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「一度は離れようとした研究開発支援畑に再び引き戻された」──実現したい、スピーダ R&D分析がインフラ化した世界

「一度は離れようとした研究開発支援畑に再び引き戻された」──実現したい、スピーダ R&D分析がインフラ化した世界

「水道の蛇口をひねるように、当たり前のようにスピーダ R&D分析が活用される世界を目指したい」。そう話すのは、スピーダ事業 知財・研究開発支援組織でセールスチームのリーダーを務める小林展也です。ファーストキャリアから一貫して研究開発支援に携わってきた小林は、一度はこの領域から離れようとするも、スピーダ R&D分析に出会い、再び引き戻されたと言います。なぜ、再び研究開発支援の道を歩もうと思ったか、スピーダ R&D分析で実現したい世界とは。

小林 展也

小林 展也NOBUYA KOBAYASHIスピーダ事業 知財・研究開発支援 個社深耕セールスリーダー

2011年に理工学系大学院を卒業後、化学系の専門商社に入社。営業として化学、食品、化粧品、医薬品関連企業の研究開発を支援。2016年にオープンイノベーションを支援するベンチャ...

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目次

「スピーダ R&D分析は自分が目指す世界観を実現できるプロダクトだと思った」

はじめに、小林さんのこれまでの経歴を教えてください。

私は理系の大学院まで進んだんですが、研究者にはならずに化学系の専門商社に就職しました。研究の道よりも、研究開発者を支援する仕事のほうが向いていると思ったんです。
 
でもあるとき、研究者の課題に対して、その商流の中でしか解決策を提案できないことに窮屈さを感じるようになって。もっとフランクに解決策を提案できないかと思っていたときに出会ったのが、オープンイノベーションの仕組みでした。

しかもその頃、ちょうどオープンイノベーションを推進しているスタートアップの社長と知り合い、いろいろ話をするうちにその会社に転職を決めて、今後はオープンイノベーションを推進しながら研究開発を支援することになりました。
 
そこでしばらくオープンイノベーションに関わっていたんですが、あるときふと「研究開発の支援をするのに、オープンイノベーションだけにこだわる必要もないんじゃないか」と思ったんです。
 
そこで、仲間と共同で、技術調査や市場調査などをベースに、オープンイノベーションも含む研究開発支援をする会社を立ち上げました。その会社は数年後に退職したんですが、そのとき、「一旦この領域から離れようか」と考えたんですよ。

それまで散々駆け抜けて、働き過ぎて疲れたなと。それで、農業とか全然違う仕事をしようかと思ったんです。

ものすごく振り切ったことを考えていたんですね。そこから何がきっかけでスピーダ R&D分析に出会ったんですか?

転職エージェントからの紹介でした。もともとスピーダは知っていたんですが、経営企画や金融機関が使うデータベースというイメージだったので、紹介されたときには「なんで研究開発なんだろう?」と思いました。
 
日本はせっかくすごい技術を持っていながら、それを価値に変えられずにいます。それはもったいないと思っていたので、技術側に市場側の情報を提供して、技術をどう価値に変えていくか考えられる環境をつくりたいと思っていたんですよね。
 
スピーダ R&D分析が目指すものも、僕が目指す世界観にすごく近いなと思いました。かつ、このプロダクトを使えばいろいろな人に価値を届けられるし、自分が実現したいことが現実になるかもしれないと思えたので、気づいたらまた研究開発支援をすることになりました(笑)。

ファーストキャリアから一貫して研究開発支援のキャリアを歩まれているわけですが、小林さんが研究者支援にWillを持っているのはなぜなんでしょうか。

商社時代にいろんな技術者と会話していると、おもしろい技術なのに世の中にうまく届いていないなと感じるものがたくさんありました。こうした技術は世の中への伝え方ひとつで大化けするんじゃないかと。
 
それが世の中に伝わって価値として実感されれば、開発した技術者も注目されますし、世の中も変わっていくと思います。いいことづくしですよね。それが僕の中でWillのベースになっています。

研究開発者支援でいうと、小林さんが経験したこれまでの3社とスピーダ R&D分析との違いをどう感じていますか?

一番は、軸となるプロダクトの有無ですね。
 
前職までは、基本的にはお客様の課題を聞いて解決策を洗い出し、それをマンパワーで実行していくコンサルのような動き方をしていました。それだとカスタマイズ性は高いものの、個別対応に限界があるんですよね。
 
その前のオープンイノベーションでの開発者支援も、どうしてもスポットビジネスになりがちだったんです。
 
そこに対して、僕たちにはスピーダを軸としたスピーダ R&D分析という明確なプロダクトがあるので、使う側からしてもわかりやすい。何ができるかも明確です。

もうひとつは、SaaSなので、スポットビジネスと違って一度導入して定着すれば、あとはMRR(Monthly Recurring Revenue/月間経常収益)が増えていく一方なんですよね。そうした安定感も魅力です。

