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「日本の金融・商社業界における仕事を変える」──顧客起点で築く新たな営業戦略

「日本の金融・商社業界における仕事を変える」──顧客起点で築く新たな営業戦略

スピーダの大企業アカウント統括本部は、「通信」「金融・商社」「SIer」「製造」の4つに担当領域が分かれています。各領域における顧客課題や関係性構築、そこで形成できるビジネスパーソンとしての市場価値を各領域のリーダーに聞くシリーズ。今回は、総合商社・金融機関担当ゼネラルマネージャー 堂園幸輔に、担当領域の現状や課題について、じっくり話を聞きました。

堂園 幸輔

堂園 幸輔KOSUKE DOZONO大企業アカウント統括本部 金融・商社領域担当 ゼネラルマネージャー

大学卒業後、日系のコンサルティングファームに入社。組織開発や人材育成分野でコンサルティング営業として経験を積む。その後、株式会社マクロミルへ転職し、主にコンサルティングファー...

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目次

顧客の可能性を引き出す、クロスセル戦略への進化

堂園さんが担当する金融・商社領域では、どんな部門からの引き合いが多いですか?

まず金融領域では、経営企画や新規事業、スタートアップ協業といった部門にはほぼ導入いただいています。

セールス部門でも、営業の方がクライアントに提案したり、社内で与信審査を上げたりする際にスピーダをご活用いただいています。直近では、営業DXの推進という文脈でスピーダの活用を社内で広めていただくというニーズも増えており、僕たちとしてもサポートを強化しているところです。
 
さまざまな部門で導入が進んでいるのは、スピーダをリリースした当初から利用いただいているお客様も多く、当時から既に業務のMustHaveになっていると評価いただいているから。そもそもスピーダは、金融領域のお客様のお困りごとを解決したい、という思いから生まれているんです。
 
商社の場合、多くはインダストリー(特定の製品やサービスを提供する組織の集まり)ごとに事業部が分かれています。インダストリーによっては一部スピーダを導入いただいていないところもありますが、経営企画や各インダストリー内の企画部門では一定導入いただいています。

金融・商社ともにかなり導入が進んでいて、ユーザー歴も長いんですね。

そうですね。現在は、スピーダを導入いただいているお客様のグループ会社にアプローチしている状況です。さらに2024年は新しい戦略を見つけることに注力してきました。それがアップセルからクロスセルへの転換です。
 
お客様社内でスピーダを導入いただいていない部署に向けて、ツール軸でアプローチするのではなくて、お客様起点に軸を移して業務をさらによくるすために、複数のツールを組み合わせるご提案や、人的なサポートも含めたご提案によって、クロスセルを実現しようとしているのが現状ですね。

堂園
実際に金融・商社領域のお客様からはどんな相談が寄せられますか?

経済情報の感度が高いプロの方が使っているので、「使い方がわからない」「アウトプットの出し方がわからない」といった相談はほぼありません。「資料ボタンを押したら、自分たちのフォーマットに当て込んでアウトプットできるようにしたい」といったようなシステム開発や機能追加に関する要望が多いですね。
 
 ほかの領域でも今後スピーダが「当たり前」の世界になったら、いまの金融・商社領域に寄せられるようなリクエストが増えてくるはずです。現状、機能追加や開発は緊急性が高いわけではないけれど、いずれ重要になるはずなので、いまから備えておく必要はあると思います。

ほかの領域と比較して、金融・商社領域にはどんな特色があると感じますか?

特に金融機関は法規制が厳しいですね。銀行法で新規事業について明確に定められているので、銀行業以外の新しい領域に進出しようとすると、金融庁からストップがかかる可能性が高い。そうした現状から、新しいことをやるにしても何から始めればいいのか悩んでいらっしゃる方が、ほかの業界に比べると多いのではと感じています。実際に新規事業に関するご相談をいただくことも多いです。

堂園

直近、社内では「BigDeal」と呼ばれている大型案件の種も複数個生まれつつあります。2024年に顧客起点組織への転換をしたこともあり、これまでは対面のお客様の現場に課題解決手段としてツール軸で提供していたのを、経営陣の方々に対して全社課題の解決を一緒にやっていこうというトップアプローチにもチャレンジしています。

顧客の本来のゴールを見定めサポートに結びつける

ツール軸から顧客起点軸へ思考を転換するうえでは、金融・商社領域に対する業務理解や商慣習理解が必要だと思うんですが、そこはどうしているんですか?

実は僕自身、金融・商社での就業経験がなく、ユーザベースに入るまでSaaSを扱った経験もないんです。そんな僕がやったのは、徹底的にお客様に会いに行くことでした。そこで自分なりの仮説を持っていくんです。
 
最初のうちはケチョンケチョンにされましたね。「何が言いたいのかわかりません」と面と向かって言われたこともあります(苦笑)。「これはもっと現場の解像度を高めて仮説を立てなければダメだな」と痛感したので、仮説を作りまくってお客様に提案し、反応を見てブラッシュアップすることを繰り返してきました。
 
そうして金融や商社領域の「営業部門」「企画部門」というふうに「点」で解像度を高めていき、統合することで会社全体の課題がつかめるようになりました。そこから、今度は役割としての「営業部門」「企画部門」に対しての課題を見定められるようになりました。

ほかのメンバーは、そのキャッチアップをどうやっているんですか?

