクワクしました! セールスフォース在籍時、THM(TownHallMeetin/全社ミーティング)に登壇してくれたこともあったので、ユーザベースに入社することが知らされたときは社内がざわついたのを覚えています(笑)。
作田は今後スピーダが主催するセミナーなどにも登壇予定なので、こちらもぜひご参加ください!
https://jp.ub-speeda.com/seminar/