過去の研究開発支援の経験を個社深耕に活かす

小林さんがリーダーを務める、個社深耕DivisionのAccount Executive Team(以下「AE」)の業務内容を教えてください。

AEは担当アカウント(大手企業グループ)とともに変革・共創していくことを目指しているチームです。各アカウントに対してフィールドセールス(以下「FS」)とカスタマーサクセス(以下「CS」)の両方を担っています。これらの活動を通じて得られた顧客課題と向き合い、より上位の視点で解決に挑む組織となります。

2024年1月よりスタートしたのですが、繁忙期もあり、6月まではFSの役割を担う人とCSの役割を担う人に分かれていた状態でした。現在はAEとして活動できる体制を構築しつつあり、各担当アカウントに対してFSとCSを一貫して担う体制にシフトしているところです。

また、特定アカウントに対しては、スピーダ R&D分析の枠を超えた課題に対してのアプローチもスタートしました。変革共創ロードマップというフレームを活用しながら、顧客の目指すべき姿をベースに支援できることを模索しています。

市場開拓チームが新規営業をするのはイメージしやすいんですが、個社深耕チームのFSはどんな動きをするんですか?

ユーザベースでは今、特定のアカウントからMRRの大きな契約を獲得する「Big Deal」を戦略に掲げていますが、個社深耕チームのAEとしては、既存でも新規でも、1社からどれだけ大きな契約が取れるかに注力しています。

そのために、AEは各アカウントのより視座の高い課題に向き合い、提案していくことが求められます。お客様の課題を解決するために必要なものは何かブレークダウンして、スピーダ R&D分析に限らず、最適なサービスやコンテンツの提案もおこないます。

1アカウントあたりの契約を大きくしていく上でベースとなる戦略は「シン・タイル戦略」と呼んでいて、特定のアカウントに対して、特定部署内でのサービス利用拡大・他サービスの導入、他部署への横展開、グループ会社への展開を常に考え続けている感じです。もちろん市場開拓チームと同様の新規営業も行っています。

FS経験者でも、それまで扱ってきたクライアント規模や価格規模の違いによって難しさを感じると思うんですが、CSを経験しただけでそんなセールスの仕方は可能なんですか?

いや、難しいです。
 
たとえばCSだったら、これまでは特定の契約でスピーダ R&D分析を使えるようになればよかったのが、AEのセールスになるとお客様のゴールに対してスピーダがどんな価値を提供できるか、スピーダ以外に必要となるプロダクトはないか──その全てを設計する力が必要になります。
 
竜さん(伊藤 竜一/知財・研究開発支援組織リーダー)も、CSがAEの動きができるようになるまでは2〜3年かかると言っていますね。
 
ただ、僕はCSとして顧客対応をする中で、クライアントがスピーダ R&D分析を使いこなせていないことを課題に感じていました。

そこに対しては、そもそもクライアントがゴール設定や課題整理ができていないのではないか、スピーダ R&D分析の使い方を伝えるだけでなく、課題解決に向けたプロセス設計や、他の解決手段との組み合わせが必要ではないか、といったことを考えながら支援するようにはしていました。僕の感覚としては、その延長線上にAEがあるイメージです。

新しい技術を新規事業につなげるうえで、課題設定を明確に決められる会社ばかりではないですもんね。

そうなんです。技術者としては技術の深掘りが仕事で、新規事業は事業部側が設計していたため、経営陣に「新しい技術で世の中に価値を届けるために、どう市場に展開するかを設計してほしい」と言われても、どうしていいかわからない。また、専門性の高い技術を一般的な内容に落としこんで市場側と紐づけるという経験も少ない。なので、スピーダの価値を理解してもらうにはまだまだハードルが高いと感じます。

先ほど言っていた「シンタイル戦略」でアタックしたい部門がある場合、どのように接点をつくっていくんですか?

個社深耕チームの場合、AEとAIS(アカウント・インサイドセールス)というチームが連携して戦略的に開拓していますね。

AISはアカウントの組織構造の解像度が高いので、そこから得られた情報を参考にしながら、AEは商談で戦略的にディスカッションをしていくといったイメージです。
 
またAEでいうと、これは僕のやり方なんですが、勉強会やコンテンツで人を巻き込むようにしています。たとえば、スピーダを導入してもらっている部署を対象に、テーマを決めて勉強会をします。そこに関連部署の方たちも誘ってもらい、トライアルアカウントを用意して興味を持ってもらう、といったような動きをしています。
 
既存契約のフォローという体裁で、クライアント社内に同じ課題を持った人たちがどれくらいいるかを把握しにいくイメージです。

それをするには顧客の組織体制や課題を理解しておく必要があると思うんですが、小林さんはどう把握しているんでしょうか。

市場情報を知りたい技術者が興味を持っているテーマは、ある程度決まっていると思っていて。自分たちのテーマを市場と絡めてつくりたいか、自分たちの技術を世の中に応用展開したいかだと思うんです。僕はそのあたりをフックにディスカッションをしています。
 
