劇的に変化する環境で戦うSIerを、情報やデータの側面から支援する
SIer領域はいま、マーケットの競争が激化しています。その理由は3つあり、1つ目はコンサルティングファームとの競争激化、2つ目はSaaSとの競争激化、3つ目はディスラプター(※)の台頭です。
デジタル技術を活用し、新しいビジネスモデルにより既存の市場原理を破壊する可能性を秘めたベンチャー企業。
コンサルティングファームは経営アジェンダ設定・要件定義など上流工程はもちろん、上流工程で定義した戦略を実現する為の手段として、下流工程のシステム構築部分まで体制を組んで手掛けるスキームが多く見受けられます。本来SIerが得意としてきた部分に進出してきたわけです。
かつ、各SIerはエンタープライズ領域で個別業務要件を整理し、カスタマイズが必要なシステム構築を担ってきましたが、昨今では国内外問わずSaaS企業がエンタープライズ企業の課題・業務与件にも耐えうる柔軟性も高いサービス提供をするようになりました。SaaS利用が一般的になり、お客様もSaaSの採用に抵抗がなくなったために、1対1のシステム開発だけではなく、1対多を前提としたビジネス展開・さまざまなパッケージを組み合わせたオファリングビジネスの必要性が出てきています。
また、ChatGPTの出現が分かりやすい例ですが、これまでのサービスは、海外から新しいサービスモデルが出た際、日本展開においては日本語・文化へのローカライズや、カスタマイズが必要なため、浸透までに一定の時間を要しました。しかし近年ではグローバルプレイヤーのローカライズの対応スピードも、過去とは比べ物のないほど上がるケースが増えてきた。そうすると、マーケット自体1年、下手をすると数週間あれば市場が激変するスピード感になっています。
こうした3つの要因による劇的な環境の変化の中で戦わなくてはいけないというのが、SIer領域の現状だと理解しています。
これまでお伝えしたマーケット環境に対峙するために、SIer各社様はお客様の課題を、いかに高い解像度で理解し、パートナーとして同じ目線でディスカッションし、「未来を描く力」をどのように再現性高く装着しうるかをご検討されているケースが多くあります。
ここには大きく以下3つのテーマがあります。
お客様と同じ目線を持つための「顧客解像度」をどのように強化すべきか?
顧客解像度を前提とした上で、「お客様と適切な課題設定」ができるか?
その上で、「顧客の認識をも超える示唆」をどのように提供できるか?

先ほどお伝えした通り、コンサルティング会社の強みは、経営の上流の課題設定から未来を描く力に加え、下流のシステム/社会実装力となった今、上流〜下流までの全方位に対応していると言えます。
これにSIerが対峙するためには、上流においては顧客解像度・課題設定力の向上という観点が明確です。各社の中期経営計画でも、多く謳われています。
一方で、攻められている下流=システム実装領域はどう対応していくべきなのか? が余り論じられていない点が気になっています。
これは個人的な見解ですが、多くのSIerは、元来保有している技術力はもちろんですが、自社技術の研究(=未来技術)に多額の投資も行っています。そのため、顕在化している技術アセットだけでなく「中長期の技術適用可能性」も含め、顧客と課題や未来を描き、共同で検証していくパートナーになることで差別化ができていくと理解しています。
本来、SIerの強みは、中長期的な研究開発・R&Dを含めた実装力・構想力です。
私もSIerに在籍していたので、あくまで当時の自省を込めてですが、営業側は顕在化・実現可能な製品やシステムを基に会話するケースが、まだまだ多い。当時SE・エンジニアの仲間とは日頃から毎日のように会話をしていましたが、中長期の未来を探索する研究所の皆様とは余り会話をしていませんでした。
営業〜SE~研究まで、一体で対峙していくことで、コンサルティング各社の皆様とは異なるアプローチとなり、市場が更に盛り上がっていくと考えています。
競合各社と差別化した提案をするために、企業および組織全体・組織横断でどういう思考をして、型化し、標準化していったらいいのか。たとえば、営業、SE、研究者それぞれの顧客&市場理解の解像度、顧客との直接対話のスキルセットなど、あらゆる思考方法&スキルは三者三様です。
そのような状況に対し、我々は「情報」「データ」「人の知見」の3本軸で、どのように組織を変え得るか? という観点で支援をしています。
現状は幅広いですね。ありがたいことに、経営企画・事業開発・営業・研究開発まで多くの部署の方々からお声掛けをいただいています。
一方で、先ほど話した通り、お客様が競争環境に打ち勝つためには、各部署の個別のニーズにお応えしているだけでは実現が難しいため、私たち自身も反省しています。
お客様が市場で打ち勝つためには、組織を超えた連携が必要になっている情勢です。私たちも、個別部署の引き合いのみならず、経営トップや本部長級の方々へ直接お願いをし、まだまだ未熟ながら、組織強化の方向性について会話をさせていただくアプローチを2024年より強化しています。