メンバーは金融・商社の出身者が多いので、おそらく大企業アカウント統括本部のほかのどの領域よりも、現場の課題に対する感度や業務理解はあると思います。でもその一段上の、お客様の本来のゴールを見定める力はまだまだ発展途上の部分があります。

堂園

なので、提案前にたとえばスピーダ エキスパートリサーチを使ったり、FLASH Opinion(※)を使って情報収集したりしています。

FLASH Opinion:スピーダ上から質問を投稿すると、24時間以内に5名以上の専門家からテキスト回答が得られるサービス

ツールの使い方やどうアウトプットを出すかは身につけやすいんですが、人のサポートはこれまでやってきたことがないメンバーも多く、解像度があまり高くないんです。そもそも課題をどう捉えてサポートに結びつけていくかは、まだまだ訓練が必要ですね。 

求められるのは「自ら問いを立て、解決策を提案する」スキル

堂園さんは、エンタープライズセールスにおいてもっとも必要だと思うスキルやマインドは何だと思いますか?

問いを立てるスキル」だと思いますね。これは外部のアドバイザリーボードの方にも以前言われたことなんですが、大企業アカウント統括本部のメンバーは現場の解像度が高い。お客様の業務理解もできている。でもこれまでは、お客様から聞いたことをそのまま課題として捉えてきただけだと。
 
たとえばお客様から「情報収集に時間がかかるから改善したい」と言われて、それに対する解決策を提案するだけでは、僕らが自ら問いを立てて課題を見つけたとは言えません。これまではそれで成長してこられましたが、今後はそれだけではダメ。

自らお客様の組織にどんな課題があるか、ちゃんと問いを立てて解決策を提案するスキルが重要になります。現場の解像度だけでも、ツールの理解だけでもダメ。それらを統合して問いを立て、解決策を提示するスキルセットを身につける必要があると思います。

どうやって身につければいいと思いますか。

ケーススタディをしたりフレームワークを抑えたりすることもできますが、それだとただの”お勉強”で終わってしまいます。実例をもとに、間違ってもいいから仮説を立ててやり切ってみる。これが重要だと思います。

企業のトップの方に自分の仮説を持っていくのって、ものすごく怖くないですか?

怖いですよ。皆さんすごい方ばかりですし。金融・商社は最たる例だと思っています。仮説が合っているかどうかわからないし、とても不安です。けれど、自分ひとりだけで頑張る必要はない。ユーザベース全社としてアプローチできるのは大きいですね。

堂園さんから見て、現在の大企業アカウント統括本部 金融・商社チームに参画することで、どんな経験ができると思いますか?
堂園

ユーザベースは変化の大きい会社なので、この状況を利用していろいろなことができると思うんです。たとえば大企業アカウント統括本部であれば、エンタープライズセールスを経験できるしNewsPicksと連携することもできる。新しいサービスをつくることだってできます。
 
会社の環境を利用して自分がやりたいことを叶えられるというのは、なかなか大企業ではできないことだと思うし、自分の市場価値を高めていきたい方向性が定まっているなら、この会社を使って実証実験できます。

ほかの領域に比べ、先ほども述べた通り特に金融機関は法規制が厳しい。そうした制約のあるお客様の変革に、経営アジェンダから関われる。ものすごく難しいですが、その分めちゃくちゃやりがいがありますし、ビジネスパーソンとしての力がつく環境だと思います。

「顧客起点の目線」を揃え、さらに組織を強化していく

金融・商社チームが現状抱えている課題と今後強化したいポイントがあれば教えてください。

そもそも顧客起点に対するスキルセットが足りていません。これはメンバー個人だけでなく、組織としても同じです。

そして、社内の変化がものすごく速いので、1年後にはチーム編成が変わるかもしれない。クライアントから、「チームも担当もコロコロ変わるな」と思われてしまうリスクがある。そうした意味では、会社全体が顧客起点になりきれていない部分がまだあるのだと思います。

もちろん変化は大切だし、チームとして対応はしていくんですが、リスクヘッジについては常に考えていかなければならないと考えています。
 
もうひとつは、大企業アカウント統括本部の組織全体として、顧客起点の目線を揃える必要があると思っています。メンバーが「これでいい」と思っている水準は僕から見たらまだまだ低いし、外部のアドバイザリーボードはそれよりもさらに上の目線にいる。

イネーブルメントチームがそうしたところに目を配ってはいるものの、まだまだ人によって目線の高さがバラバラなので、そこをどう揃えていくかは課題ですね。

その目線がそろって組織全体が強化されたら、このチームで何を目指したいですか?

ユーザベースが「日本の金融・商社領域の仕事改革」を果たせると思います。「スピーダを使えば、7日間かかる市場調査がたった1時間に」という話よりも先にある、「金融や商社業界の仕事を変える」が本当に実現できる。ツール軸の営業ではなくなった今だからこそできる話だと思うし、それを目指したいですね。

オフショット

編集後記

誰もが知っている大企業の経営層に提案するのは、考えただけで緊張します。そういった方々に自らの仮説をぶつけ、「何を言っているかわからない」と言われてもへこたれないタフさが必要なんだろうな、とインタビューを通じて感じました。タフというより「逃げずに向き合い続ける」に近いのかもしれません。他の3領域のリーダーのインタビューもお楽しみに!

執筆:宮原 智子 / 撮影・編集:筒井 智子
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