ディスカッションを通じて課題を整理したり、解決手段を模索したりしていくところは過去の3社での経験が活きていると思います。ただ、これまでとの違いは課題解決手段としてスピーダ R&D分析という明確なプロダクトがあることです。

顧客理解を含め、全体のレベルアップが課題

お話を聞いていると、顧客課題の理解もですが、スピーダ R&D分析を技術者や研究者に使ってもらうための啓蒙も難しそうに感じます。

ハードルが高いですね。経営企画やコンサル、調査会社は、ある程度調査の「型」ができていて、そこにどう効率的に情報を組み込んでいくかという方法がわかっていることが多いと思われます。
 
でも技術者の場合、その方法がわからないところにいきなり大量の情報が入ってきます。どこを触ったらいいかわからないし、触るにしても、それが自分の研究に役立つかどうかわかりません。

だからなかなか研究者にとって、スピーダ R&D分析がMust Haveにならない。Must Haveにしてもらうために、「使おう」という内発的動機をどう生み出すかが難しいんです。この点においては、今まさに市場をつくっている感覚ですね。

そうした難しさに対して、小林さんは過去の経験を活かしているというお話がありましたが、NewJoiner(中途入社メンバー)はどうやってキャッチアップしているんですか?

まずはじめの1ヵ月間は、スピーダ R&D分析の理解を深めてもらうのと顧客課題のキャッチアップです。2ヵ月目からは徐々にロープレなどのアウトプットが始まって、3ヵ月目に入る頃にようやく顧客との接点がスタートします。
 
入社から3〜4ヵ月でサービスの紹介はできるようになるんですが、そこからさらに踏み込むのが非常に難しいですね。お客様の課題を理解して、そこにどうコミットしていけばディスカッションが成立するか。この辺りになると一気にハードルが上がります。
 
今いるメンバーもお客様への価値の伝え方には苦労していて、試行錯誤しながら進めています。もちろん私も試行錯誤中です。

半年ですか。それくらい難しいんですね。

僕自身も3社で研究開発支援をしてきたのに、まだもがいているところはあります。未だに解決策が浮かばないものもあります。もちろん経験を重ねることで、どこかの時点でブレークスルーが起きる感覚はあるんですが、コツをつかむまでは大変です。
 
あとは、今はまだマニュアルがなく、情報が整理されていないのもハードルを上げている一因です。他の営業組織ではPlayBookやオンボーディングプログラムを整備し始めているので、それに便乗して僕たちの組織もマニュアルを整えようとしています。
 
こうした組織を整える部分も含めて、全体のレベルアップが必要ですね。

スピーダ R&D分析をインフラにして日本活性化につなげたい

冒頭で、自分が実現したい領域とスピーダ R&D分析が目指す領域に近しいものを感じてユーザベースに入社したという話がありましたが、あらためて、スピーダ R&D分析が浸透した世界をどう描いていますか?

僕が実現したいのは、スピーダ R&D分析がインフラ化した世界ですね。水道の蛇口をひねるように、当たり前のようにスピーダ R&D分析が活用される世界。技術者が新しい研究テーマを考えるとき、調査自体が負担にならない、日常化された世界をつくりたいと思っています。
 
技術者が持つおもしろい技術が市場側の価値に紐付けられて、世の中にどんどん発信されていく。そうすると、結果的に日本のすごい技術が、すごい価値を生む世界ができて、日本全体が活性化していくと思うんです。
 
この世界にはもうひとつ続きがあって、スピーダ R&D分析が世の中のいろんな企業に導入されると、スピーダ R&D分析というプラットフォームをベースに技術者や企業がつながれるようになるのではないかと思うんです。
 
たとえば、A社とB社の技術が組み合わさって新しい価値を生み出せるような、それこそオープンイノベーションの世界が実現できる。ユーザベースがプロデューサー的な立場で、技術者や企業をつなげられれば、日本全体でグローバルと戦えますよね。
 
こうした世界観を描くのはスピーダ 戦略コンサルティングが得意とする領域だし、スピーダ R&Dの情報をうまく使えば、企業や技術者のつながりの中でアイデアをブラッシュアップしやすい。そんな未来になればとてもおもしろいと思います。

編集後記

技術者と経営層がつながると何が生まれるのか──本取材の後半で小林さんが語っていた「水道の蛇口をひねるように、当たり前のようにスピーダ R&D分析が活用される世界」が実現したら、どんな未来になるのか、インタビュー中に私もワクワクしました! まだまだ道のりは長いですが、今後も知財・研究開発支援組織の進化を継続取材していきたいです。

執筆:宮原 智子 / 撮影・編集:筒井 智子
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