「顧客のために」を貫く粘り強さと「変化を起こす」マインド
お客様に必要なものを徹底的に考え抜いて形にしていく熱量と粘り強さですね。個社セミナーやMAUプラン、富士通株式会社様のデジタルセールス組織との共創モデルは、全てもともとサービスにないものでした。これらはどれも熱量を持って、お客様といかに真摯に向き合うか? という観点でできたものです。
我々の強みとして、ひとつの企業内でも多くの部署とのお付き合いがあります。あるSIer様では当該企業の組織のうち、8割を超える部署の方々とやり取りさせていただいています。
会話させていただく部署・人の数が増えれば増えるほど、成功したモデルケースや、我々へフィードバックいただく課題も、相乗的に増えていきます。
一般的にエンタープライズセールスは各社課題感や打ち手がバラバラで型化しにくいんですが、我々は各部署の現場から浸透していった歴史があるので、お付き合いの数=課題の数であり、お客様の課題の芯を捉えた提案を生み出しやすくなってきているのだと思います。言わずもがな、私だけではなくチームやユーザベース全体で培った歴史のお陰ですね。
各社の現場の皆様と向き合ってきたモデルを業界課題として捉え直し、個社のカルチャーや組織構造をもとにした最適解を提案する。業界全体における翻訳家みたいな立ち位置でいたいですね。
同じSIerでも個社ごとに毛色が違うので、まずは過去のプロジェクトをベースにどういう意図で、どんな動きをしてきたか、1on1で徹底して伝えています。
加えて重要視しているのが、実際にいま動いているプロジェクトに入ってもらうことですね。プロジェクトの中でOJTをすることで、対話のレパートリーを増やしたり、即時フィードバックをしたりしてチューニングしています。やはり、現場でお客様と自ら対話し、何が課題か、自分なりに考え抜いてもらうことが、成長の近道だと思っています。
新規開拓のエンタープライズセールスは個社の状況に依存しがちですが、大企業アカウント統括本部ではお付き合いさせていただいている部署が既に多いため、「土俵」に上がってお客様と対話する機会がたくさんあり、OJTでケースを身につけていける環境にあります。

お客様視点で仮説を考えることを重要視しています。その仮説をお客様にぶつけて、ディスカッションしてブラッシュアップすることに何度も挑戦する。
提案の「型」はすでにあるので、メンバーにはお客様の部署の一員になりきって提案書を書いてもらって、それを実際にお客様に持っていって肌感を捉え、チューニングしてもらっています。
もうひとつ大切なのは、お客様の社内でのプロジェクトの有無ですね。プロジェクト化できそうなテーマがあれば、自分なら何ができるかを提案して、お客様とプロジェクトをつくっていく。そうでない場合は、ユーザベースに蓄積されている多様な業界における組織の在り方をモデルケースとして「あるべき姿」を構築し提案するといったことをしています。
マインドで言えば、変化を一緒につくりたい、恐れない、楽しみたいと思えるかどうかです。私もエンタープライズ企業の役員の皆さまと会話を始めたばかりの頃は、日本を支える大企業の役員の方たちと何を話すべきか……と不安な日が続きました(笑)。でも、一歩踏み出してみて、失敗して、改善をつづけることで、また新たな挑戦の機会をいただいています。楽しめるまで続けてみる、というマインドが大切ですね。
また、スキル面で一番重要なのは、お客様のプロジェクトを整理して「自分なりの”解釈”」を行うことができ、それにもとづいて「自分なりの”解”」を設計、発言・絵に落とし込むことができる力です。とにかくお客様とご一緒させていただく際に、自分の意見・スタイルを持っていることが重要だと思います。
情報やデータをもとに顧客組織の「あるべき姿」を描ける人材を育成したい
ユーザベースには「データ」「情報」「人の知見」がそろっていると言いましたが、これらは扱い次第なんですよね。これらをトリガーにいかにお客様を巻き込んでプロジェクト化できるか、新たな組織のあるべき姿を提言できるか。それらを担える人材を育成することが課題だと思っています。
あとは大企業アカウント統括本部の中で「トップアプローチで経営モデルを一緒に考える」という一連の流れがある程度型化できはじめているので、それを大企業アカウント統括本部以外のユーザベース内の組織に最速で横展開していく必要があります。
実地訓練をすることですね。エンタープライズセールスの提案書はすべてゼロイチなので、一緒に提案書をつくってチューニングしていくしかないと思うんです。前提としてお客様の「AS IS」から導きたい世界である「TO BE」を頭の中に描けているかどうか。あとは、現場に出た際に深掘りする質問をされて回答ができるかどうか。
一緒に提案にいって一連の流れを任せてみて、途中で難しそうだと感じたらすぐに自分が入りますし、終了後はフィードバックをして、スキルを身につけてもらっています。そういう意味では、アンラーニングする力は必要ですね。
スピーダはマーケティング領域、営業・経営戦略構築領域、フロント営業領域と、提案するプロダクトによって毛色が異なるので、業界知識も必要です。人材や組織などあらゆるアジェンダが飛んでくるので、それを楽しめないと大変かもしれません。
一方で、大きな提案をしてお客様と一緒に新しい価値をつくっていくプロセスは、やりがいしか感じませんね。

経営コンサルティング領域でデータにもとづくコンサルティングを提供しようと思うと、データと知見がそろう必要があります。我々はSaaSに特化していて、かつ人の知見もある。
コンサルティングスキルとプロダクトセールス両方のスキルセットが身につくところは、大企業アカウント統括本部の独自性だと思います。たとえば営業組織のお客様と会話する際には、「営業職が売れるようになるためには?」というコンサルティングが必要なので、ソリューション構築力が身につくというか。
かつ、我々のような業種特化でもなく、業務特化でもない国産SaaS企業で、部署・組織の種別を問わず大規模に導入されているサービスは、日本ではまだ稀有な存在ではないでしょうか。全領域に対応できる顧客の基盤力と、それにもとづくコンサルティングを描いていけるのはユーザベースならではだと思います。
あとは、前述の通り、ユーザベースとしての新たなプランやモデルを複数立ち上げている組織でもあります。「変化を一緒につくりたい」と思っていただける方にとっては、挑戦し甲斐のある環境ではないかなと思っています。
これはSIerチームに限らずですが、日本を代表する誰もが知る大手企業の本部長や役員といった意思決定レイヤーの方々に直接提案ができるのも、大企業アカウント統括本部の醍醐味ですよね。データにもとづくコンサルティングという、希有な市場をリードしていることが我々の強みだと思います。
私も担当職から入社していて、入社したばかりの頃は、役員の皆様に対する提案で何を話せばいいのか緊張、終わってみたら何を話したか覚えていないといった経験もしてきました。その際も先輩方に温かいフィードバックを重ねていただき、今があります。チームと共に成長し、顧客起点組織に転換し、お客様ファーストで自由に提案できるようになった今は、毎日すごく楽しくてワクワクしています。

編集後記
金融・商社領域、通信領域に続き、SIer領域について深堀ってみましたが、日本を代表する誰もが知る大手企業の本部長や役員といった意思決定層レイヤーの方々に直接ご提案できるのは、大企業アカウント統括本部に共通する醍醐味なのだと改めて感じました。具体的な提案時のエピソードを聞くたびに痺れます……!





